だって僕はNPCだから+プラス 4th 『お引っ越しプレゼンテーション』

枕崎 純之助

文字の大きさ
上 下
3 / 3

後編 優勝するのは……

しおりを挟む
「エントリーナンバー4番。ジェネットでごさいます」

 そう言うとジェネットは深々と一礼し、プレゼンを開始した。

「私がアル様のおとなりに住まわせていただきましたら、ただひたすらにアル様のお心の平穏を守ることをちかいます。アル様がいかに心おだやかに過ごせるかを重視し、お茶やお話のお相手になって差し上げたり、お悩みがあれば聞いて差し上げます。アル様のお心に寄りうことくらいしか出来ませんが、それでよろしければ」

 ジェネット……僕は今モーレツに感動しているよ。
 心おだやかな日々。
 それこそが僕が求める暮らしなんだ。
 ジェネットはいつでも僕の心に寄りってくれる。
 彼女と一緒だと、僕はいつも安心していられるんだ。

「おお。アルフレッド君の幸福度が上がっている。98HPハッピー・ポイント。これは文句なしのジェネットの優勝だ」

 アプリを確認しながらそう言うと、ブレイディーはジェネットの優勝を宣言しようとした。
 だけどその時……。

「ちょっと待ったぁ!」

 そう言ってジェネットを押しのけるように玉座前に登壇とうだんしたのは……。

「エントリーナンバー5番! ミランダ!」

 えええええっ?
 まさかのミランダ参加にその場は騒然となった。

「な、何でミランダが?」
「ちょ、ちょっと待てよ。おまえの部屋はもうあるだろ」
「そなた何を考えておるのだ」
「ミランダ。あなたに参加資格は……」

 そんな皆をミランダは一喝いっかつした。

「うるさいだまれっ! 私がアルのとなりに住んだとしたら……」

 そう言うとミランダはスッと息を吸って言葉を続けた。

「別に何もしないわ」
「えっ?」

 その言葉に僕だけでなく、その場にいた皆がキョトンとした。
 それからミランダは僕を見ると少し恥ずかしそうに口をとがらせる。

「私はただ……あんたのそばにいるだけ。いつも通りよ」

 そう言うミランダのほほめずらしくわずかに赤く染まっていた。
 僕はそんな彼女の顔から目が離せなくなった。
 するとブレイディーがおどろきの声を上げる。

「ア、アルフレッド君の幸福度が……100HPハッピー・ポイント! ミ、ミランダの逆転優勝!」

 ブレイディーの言葉に皆が唖然あぜんとする中、僕とミランダだけは互いに見つめ合った。
 ミランダは何かをしてくれるわけじゃない。
 ただそばにいてくれるだけだ。
 でも……それが何より嬉しかった。
 幸せだった。

 ありがとうミランダ。
 今日も僕のとなりにいてくれて。
 僕がじんわりと幸せをみしめていたその時、静まり返っていた玉座の間に声が響いた。

「いや……そもそもおかしいよミランダ! 部屋を2つも独占する気?」

 そう声を上げたのはアリアナだ。
 それで我に返ったのか、皆が弾かれたように声を上げ始めた。

「そうだぞ! おまえはエントリーしてなかっただろうが! 図々ずうずうしいぞ」
「途中から割り込んできおって、何たる厚かましい女だ」
「ミランダ。今のは無効ですよ。あなたには参加資格がないのですから」

 皆が口々にそう言いつのるもんだから、ミランダの怒りはあっという間に沸点ふってんを超えた。

「おかしい? 図々ずうずうしい? 厚かましい? 資格がない? 人の城にズカズカと入り込んできたあんたたちの言うことじゃないでしょうがぁぁぁぁ! 全員死ねっ!」

 そう言うミランダが黒炎弾ヘル・バレットを炸裂させ、玉座の間は朦々もうもうたる黒煙に包まれていった。

「ひぃぃぃぃぃぃぃっ! 結局こうなるのか! こ、この人たちに結束なんて無理ゲーだからぁぁぁぁぁ!」

 やみ洞窟どうくつからミランダ城に住居が変わっても、僕らの日常は何一つ変わりそうにない。
 まあ、きっとずっとこんな感じなんだろうね。
 だって僕らはNPCだから。

【完】
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうせ俺はNPCだから

枕崎 純之助
ファンタジー
【完結しました!】 *この作品はこちらのスピンオフになります↓ 『だって僕はNPCだから』https://www.alphapolis.co.jp/novel/540294390/346478298    天使たちのゲーム世界である「天国の丘《ヘヴンズ・ヒル》」と対を成す悪魔たちのゲーム世界「地獄の谷《ヘル・バレー》」。  NPCとして鬱屈した日々を過ごす下級悪魔のバレットは、上級悪魔たちのワナにハメられ、脱出不可能と言われる『悪魔の臓腑』という深い洞窟の奥深くに閉じ込められてしまった。  そこでバレットはその場所にいるはずのない見習い天使の少女・ティナと出会う。  バレットはまだ知らない。  彼女が天使たちの長たる天使長の2代目候補であるということを。  NPCの制約によって強さの上限値を越えられない下級悪魔と、秘められた自分の潜在能力の使い方が分からない見習い天使が出会ったことで、2人の運命が大きく変わる。  悪魔たちの世界を舞台に繰り広げられるNPC冒険活劇の外伝。  ここに開幕。 *イラストACより作者「Kotatsune」様のイラストを使用させていただいております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

だって僕はNPCだから 3rd GAME

枕崎 純之助
ファンタジー
【完結】 3度目の冒険は異世界進出! 天使たちの国は天国なんかじゃなかったんだ。 『魔女狩り大戦争』、『砂漠都市消滅危機』という二つの事件が解決し、平穏を取り戻したゲーム世界。 その中の登場人物である下級兵士アルフレッドは洞窟の中で三人の少女たちと暮らしていた。 だが、彼らの平和な日々を揺るがす魔の手はすぐそこに迫っていた。 『だって僕はNPCだから』 『だって僕はNPCだから 2nd GAME』 に続く平凡NPCの規格外活劇第3弾が幕を開ける。

どうせ俺はNPCだから 2nd BURNING!

枕崎 純之助
ファンタジー
下級悪魔と見習い天使のコンビ再び! 天国の丘と地獄の谷という2つの国で構成されたゲーム世界『アメイジア』。 手の届かぬ強さの極みを欲する下級悪魔バレットと、天使長イザベラの正当後継者として不正プログラム撲滅の使命に邁進する見習い天使ティナ。 互いに相容れない存在であるはずのNPCである悪魔と天使が手を組み、遥かな頂を目指す物語。 堕天使グリフィンが巻き起こした地獄の谷における不正プラグラムの騒動を乗り切った2人は、新たな道を求めて天国の丘へと向かった。 天使たちの国であるその場所で2人を待ち受けているものは……? 敵対する異種族バディが繰り広げる二度目のNPC冒険活劇。 再び開幕! *イラストACより作者「Kamesan」のイラストを使わせていただいております。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。 果たして、阿宮は見知らぬ世界でどう生きていくのか————。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...