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第三章 リモート・ミッション・α
第8話 燃える翼
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森の中を流れる川の上までせり出した太い木の枝には、僕が探していた少女が腹ばいになって引っかかっていた。
「ミランダ……」
ミランダだ!
それは確かに彼女だった。
彼女は太い枝にうつ伏せで身を預け、目を閉じたまま動かずにいた。
「よかった。無事だったんだ」
だけど僕が覚えたひとまずの安堵は、すぐに吹き飛んでしまう。
あれは……まずいぞ。
彼女が身を預けている枝の真下は流れの速い川だ。
彼女が身じろぎ一つでもしたら、急流に転落してしまう。
そしてさらに悪いことにそんな彼女の周りにはトビダニが群がり始めていたんだ。
トビダニたちは動かないミランダを獲物と定めたようで、今にも彼女に飛びかかろうとしていた。
ミランダはアナリンにやられた傷が相当深いのか、まったく目を覚ます様子がない。
これはやばい。
僕は声を潜めるのも忘れて叫びながらミランダに向かって飛んだ。
「ミランダー!」
だけど僕が駆けつける前にトビダニたちがミランダの髪の毛や衣を引っ張り始め、態勢を崩したミランダはそのまま真っ逆さまに川の中へと落ちてしまったんだ。
「ああっ!」
派手な水しぶきを上げたミランダの体はそのまま急流に飲み込まれて流されていってしまう。
な、何てことだ。
僕は大急ぎでミランダを追いかけようとしたけれど、トビダニ達が今度は僕に群がってきて、それを邪魔する。
「じゃ、邪魔だよ! どいてくれ!」
僕は必死にトビダニを振り払おうとするけれど、Eライフルを持たない今の僕ではそれもままならない。
くっ!
急いでミランダを追いかけないといけないのに!
そうこうしているうちにミランダの姿はすっかり流されて見えなくなってしまう。
と、とにかくこのトビダニたちを何とかしないと。
周囲を取り囲むトビダニにモミクチャにされながら僕は必死にアイテム・ストックを呼び出そうとした。
だけどこの状態ではそれすらも難しい。
ど、どうしたらいいんだ!
僕が内心でそう悲鳴を上げたその時だった。
トビダニ達が一瞬で真っ二つに切り裂かれて、全て川の中に落下していったんだ。
た、助かったのか?
もしかしてアリアナが来てくれたんじゃ……。
そう思った僕の体をいきなり後ろから誰かが掴んだんだ。
「ふぎゅっ!」
その力の強さに僕は思わず声を上げた。
そんな僕の背すじを凍り付かせる声を発したのは、その手の主だった。
「魔女ミランダの使い魔か。ミランダはどこだ?」
見上げる僕を掴んでいたのは、その黒い瞳を冷たく光らせたサムライの少女だった。
な、何てこった。
アリアナが助けに来てくれたなんて、そんな甘い状況じゃなかった。
トビダニ達を斬り裂いて僕を確保したのは、今一番会いたくない相手、東将姫アナリンだったんだ。
彼女は川面に点在する岩の上のひとつを足場にして立っている。
「ミランダはどこだ? 言わぬならこのまま握りつぶすぞ」
そう言って手に力を込めるアナリンだけど、僕は歯を食いしばって首を横に振る。
この妖精の状態で握りつぶされたとしても、強制的にこの体からログアウトされるだけだ。
それ自体は深刻なことじゃない。
でも、ここでログアウトしてしまえば、川に流されたミランダを助けられなくなる。
アナリンに締め上げられながら僕は必死に声を絞り出した。
「ミ、ミランダ様を探しているところです」
アナリンは僕がアルフレッドだということは知らない。
だから僕も使い魔の妖精になり切ってそう言った。
そんな僕をじっと眇め見るとアナリンは鼻を鳴らした。
「フンッ。まあいい。貴様を解剖してログを解析すれば分かることだ」
か、解剖?
アナリンにはNPCのログを解析する手段があるのか?
