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第四章 城下町紛争狂騒曲
第15話 いっしょに帰ろう
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僕とミランダとジェネット。
三人ともボロボロで立っているのがやっとだった。
僕は呆然と立ち尽くしたまま、ミランダを見つめていた。
ミランダはそんな僕を見て、呆れたように言った。
「あんたって本当に変な奴。ありえない。弱っちいくせに何でこんな無茶してんのよ」
ミランダのそんな憎まれ口に僕は苦笑いを浮かべた。
すでに広場での戦いは終結していた。
ミランダ討伐隊とジェネット守護隊・懺悔主党のぶつかり合いは熾烈を極めたけど、運営本部におけるミランダの処分保留が決定されると、意義の失われた戦いは勢いを失い、双方ともに自然と剣を振るう手は止まっていった。
運営本部内でどのような裁定がなされつつあるのか僕らには分からなかったけれど、とりあえず目の前にあった危機は去ったと考えていいみたいだ。
僕はミランダに向き合うと、ずっと言いたかったことを口にした。
「ミランダ。手紙のこと、気付かなくてごめん」
僕がそう言うとミランダはハッとして赤面した。
「べ、別に。あんなのただのヒマつぶしの落書きだから。本気で受け取るんじゃないわよ。っていうか忘れろぉぉぉ!」
バツが悪そうにそう言うとミランダは僕の首に腕を回して締め付けてきた。
く、苦しい。
でも嬉しい。
僕の知ってるミランダが戻ってきてくれて。
「クビ締められてニヤニヤすんな気持ち悪い!」
ミランダは拗ねたようにそっぽを向きながら口を尖らせた。
そんな彼女に僕は言った。
「次から僕も記録を残すようにするよ。何度初期化されても何度でも思い出せるように」
僕がそう言うとミランダはフンッと鼻を鳴らしてわずかに鼻腔を膨らませた。
「それには及びません」
ふいにそう告げたのはジェネットだった。
その顔には満面の笑みが浮かんでいる。
ジェネットの笑顔とは対照的にミランダは顔をしかめた。
「どういうことよ?」
「私の創造主よりお二人にプレゼントがありますから」
プレゼント?
怪訝な表情で僕とミランダが顔を見合わせる。
「それは次回のアップデート後のお楽しみです」
そう言うとジェネットは楽しげに笑った。
「何を考えているのよ。この女狐は」
眉を潜めるミランダに僕は静かに言った。
「いっしょに帰ろう。ミランダ。僕らの洞窟に。僕はやっぱりあそこがいいよ」
僕がそう言って手を差し出すと、ミランダは思わず下を向いた。
彼女は安堵したようなため息をつくと、わずかに肩を震わせた。
そして静かに顔を上げる。
その顔には彼女らしい勝ち気な笑みが浮かんでいた。
少しだけ目が赤かったけど、それは言わないでおこう。
「そんなに私の下僕としての日常に戻りたいなら仕方ない。これからもずっと私に側仕えしなさい」
そう言ってミランダは僕の手を取ると、今度は少しだけ柔らかな笑顔を僕に見せた。
それはもう可憐な笑顔だった。
三人ともボロボロで立っているのがやっとだった。
僕は呆然と立ち尽くしたまま、ミランダを見つめていた。
ミランダはそんな僕を見て、呆れたように言った。
「あんたって本当に変な奴。ありえない。弱っちいくせに何でこんな無茶してんのよ」
ミランダのそんな憎まれ口に僕は苦笑いを浮かべた。
すでに広場での戦いは終結していた。
ミランダ討伐隊とジェネット守護隊・懺悔主党のぶつかり合いは熾烈を極めたけど、運営本部におけるミランダの処分保留が決定されると、意義の失われた戦いは勢いを失い、双方ともに自然と剣を振るう手は止まっていった。
運営本部内でどのような裁定がなされつつあるのか僕らには分からなかったけれど、とりあえず目の前にあった危機は去ったと考えていいみたいだ。
僕はミランダに向き合うと、ずっと言いたかったことを口にした。
「ミランダ。手紙のこと、気付かなくてごめん」
僕がそう言うとミランダはハッとして赤面した。
「べ、別に。あんなのただのヒマつぶしの落書きだから。本気で受け取るんじゃないわよ。っていうか忘れろぉぉぉ!」
バツが悪そうにそう言うとミランダは僕の首に腕を回して締め付けてきた。
く、苦しい。
でも嬉しい。
僕の知ってるミランダが戻ってきてくれて。
「クビ締められてニヤニヤすんな気持ち悪い!」
ミランダは拗ねたようにそっぽを向きながら口を尖らせた。
そんな彼女に僕は言った。
「次から僕も記録を残すようにするよ。何度初期化されても何度でも思い出せるように」
僕がそう言うとミランダはフンッと鼻を鳴らしてわずかに鼻腔を膨らませた。
「それには及びません」
ふいにそう告げたのはジェネットだった。
その顔には満面の笑みが浮かんでいる。
ジェネットの笑顔とは対照的にミランダは顔をしかめた。
「どういうことよ?」
「私の創造主よりお二人にプレゼントがありますから」
プレゼント?
怪訝な表情で僕とミランダが顔を見合わせる。
「それは次回のアップデート後のお楽しみです」
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そして静かに顔を上げる。
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「そんなに私の下僕としての日常に戻りたいなら仕方ない。これからもずっと私に側仕えしなさい」
そう言ってミランダは僕の手を取ると、今度は少しだけ柔らかな笑顔を僕に見せた。
それはもう可憐な笑顔だった。
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