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枕崎 純之助

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第20夜 投稿生活13年。まだ桜は咲かず。

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 皆さんこんばんは。
 枕崎まくらざき純之助です。

 記念すべき第20夜となる今夜は、久しぶりに小説の話をしましょう。
 
 僕は今でこそこうして小説投稿サイトに作品を公開していますが、ネットに作品を公開するようになってからは、まだ5年とちょっとです。(2021年10月現在)
 その前はずっと一般公募の小説賞に応募を続けていました。

 そもそも僕が初めて小説を書いて出版社の公募に応募したのは遥か昔。
 まだ15~16歳くらいの頃のことでした。
 もう昔過ぎてどんな作品をどんな出版社の公募に送ったのかすら忘れてしまいました。
 確か剣士が竜と戦って姫を救う話だったような気が……ドラクエⅠかな?

 覚えているのは、その時代はまだ手書きの原稿用紙にシコシコ書いていたことですかね。
 あと自分の父親に見せて感想を求めたことです。
 話の展開がありきたりだとか、そんなことを言われた気がします。
 結果はもちろん一次落ちでした。
 残念でしたが、ひとつの作品を書き上げたことで満足感を得て、それでその頃の僕の創作熱は落ち着いてしまいました。

 次に小説を投稿することになるのは随分ずいぶんと先、もういい大人になってからのことでした。
 社会人としての生活に疲れていた僕は、ふとテレビで放送されていたアニメ『デスノート』を見て「すごいな。自分もこんな話を作れたらいいな」と、そんなことを思ったんです。
 その時にふと15才くらいの頃に夢中になった小説への熱が胸によみがえってきたんですね。

 その後、僕が久々の小説執筆に悪戦苦闘しながら作り上げた作品を初めて投稿したのは2008年の秋、当時の集英社スーパーダッシュ文庫の新人賞でした。
 必死に書き上げた作品でしたから、結果をワクワクしながら待ちましたが、見事に一次落ち。
 ロクに小説を書いたこともないくせに、『自分の作品は面白い!』などと妙な自信がありましたから、一次落ちには愕然がくぜんとしました。

 投稿した作品の内容は、ゾンビのはびこる荒廃した世界で人間同士が争う中、家族を失いながらも必死に生き残ろうとする1人の少女と、それを助ける1人の戦士の話でした。
 当時は自分の好きな展開を山ほど詰め込んだ自信作だったのですが、後になって読み返してみると、小説作法もなっていない独善的な作品でした。
 人を楽しませようという視点に欠け、好き勝手に描いた典型的な1人よがりの作品。
 そりゃ一次落ちします。

 でも、当時の僕は勢いのままに他の新人賞に投稿を続けていったのです。
 一次落ち続きの連戦連敗。
 それでも出版社から送られてくる自分の作品へのありがたい批評を参考にしながら作品作りを続け、僕が初めて一次の壁を突破できたのは、最初の投稿(15才の頃の投稿は除く)から4年後でした。

 2012年の第19回電撃小説大賞。
 この時に生まれて初めて、一次選考通過者リストに自分の名前が載ったのです。
 当時は現在の枕崎純之助ではなく、『枕崎純三郎』という名義でした。
 初めての一次突破に僕は小躍こおどりして喜びましたよ。

「うおおおおおっ! 俺の名前が載っているぅぅぅ!」

 これはよく覚えています。
 ネットで通過者リストを確認しながら自分のペンネームを見つけて「ああっ!」と大きな声を上げてしまいましたからね。
 『くらいむ・ぷらいす』という作品だったのですが、これは僕が現在掲載している『オニカノ・スプラッシュアウト』の原型となる小説でした。
 結局、その作品は二次選考であえなく落選してしまったのですが、僕にとってこの一次突破はその後も小説投稿を続ける熱意の燃料となりました。

「次こそは二次、三次と突破してやる!」

 そう意気込んだものの、小説投稿はそう簡単にはいきません。
 この『くらいむ・ぷらいす』を見直し・修正して磨きをかけたものを翌年の第20回電撃小説大賞に投稿したんです。
 昨年一次突破した作品をさらにブラッシュアップしたしたものなんだから、二次突破はいけるだろうと思い込んでいました。

