Pillow Talk

枕崎 純之助

文字の大きさ
上 下
7 / 43

第6夜 絶対にしてはいけない自転車の乗り方

しおりを挟む
 皆さん、こんばんは。
 枕崎まくらざき純之助です。

 皆さんは自転車に乗りますか?
 自転車に乗る時、絶対にしてはいけない乗り方って何だと思います?

 両手放し?
 2人乗り?
 もちろんしてはいけません。
 スマホ見ながら運転なんて言語道断です。

 でもね。
 僕はもっと基本的なことを忘れたために、自転車に乗っていて世にも恐ろしい目にあったことがあるのです。
 今、思い出してもそれは身の毛もよだつ体験でした。
 今夜はそのお話をしましょう。

 あれはもうずいぶんと昔のことです。
 当時、高校1年生だった僕は自宅から学校まで自転車で通っていました。
 5月のさわやかな朝です。
 入学して一ヶ月が過ぎ、新たな環境にも慣れてきた頃です。
 この頃は何だか毎日が無性に楽しくて、明日が来るのが待ち遠しくてたまらないような日々でした。
 だけど僕にとってその日は高校生活の中でも5本の指に入るほどの最悪の日となったのです。
 
 その朝も僕は気分良く自転車をこぎながら、顔に当たる風を心地良く感じていました。
 新緑の季節をいろどる木々の香りが鼻孔をくすぐります。
 そんな朝の新鮮な空気を胸に吸い込んだその時でした。
 
「ホガッ!」

 突如として僕の口の中に異物が入り込んできたのです。
 僕はそれをすぐに吐き出そうとしましたが、自転車をこいでいたこともあって、振動のせいでその異物を歯で噛んでしまいました。
 途端に口の中に広がる奇妙な味に青ざめた僕は、すぐさまそれを道に吐き出します。

「ペッ! ペッペッ!」

 慌てて自転車を止め、僕は道に転がったその異物を見て背すじが寒くなるのを感じました。
 僕が口から吐き出したそれは……。

「こ、こいつは、ベ……ベルゼブブ」

 え~と。
 要するにハエです。
 あの、ブンブン飛んで皆に五月蠅うるさがられるハエね。
 まさに5月のハエ。

 そう。
 僕が吐き出したそれはハエだったのです。
 最悪でしょ?
 僕に噛みつぶされたハエはすでに死んでいました。
 僕も気分的にはすでに死んでいます。

「オエッ!」

 僕は気持ちが悪くなってすぐに近くの公園に駆け寄り、水道の水で何十回も口をゆすぎました。
 さわやかな朝のはずが一転して地獄です。
 
 ウゲーッ!
 キッタネェェェェェッ!
 枕崎エンガチョー!
 
 とか思ってる皆さん。
 大丈夫ですよ。
 まあハエといってもね、多分、清潔なハエです。
 キレイ好きな奴だと思いますよ。
 間違ってもその辺で犬のウ○コにたかったりはしていないでしょう。
 いないってば!

 え?
 ハエってどんな味かって?
 そんなの思い出したくもありませんが……あえて言うならば鉄っぽい味です。
 クギに血液をかけて、最後に塩をまぶしたそれをペロリと舐めた味を想像してみて下さい。
 そう。
 そんな味です。(どんな味だ)
 
 十分に口をゆすいだ僕は、学校を休みたくなるのを我慢して何とか登校しましたが、その日は一日中、最悪な気分でした。
 休み時間のたびに口をゆすぎ、うがいを繰り返しても気分は晴れません。
 以上のことから僕はこの日、人生の教訓を学んだのです。

 
 自転車に乗る時は、決して口を開けてはならない。 By 枕崎


 油断しているとハエの特攻隊はいつでもあなたの口をねらってきます。
 奴らはためらうことなく飛び込んできますよ。
 皆さんも十分にお気をつけ下さい。

 え?
 寝る前に気持ち悪い話するなって?
 だって……急に思い出しちゃったから。
 皆さんに気持ち悪さのおすそ分け。(最低)

 では、おやすみなさい。
 またいつかの夜に。
 今宵こよいもいい夢を。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ネオンブルーと珊瑚砂

七草すずめ
エッセイ・ノンフィクション
初めての海外旅行、行き先は常夏の島グアム。旅のおともは家族にカメラ、それから妹の彼氏……!? ぽんこつな長女すずめと彼氏連れの次女つぐみ、マイペースな三女ひばりとちゃっかりものの末弟、羽斗。爽やか彼氏に行動的な父、天然の母が加われば、ただの旅行では終わらない! 筆者が見たグアムの四日間を切り取った、初の長編エッセイ。他人の家族旅行なのに、なぜかおもしろい!?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

「繊細さんの日々のこと」

黒子猫
エッセイ・ノンフィクション
「繊細さん」の私が、日常で感じたことなどを綴ります。 ちなみに私は内向型HSPです✨

カクヨムでアカウント抹消されました。

たかつき
エッセイ・ノンフィクション
カクヨムでアカウント抹消された話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...