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後編 優勝するのは……
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「エントリーナンバー4番。ジェネットでごさいます」
そう言うとジェネットは深々と一礼し、プレゼンを開始した。
「私がアル様のお隣に住まわせていただきましたら、ただひたすらにアル様のお心の平穏を守ることを誓います。アル様がいかに心穏やかに過ごせるかを重視し、お茶やお話のお相手になって差し上げたり、お悩みがあれば聞いて差し上げます。アル様のお心に寄り添うことくらいしか出来ませんが、それでよろしければ」
ジェネット……僕は今モーレツに感動しているよ。
心穏やかな日々。
それこそが僕が求める暮らしなんだ。
ジェネットはいつでも僕の心に寄り添ってくれる。
彼女と一緒だと、僕はいつも安心していられるんだ。
「おお。アルフレッド君の幸福度が上がっている。98HP。これは文句なしのジェネットの優勝だ」
アプリを確認しながらそう言うと、ブレイディーはジェネットの優勝を宣言しようとした。
だけどその時……。
「ちょっと待ったぁ!」
そう言ってジェネットを押しのけるように玉座前に登壇したのは……。
「エントリーナンバー5番! ミランダ!」
えええええっ?
まさかのミランダ参加にその場は騒然となった。
「な、何でミランダが?」
「ちょ、ちょっと待てよ。おまえの部屋はもうあるだろ」
「そなた何を考えておるのだ」
「ミランダ。あなたに参加資格は……」
そんな皆をミランダは一喝した。
「うるさい黙れっ! 私がアルの隣に住んだとしたら……」
そう言うとミランダはスッと息を吸って言葉を続けた。
「別に何もしないわ」
「えっ?」
その言葉に僕だけでなく、その場にいた皆がキョトンとした。
それからミランダは僕を見ると少し恥ずかしそうに口を尖らせる。
「私はただ……あんたのそばにいるだけ。いつも通りよ」
そう言うミランダの頬が珍しくわずかに赤く染まっていた。
僕はそんな彼女の顔から目が離せなくなった。
するとブレイディーが驚きの声を上げる。
「ア、アルフレッド君の幸福度が……100HP! ミ、ミランダの逆転優勝!」
ブレイディーの言葉に皆が唖然とする中、僕とミランダだけは互いに見つめ合った。
ミランダは何かをしてくれるわけじゃない。
ただそばにいてくれるだけだ。
でも……それが何より嬉しかった。
幸せだった。
ありがとうミランダ。
今日も僕の隣にいてくれて。
僕がじんわりと幸せを噛みしめていたその時、静まり返っていた玉座の間に声が響いた。
「いや……そもそもおかしいよミランダ! 部屋を2つも独占する気?」
そう声を上げたのはアリアナだ。
それで我に返ったのか、皆が弾かれたように声を上げ始めた。
「そうだぞ! おまえはエントリーしてなかっただろうが! 図々しいぞ」
「途中から割り込んできおって、何たる厚かましい女だ」
「ミランダ。今のは無効ですよ。あなたには参加資格がないのですから」
皆が口々にそう言い募るもんだから、ミランダの怒りはあっという間に沸点を超えた。
「おかしい? 図々しい? 厚かましい? 資格がない? 人の城にズカズカと入り込んできたあんたたちの言うことじゃないでしょうがぁぁぁぁ! 全員死ねっ!」
そう言うミランダが黒炎弾を炸裂させ、玉座の間は朦々たる黒煙に包まれていった。
「ひぃぃぃぃぃぃぃっ! 結局こうなるのか! こ、この人たちに結束なんて無理ゲーだからぁぁぁぁぁ!」
闇の洞窟からミランダ城に住居が変わっても、僕らの日常は何一つ変わりそうにない。
まあ、きっとずっとこんな感じなんだろうね。
だって僕らはNPCだから。
【完】
そう言うとジェネットは深々と一礼し、プレゼンを開始した。
「私がアル様のお隣に住まわせていただきましたら、ただひたすらにアル様のお心の平穏を守ることを誓います。アル様がいかに心穏やかに過ごせるかを重視し、お茶やお話のお相手になって差し上げたり、お悩みがあれば聞いて差し上げます。アル様のお心に寄り添うことくらいしか出来ませんが、それでよろしければ」
ジェネット……僕は今モーレツに感動しているよ。
心穏やかな日々。
それこそが僕が求める暮らしなんだ。
ジェネットはいつでも僕の心に寄り添ってくれる。
彼女と一緒だと、僕はいつも安心していられるんだ。
「おお。アルフレッド君の幸福度が上がっている。98HP。これは文句なしのジェネットの優勝だ」
アプリを確認しながらそう言うと、ブレイディーはジェネットの優勝を宣言しようとした。
だけどその時……。
「ちょっと待ったぁ!」
そう言ってジェネットを押しのけるように玉座前に登壇したのは……。
「エントリーナンバー5番! ミランダ!」
えええええっ?
まさかのミランダ参加にその場は騒然となった。
「な、何でミランダが?」
「ちょ、ちょっと待てよ。おまえの部屋はもうあるだろ」
「そなた何を考えておるのだ」
「ミランダ。あなたに参加資格は……」
そんな皆をミランダは一喝した。
「うるさい黙れっ! 私がアルの隣に住んだとしたら……」
そう言うとミランダはスッと息を吸って言葉を続けた。
「別に何もしないわ」
「えっ?」
その言葉に僕だけでなく、その場にいた皆がキョトンとした。
それからミランダは僕を見ると少し恥ずかしそうに口を尖らせる。
「私はただ……あんたのそばにいるだけ。いつも通りよ」
そう言うミランダの頬が珍しくわずかに赤く染まっていた。
僕はそんな彼女の顔から目が離せなくなった。
するとブレイディーが驚きの声を上げる。
「ア、アルフレッド君の幸福度が……100HP! ミ、ミランダの逆転優勝!」
ブレイディーの言葉に皆が唖然とする中、僕とミランダだけは互いに見つめ合った。
ミランダは何かをしてくれるわけじゃない。
ただそばにいてくれるだけだ。
でも……それが何より嬉しかった。
幸せだった。
ありがとうミランダ。
今日も僕の隣にいてくれて。
僕がじんわりと幸せを噛みしめていたその時、静まり返っていた玉座の間に声が響いた。
「いや……そもそもおかしいよミランダ! 部屋を2つも独占する気?」
そう声を上げたのはアリアナだ。
それで我に返ったのか、皆が弾かれたように声を上げ始めた。
「そうだぞ! おまえはエントリーしてなかっただろうが! 図々しいぞ」
「途中から割り込んできおって、何たる厚かましい女だ」
「ミランダ。今のは無効ですよ。あなたには参加資格がないのですから」
皆が口々にそう言い募るもんだから、ミランダの怒りはあっという間に沸点を超えた。
「おかしい? 図々しい? 厚かましい? 資格がない? 人の城にズカズカと入り込んできたあんたたちの言うことじゃないでしょうがぁぁぁぁ! 全員死ねっ!」
そう言うミランダが黒炎弾を炸裂させ、玉座の間は朦々たる黒煙に包まれていった。
「ひぃぃぃぃぃぃぃっ! 結局こうなるのか! こ、この人たちに結束なんて無理ゲーだからぁぁぁぁぁ!」
闇の洞窟からミランダ城に住居が変わっても、僕らの日常は何一つ変わりそうにない。
まあ、きっとずっとこんな感じなんだろうね。
だって僕らはNPCだから。
【完】
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