 結果は……まんまと一次落ち。
 僕は2008年の初投稿以来、再び愕然がくぜんとしました。

「えっ? 何で? これ、去年は一次突破した作品なのに……」
 
 当時はそういう思いにとらわれてしばらく呆然ぼうぜんとしてしまいました。
 でも、同じ作品を同じ新人賞に送ったからといって、同じように選考を突破できるとは限らないんですよね。
 作品を呼んでくれる下読みの方も前回とは違うでしょうし、人が違えば作品の評価も異なります。
 僕は甘かったんです。
 また振り出しに戻ってしまいました。

 そこからは毎年、どこかしらの新人賞で一次、二次は突破できるものの三次突破は叶わぬまま。
 壁を越えられないまま迎えた2016年。

 公募への投稿生活に疲れを感じ始めていた僕は小説投稿サイトと出会いました。

 そして活動の場をネット小説に構えることになっていったのです。

 『小説家になろう』などネット小説自体は以前からその存在を知っていましたが、一般公募への投稿に躍起やっきになっていた自分には縁遠いものだと勝手に思い込んでいました。
 だけど、実際にやってみるとこれが楽しい。
 最初は不慣れだったネット小説ですが、PVやレビューなどの反応がダイレクトにあることでモチベーションが上がるんですよね。
 『カクヨム』が主催する投稿者ミーティングなどにも参加したりして、僕はネット小説の世界にのめり込んでいきました。

 そうしてネット小説の方にシフトしていった僕は一般公募からは徐々に足が遠のき、2017年4月の第24回電撃小説大賞への投稿を最後に、それ以降の一般公募へは投稿しておりません。
 ネット小説のメリットを享受きょうじゅした僕は、再び一般公募へ挑むことに尻込みしてしまったんですね。
 それは僕の弱さでもあります。

 一般公募は一次だろうと二次だろうと落選してしまえばそこで終わりです。
 その作品を作るのにかけた時間と労力と情熱は、無駄とは言いませんが、結果的には無に帰してしまうことになります。
 投げたボールは返って来ません。
 最終候補などに残れば編集者の方の目に止まって拾い上げてもらえるかもしれませんが、それだって僕にとっては未踏みとう高嶺たかねです。

 その状態で戦い続けていた僕が、目に見える反響のあるネット小説に流れていったのは、自分の心の弱さを考えると当然の帰結でした。
 自分でも耳の痛い話ですが、せめて己の弱さから目をらすことはすまいと決めました。

 こんな言い方をするとネット小説をしている人が心が弱いかのような語弊がありますので、そう受け取ってしまわれた方には謝罪いたします。
 そんなことはこれっぽちも思っておりません。

 ネット小説だって、つまらない作品は埋没まいぼつしてしまう非常に厳しい世界です。
 もちろん公募で結果を残せずにいた僕が、ネット小説でいきなりブレイクするかと言われれば、そんな甘い話はありません。

 公募でダメだったけど、ネット小説ならいけるだろう。
 そんな考えは持たないよう厳に自分を戒めています。
 すでにネット小説の世界で戦う先達の方々への敬意を欠くことになってしまいますから。
 
 でも、最近はネット小説の投稿サイト経由での各出版社の新人賞への応募が可能になってきましたから、応募要項(作品の文字数制限等)を満たす作品については今後もそうした公募の賞に投稿する可能性はあります。
 
 もちろん各投稿サイトが主催している新人賞への応募は毎回欠かしておりません。
 結果は……あまりかんばしくはありませんけど。


 この先、僕の作る作品が商業のラインに乗るかは分かりません。
 でも、人から求められる作品を作りたいと思います。
 自信はないです。
 だけど小説を書くと言うことを一生涯やめない自信はあります。
 やっぱり頭の中に思い浮かんだ作品世界は形にしていきたいと思うから。


 投稿生活13年。
 まだ桜は咲かず。
 だけど僕はこれからも小説を書き続けます。
 たとえ読んでくれる人が少なくても、その人たちをひと時でも楽しませたいですからね。
 そしていつか桜が咲くことを信じて精進していきたいと思います。


 さて、今夜は少し話が長くなってしまいましたね。
 もう読みながら寝てしまっている読者の方もいらっしゃるでしょう。
 つまらない自分語りにお付き合いいただきまして本当にありがとうございました。
 皆様に心からの感謝を。

 また、いつかの夜にお会いしましょう。
 おやすみなさい。
 今宵こよいもいい夢を。
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