そんな僕の疑問をよそにアナリンは僕を握る手の力をわずかに緩めて言った。
「ところであのアルフレッドとかいう雑兵は避難したとミランダが言っていたが、王都にいるということか? 答えろ」
え?
僕のことを探している?
何で?
確かにアナリンは王都で僕が嘘をついて彼女を欺いたことを根に持っているみたいだった。
舌を斬り取ってやるとか恐ろしいこと言ってたし。
けど、そんなことで僕を探すか?
「奴が姿を消し、王女の行方も分からなくなった。あのこざかしい男が神と画策して王女を何処かへと匿っているのではないのか? 答えよ!」
そ、それを疑っているのか。
アナリンの予想は外れている。
王女様の行方は僕も知らない。
アナリンにじっと睨まれたまま困惑する僕だけど、そこでふいに前方から馬の嘶く声が聞こえてきたんだ。
それは悲鳴のようなけたたましい声だった。
その声を聞いたアナリンはハッと顔を上げ、僕をその手に掴んだまま即座に駆け出す。
「天烈!」
アナリンは川面の岩を次々と飛び移りながら跳躍して川岸に降り立つと、疾風のごとく駆けていく。
向かう先の森が赤く燃えていた。
すさまじい勢いで火が燃え上がり、近付くほどにパチパチと木々の爆ぜる音が聞こえてくる。
その現場に到着すると、先ほどアニヒレートが放った青い光弾のせいで地面がえぐれて、木々が根元から吹き飛ばされていた。
そして燃える森の中、炎に囲まれた天馬・天烈の姿があった。
その両翼には火が燃え移っていて、天烈がいくら翼をはためかせても、うまく飛び上がることが出来ないようだ。
天烈は苦しげな息遣いを漏らしながら、必死に耐えている。
体も大きく頑強そうな天馬だけど、あれじゃいずれ炎に巻かれて死んでしまうぞ。
アナリンはわずかに表情を歪めて唇を噛んでいたけれど、すぐに冷徹な光をその目に宿した。
「……やむをえまい。翼を失う屈辱を受けるくらいなら、ひと思いに送ってやる。許せ。天烈」
アナリンはそう言うと、掴んでいた僕を放り出して刀に手をかけ、居合いの構えで腰を沈めた。
ま、まさか……。
「使い魔。どこへでも逃げるがいい。天烈を介錯したら、即座に追いかけて捕まえてやる」
介錯?
やっぱり殺すってことか。
確かに天烈の翼はすっかり炎に包まれて、たとえ火を消しても翼を回復させるには時間をかけて高度な回復魔法を施すしかない。
アナリンにはそんな時間はないってことなんだ。
天烈はアナリンの構えを見て覚悟を決めたのか、おとなしく首を下げてじっとしている。
己の死の運命を受け入れているんだ。
「鬼嵐刃!」
そう言ってアナリンが黒狼牙を頭上に掲げると例によって刃の嵐が巻き起こり、天烈の周囲で燃えている木々が吹き飛ばされる。
そしてアナリンは即座に刀を鞘に一旦収めると再び腰を落とした。
天烈はいよいよ最後と、一度だけ大きく嘶き、首を下げてじっと動かなくなる。
アナリンはグッと唇を噛み締めて刀に手をかけると目を閉じた。
あ、ああ……。
両者のその姿に、僕は何だか分からないけど胸がざわついて、咄嗟に声を上げていた。
「ちょ、ちょっと待って!」
そう言うと僕はアイテム・ストックの中から思いつく限りのアイテムを取り出す。
僕のアイテム・ストックにはかなり雑多な内容のアイテムが多数入っているんだ。
備えあれば憂いなしと言うし、僕は自分の少ない給金をほとんどアイテム購入に費やしている。
そんな僕が数あるアイテムの中から選び出したのは、冷却性消火器と火傷に聞く薬剤、そして体表の損傷を早く治す効果のある包帯だ。
そのうち冷却性消火器を僕は天烈の翼に向けて放射した。
するとノズルから発せられた超低温の泡が天烈の左右の翼に次々と振りかかり、そこにまとわりついて炎を消す。
