Pillow Talk

枕崎 純之助

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第18夜 同じ名字というだけで奇妙な親近感

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 皆さんこんばんは。
 枕崎まくらざき純之助です。

 皆さんは自分と同じ名字の人と会ったことってありますか?

・佐藤さん「普通にあるわ」
・鈴木さん「同じ会社に5人はいるわ」
・田中さん「私なんてダンナも同じ名字だから結婚しても旧姓のままだわ」

 と、なる人も多いかと思いますが、でも中にはめずらしい名字の人もいますよね。
 あ、ちなみに僕の枕崎という名字はペンネームです。
 本名ではありません。

 僕の本名も関東では少ない名字で、子供の頃から今に至るまで友人・知人・同級生・同僚で同じ名字の人には会ったことがありません。
 僕は生まれも育ちも東京ですが、父方の祖父がある地方の出身で、その地域にはけっこう多い名字らしいです。
 今では同じ名字の祖父母や親戚も亡くなってしまい、僕の家族だけとなってしまった○○家。

 そんな僕が生まれてから一度だけ、同じ名字の他人に会ったことがあります。
 それは19歳の時にコンビニでバイトをしていた時のことでした。
 いつものようにレジ打ちをしていると不意に店内に声が響き渡りました。

「おーい。○○~」

 ハッ?
 僕を呼ぶのは誰?
 
 当時アルバイトをしていたそのコンビニには時々、友人がフラッと立ち寄ったりすることがあったので友達に呼ばれたのかと思いましたが、そうではありませんでした。
 呼ばれたのは僕ではなく、その時まさに僕がレジ打ちをするレジで買い物中のお客さんだったのです。

 それは自分と同じ年頃の、背が高く大柄な男子でした。
 彼の友達が店内から「お~い○○~」と呼んだのです。

 知らない誰かが僕の名字を知らない誰かに向かって呼びかけている。
 奇妙な感じですよ。
 今までそんな経験ありませんでしたから。

 僕は動揺を隠しつつ努めて冷静にレジを打ちながら内心で「君、○○っていうのか。僕と同じ名前ですよ」などと思っていました。
 ついつい彼の顔をチラ見してしまいます。
「この店員……俺に気がある? キモッ!」とか思われたかもしれません。

 そのせいで彼は二度とそのコンビニに姿を現しませんでした。
(そのせいではない)
 去っていく彼を追いかけて呼び止め、「君、○○っていうんだね? 僕と同じ名字じゃん。友達になろうよ!」と言うべきだったかと今でも悩みます。
(そんな店員怖すぎる)

 僕と一緒にレジにいた店長も僕の友達が来たのかと思ったらしく、そうではないことに気付いて驚いていました。
 あの彼が僕がたった一度きり、出会った同じ名字の他人でした。
 彼は今も元気に暮らしているでしょうか。
 当時の僕がコンビニの制服に自分の名札をつけていたか記憶が曖昧あいまいなのですが、おそらく彼は僕が同じ名字だなんて気付かなかったでしょうね。
 そんなことがありました。

 実はその後、社会人になった時に電話だけなら僕は同じ名字の人と話しているんです。
 相手は確か埼玉県に住む人だったと思います。
 仕事で一回電話をかけたきりで、今ではその相手の会社名も連絡先も忘れてしまいましたが、僕が「△△株式会社の○○です」と言った途端、相手が「え? ○○さん? 字はどう書くの?」といきなり食いついてきたんです。

 不思議に思って名字の漢字を説明すると、「私と同じ名字じゃないか。いやあ偶然だね。もしかしてあなた、○○地方のご出身?」と嬉しそうに聞いて来ました。
 その人の言う○○地方はまさに僕の祖父の出身地で、そのことを伝えると「私もそうなんだよ。こんなことってあるんだねぇ」と喜んでいました。

 この人の気持ち、僕はすごくよく分かるんです。
 同じ名字あるあるというか、同じ名字というだけで妙な親近感が湧くというか、相手のことをすごく好意的に受け止めてしまうんですよね。
 ましてや出身地(僕自身は東京ですが)というルーツが一緒だとなると「この人と僕の御先祖様はもしかして100年前に同じ土地に暮らして話をしていたのかもしれないな」とロマンを感じてしまうわけですよ。

 ただ、その後のビジネスにはまったく繋がらず、残念ながらその人との電話もその一回きりで終わってしまいました。
 もう一度電話をかけ直して、「同じ名字のよしみで仕事下さい。今度飲みにいきましょうよ」と言うべきだったかと今でも悩みます。
(さすがに引かれるわ)

 これが僕の人生で2度体験した同じ名字の他人との遭遇そうぐうでした。
 ちなみに僕、自分の名字のルーツであるその地方には行ったことがありません。
 いつか行ってみようと思います。
 そこで人生3度目の○○さんとの出会いがあるかもしれませんね。

 以上、今夜は名字のお話でした。
 それでは皆さん。
 おやすみなさい。
 今宵こよいもいい夢を。
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