うまくいったぞ。
天烈はブルルと鼻を鳴らす。
そしてアナリンは奇妙なものを見るような顔で僕を見て言った。
「貴様……どういうつもりだ」
咄嗟に自分がした行為に驚いていた僕自身も、それに明確な答えを返すことは出来なかった。
でも、敵であり冷酷なサムライであるはずのアナリンが天烈を斬ろうとした時にわずかに見せた苦しげな表情と、覚悟を決めたような悲しげな天烈の姿を見て、僕は反射的に動いていたんだ。
「火傷をすぐに治すのは難しいけれど、この薬を今のうちに処置すればいずれ治る。ここで殺さなくても済むよ」
「そんなことは聞いていない! 貴様、何が目的だ」
アナリンは刀の切っ先を僕に向ける。
僕はそんな彼女の足元に火傷用の薬剤と包帯を放った。
「君は天烈が大事なんでしょ。その気持ちは分かるから。僕はもう行くよ。もし追いかけて来るなら好きにすればいい」
そう言うと僕は上空に上昇する。
これは賭けだった。
アナリンが天烈を見捨てて僕を追ってくるなら、僕はすぐに捕まえられてしまっただろう。
だけど僕が50メートル近く上昇してもアナリンは僕を追って来なかった。
天烈が飛べない今、この高さまで上昇すれば、飛行能力のないアナリンは追って来られないはずだ。
下を見下ろしても燃える森から立ち上る黒煙でアナリンの姿を見ることは出来ない。
とにかく僕は今のうちにミランダを探さないと。
この高さになると森の向こう側にダンゲルンの街並みが見渡せる。
そしてこの森とダンゲルンの間に広がる平原には、アニヒレートを迎え撃つために集結したプレイヤーの軍勢が見えた。
当のアニヒレートは変わらずに氷漬けになったままだ。
そして先ほどミランダが流された川は、森の東へと流れが続いていることが分かった。
僕はその方角へ急いで向かう。
だけどその時、背後から奇妙な音が響いてきたんだ。
それは何かが割れるようなけたたましい音だった。
「ミランダ……」
ミランダだ!
それは確かに彼女だった。
彼女は太い枝にうつ伏せで身を預け、目を閉じたまま動かずにいた。
「よかった。無事だったんだ」
だけど僕が覚えたひとまずの安堵は、すぐに吹き飛んでしまう。
あれは……まずいぞ。
彼女が身を預けている枝の真下は流れの速い川だ。
彼女が身じろぎ一つでもしたら、急流に転落してしまう。
そしてさらに悪いことにそんな彼女の周りにはトビダニが群がり始めていたんだ。
トビダニたちは動かないミランダを獲物と定めたようで、今にも彼女に飛びかかろうとしていた。
ミランダはアナリンにやられた傷が相当深いのか、まったく目を覚ます様子がない。
これはやばい。
僕は声を潜めるのも忘れて叫びながらミランダに向かって飛んだ。
「ミランダー!」
だけど僕が駆けつける前にトビダニたちがミランダの髪の毛や衣を引っ張り始め、態勢を崩したミランダはそのまま真っ逆さまに川の中へと落ちてしまったんだ。
「ああっ!」
派手な水しぶきを上げたミランダの体はそのまま急流に飲み込まれて流されていってしまう。
な、何てことだ。
僕は大急ぎでミランダを追いかけようとしたけれど、トビダニ達が今度は僕に群がってきて、それを邪魔する。
「じゃ、邪魔だよ! どいてくれ!」
僕は必死にトビダニを振り払おうとするけれど、Eライフルを持たない今の僕ではそれもままならない。
くっ!
急いでミランダを追いかけないといけないのに!
そうこうしているうちにミランダの姿はすっかり流されて見えなくなってしまう。
と、とにかくこのトビダニたちを何とかしないと。
周囲を取り囲むトビダニにモミクチャにされながら僕は必死にアイテム・ストックを呼び出そうとした。
だけどこの状態ではそれすらも難しい。
ど、どうしたらいいんだ!
僕が内心でそう悲鳴を上げたその時だった。
トビダニ達が一瞬で真っ二つに切り裂かれて、全て川の中に落下していったんだ。
た、助かったのか?
もしかしてアリアナが来てくれたんじゃ……。
そう思った僕の体をいきなり後ろから誰かが掴んだんだ。
「ふぎゅっ!」
その力の強さに僕は思わず声を上げた。
そんな僕の背すじを凍り付かせる声を発したのは、その手の主だった。
「魔女ミランダの使い魔か。ミランダはどこだ?」
見上げる僕を掴んでいたのは、その黒い瞳を冷たく光らせたサムライの少女だった。
な、何てこった。
アリアナが助けに来てくれたなんて、そんな甘い状況じゃなかった。
トビダニ達を斬り裂いて僕を確保したのは、今一番会いたくない相手、東将姫アナリンだったんだ。
彼女は川面に点在する岩の上のひとつを足場にして立っている。
「ミランダはどこだ? 言わぬならこのまま握りつぶすぞ」
そう言って手に力を込めるアナリンだけど、僕は歯を食いしばって首を横に振る。
この妖精の状態で握りつぶされたとしても、強制的にこの体からログアウトされるだけだ。
それ自体は深刻なことじゃない。
でも、ここでログアウトしてしまえば、川に流されたミランダを助けられなくなる。
アナリンに締め上げられながら僕は必死に声を絞り出した。
「ミ、ミランダ様を探しているところです」
アナリンは僕がアルフレッドだということは知らない。
だから僕も使い魔の妖精になり切ってそう言った。
そんな僕をじっと眇め見るとアナリンは鼻を鳴らした。
「フンッ。まあいい。貴様を解剖してログを解析すれば分かることだ」
か、解剖?
アナリンにはNPCのログを解析する手段があるのか?
そんな僕の疑問をよそにアナリンは僕を握る手の力をわずかに緩めて言った。
「ところであのアルフレッドとかいう雑兵は避難したとミランダが言っていたが、王都にいるということか? 答えろ」
え?
僕のことを探している?
何で?
確かにアナリンは王都で僕が嘘をついて彼女を欺いたことを根に持っているみたいだった。
舌を斬り取ってやるとか恐ろしいこと言ってたし。
けど、そんなことで僕を探すか?
「奴が姿を消し、王女の行方も分からなくなった。あのこざかしい男が神と画策して王女を何処かへと匿っているのではないのか? 答えよ!」
そ、それを疑っているのか。
アナリンの予想は外れている。
王女様の行方は僕も知らない。
アナリンにじっと睨まれたまま困惑する僕だけど、そこでふいに前方から馬の嘶く声が聞こえてきたんだ。
それは悲鳴のようなけたたましい声だった。
その声を聞いたアナリンはハッと顔を上げ、僕をその手に掴んだまま即座に駆け出す。
「天烈!」
アナリンは川面の岩を次々と飛び移りながら跳躍して川岸に降り立つと、疾風のごとく駆けていく。
向かう先の森が赤く燃えていた。
すさまじい勢いで火が燃え上がり、近付くほどにパチパチと木々の爆ぜる音が聞こえてくる。
その現場に到着すると、先ほどアニヒレートが放った青い光弾のせいで地面がえぐれて、木々が根元から吹き飛ばされていた。
そして燃える森の中、炎に囲まれた天馬・天烈の姿があった。
その両翼には火が燃え移っていて、天烈がいくら翼をはためかせても、うまく飛び上がることが出来ないようだ。
天烈は苦しげな息遣いを漏らしながら、必死に耐えている。
体も大きく頑強そうな天馬だけど、あれじゃいずれ炎に巻かれて死んでしまうぞ。
アナリンはわずかに表情を歪めて唇を噛んでいたけれど、すぐに冷徹な光をその目に宿した。
「……やむをえまい。翼を失う屈辱を受けるくらいなら、ひと思いに送ってやる。許せ。天烈」
アナリンはそう言うと、掴んでいた僕を放り出して刀に手をかけ、居合いの構えで腰を沈めた。
ま、まさか……。
「使い魔。どこへでも逃げるがいい。天烈を介錯したら、即座に追いかけて捕まえてやる」
介錯?
やっぱり殺すってことか。
確かに天烈の翼はすっかり炎に包まれて、たとえ火を消しても翼を回復させるには時間をかけて高度な回復魔法を施すしかない。
アナリンにはそんな時間はないってことなんだ。
天烈はアナリンの構えを見て覚悟を決めたのか、おとなしく首を下げてじっとしている。
己の死の運命を受け入れているんだ。
「鬼嵐刃!」
そう言ってアナリンが黒狼牙を頭上に掲げると例によって刃の嵐が巻き起こり、天烈の周囲で燃えている木々が吹き飛ばされる。
そしてアナリンは即座に刀を鞘に一旦収めると再び腰を落とした。
天烈はいよいよ最後と、一度だけ大きく嘶き、首を下げてじっと動かなくなる。
アナリンはグッと唇を噛み締めて刀に手をかけると目を閉じた。
あ、ああ……。
両者のその姿に、僕は何だか分からないけど胸がざわついて、咄嗟に声を上げていた。
「ちょ、ちょっと待って!」
そう言うと僕はアイテム・ストックの中から思いつく限りのアイテムを取り出す。
僕のアイテム・ストックにはかなり雑多な内容のアイテムが多数入っているんだ。
備えあれば憂いなしと言うし、僕は自分の少ない給金をほとんどアイテム購入に費やしている。
そんな僕が数あるアイテムの中から選び出したのは、冷却性消火器と火傷に聞く薬剤、そして体表の損傷を早く治す効果のある包帯だ。
そのうち冷却性消火器を僕は天烈の翼に向けて放射した。
するとノズルから発せられた超低温の泡が天烈の左右の翼に次々と振りかかり、そこにまとわりついて炎を消す。
うまくいったぞ。
天烈はブルルと鼻を鳴らす。
そしてアナリンは奇妙なものを見るような顔で僕を見て言った。
「貴様……どういうつもりだ」
咄嗟に自分がした行為に驚いていた僕自身も、それに明確な答えを返すことは出来なかった。
でも、敵であり冷酷なサムライであるはずのアナリンが天烈を斬ろうとした時にわずかに見せた苦しげな表情と、覚悟を決めたような悲しげな天烈の姿を見て、僕は反射的に動いていたんだ。
「火傷をすぐに治すのは難しいけれど、この薬を今のうちに処置すればいずれ治る。ここで殺さなくても済むよ」
「そんなことは聞いていない! 貴様、何が目的だ」
アナリンは刀の切っ先を僕に向ける。
僕はそんな彼女の足元に火傷用の薬剤と包帯を放った。
「君は天烈が大事なんでしょ。その気持ちは分かるから。僕はもう行くよ。もし追いかけて来るなら好きにすればいい」
そう言うと僕は上空に上昇する。
これは賭けだった。
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だけど僕が50メートル近く上昇してもアナリンは僕を追って来なかった。
天烈が飛べない今、この高さまで上昇すれば、飛行能力のないアナリンは追って来られないはずだ。
下を見下ろしても燃える森から立ち上る黒煙でアナリンの姿を見ることは出来ない。
とにかく僕は今のうちにミランダを探さないと。
この高さになると森の向こう側にダンゲルンの街並みが見渡せる。
そしてこの森とダンゲルンの間に広がる平原には、アニヒレートを迎え撃つために集結したプレイヤーの軍勢が見えた。
当のアニヒレートは変わらずに氷漬けになったままだ。
そして先ほどミランダが流された川は、森の東へと流れが続いていることが分かった。
僕はその方角へ急いで向かう。
だけどその時、背後から奇妙な音が響いてきたんだ。
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