22 / 87
第二章 リモート・ミッション・β
第6話 空から降る光
しおりを挟む
次々と空から降りそそぐ謎の炎塊が僕らの乗って来た船を襲う。
ガレー船は弧を描くように回避行動を取るけれど、いくら脚の速い船でも高速飛来する火球を避け切ることは出来ずに次々と被弾してしまう。
僕はジェネットの法衣の懐に入ったまま、被弾する甲板の上で七転八倒する船員たちの様子を見てたまらずに声を上げた。
「まずいよジェネット! このままじゃ船が沈められちゃう」
「ノア! 手伝って下さい! ヴィクトリアは甲板で迎撃を!」
ジェネットの声にノアはすぐに応じて空中に浮かび上がり、ヴィクトリアは素早く両手に2本の羽蛇斧を構えた。
「ジェネット。上空からの狙撃って一体……」
「我々があの船を追うことを嫌う輩がいるということですね。もしアナリンが敵船に乗っているとすれば……」
「それはアナリンの仲間ってことだね」
「ええ……来ます!」
ジェネットの声で反射的に見上げた上空に浮かぶ雲の中、何かが光った。
そうかと思うと、あっという間に炎塊が目の前に迫ってきた。
「清光霧!」
反射的にジェネットは徴悪杖を振り上げて得意の魔法・清光霧を噴射した。
光り輝く聖なる霧が杖の先端の宝玉から噴き出して、頭上から迫る炎塊を迎え撃つ。
その二つがぶつかった途端、激しい閃光が瞬いて爆発音が轟いた。
「くっ!」
「ひえっ!」
頭上で起きた爆発の衝撃は強く、ジェネットはたまらずに顔を背ける。
そんな僕らから十数メートル離れた空中に浮かぶノアは、蛇龍槍を振るって落ちてくる炎塊を叩き返したけれど、同じように爆発に巻き込まれていた。
「ノア!」
あの炎塊は触れたら爆発するんだ。
でもその正体は一体何なんだ?
爆発で巻き起こった白煙の中から出てきたノアはノー・ダメージだった。
さすが防御力ナンバーワンの竜人ノアだ。
彼女の鱗はそうそう簡単には傷つけられない。
ノアは平然とした顔で頭上を見上げると、蛇龍槍を持つ手を下ろし、再び降ってくる炎塊を敢えてその身で受け止めたんだ。
当然、激しい爆発が巻き起こる。
「ノア!」
さっきは槍で叩き落としたからノー・ダメージだったけれど、体でまともに受けた今度はいかにノアといえどもダメージを負ってしまっている。
といっても彼女の特徴としてライフの総量は7と極端に少ない代わりにダメージは1ずつしか受けないので、まだ6/7のライフが残っているんだけど。
だけど彼女がそんなことをしたのには当然、意味があった。
「謎の炎の正体見たり、だな」
爆発に耐えたノアはその頬を煤で汚しながら、その手に何かを掴んでそう言った。
彼女の持つそれは上半分が爆発して吹き飛んでいるけれど、下半分は金属で渦巻き状に作られた30センチほどの奇妙な形の筒だった。
「原理はよく分からぬが、これが発火体となっているんだろう。吹き飛んでいる上半分には衝撃で誘爆するように爆薬でも詰めておるに違いない」
そう言うとノアはそれを放り捨てて、頭上に向けて得意のブレス・聖邪の炎を噴射した。
白と黒の斑色の炎が、上空から飛来する炎塊とぶつかり合って爆発する。
「こ、これなら迎撃できるね!」
僕は安堵してそう声を上げたけれど、ノアもジェネットも頭上を見上げたまま懸念の表情を崩していない。
「そう簡単にはいかないようだぞ。アルフリーダ」
「降り落とされないよう、しっかりつかまっていて下さいね。アル様」
彼女たちの言葉の通り、上空の雲の中にいくつもの光が瞬いた。
それは3つ、4つ、いや……10は越える数だ!
咄嗟にジェネットとノアがそれぞれの魔法とブレスで迎撃を試みるけれど、炎塊の数が多すぎた。
迎撃し切れないそれらがいくつも海面に落ちて爆発し、盛大に水柱を立たせる。
その水柱の合間を縫うようにして航行するガレー船の甲板に立つヴィクトリアは、2本の羽蛇斧を鋭く投げ放った。
「オラアッ! ナメんじゃねえ!」
羽蛇斧追尾によって自在に宙を舞う2本の手斧が迫り来る炎塊を迎撃して爆発する。
もちろん歴戦の武器である羽蛇斧が破壊されることはなく、それらはヴィクトリアの念力に操られて宙を舞い、彼女の手元に戻った。
だけど雲の上から舞い落ちてくる炎塊は止むことが無く、その数と勢いを増していく。
このままじゃ対応しきれないぞ!
「ノア! 船の真上で迎撃態勢を取って下さい! 私は狙撃手を炙り出します」
ジェネットはそう言うと束の間、法力を高めるために精神を集中させる。
彼女の上位スキルである必殺の魔法が炸裂するのが分かった。
「断罪の矢!」
そう言ってジェネットが懲悪杖を振り上げると、雲の中でいくつもの爆発音が響き渡った。
彼女の放つ断罪の矢は、無数の光の矢が天空から舞い降りてくる弾幕となって敵を襲う、強力な攻撃魔法だ。
だから雲の中ではすでにジェネットの魔法が敵の攻撃とぶつかり合って相殺されている。
あの爆発はそのせいだ。
そしてもしあの雲の中に炎塊を投射している主が潜んでいれば、断罪の矢によって攻撃されているはずだ。
それがジェネットの狙いだった。
だけどその狙いは無念にも当たらなかった。
雲の中の爆発のおかげで炎塊の放射を一時的に止めることは出来たけれど、それもほんの束の間のことで、すぐに再び炎塊の爆撃が再開された。
そして爆撃の主は一向に姿を表さない。
ジェネットの断罪の矢は無数の光の矢の弾幕だけど、それでも敵を捉えることは出来なかったってことか?
僕が困惑していると、不意にノアが声を上げた。
「ジェネット! 天空の敵は捨て置け! ノアが船に直撃しそうな火球だけを迎撃する。そなたは敵船を追え! 今はとにかくあの船を逃すでない。せっかくここまで追い詰めたのだからな」
そう言うとノアは船を守りながら飛び、聖邪の炎で炎塊を迎撃する。
そうだ。
敵の船を追っている今、上空の敵にばかり気を取られているわけにはいかない。
「ノア! 決して無茶をしてはいけませんよ! ガレー船を守ることだけに集中して下さい!」
ジェネットの言葉に分かったというようにノアは一度槍をブルンと振るって見せた。
この集中砲火の中、ノアのことは心配だけど、簡単にやられる彼女じゃない。
無理さえしなければ大丈夫だろう。
確かにノアの言う通り、このままじゃ敵の船に追いつけない。
次々と降り注ぐ炎塊の爆撃がガレー船を襲う。
ガレー船は敵船を追ってまっすぐ進み続けるから、上から見れば格好の的だ。
かといって光を避けようとして蛇行すればそれだけ速度が落ちてしまい、敵の船を逃してしまう。
そんなジレンマを解消すべく、ジェネットは一気に空を飛行して敵船へと向かった。
「行きますよ! アル様!」
「うん!」
単独先行になるけれど、とにかくあの船に取り付いてその進行を止めなくちゃならない。
ジェネットは海風を切り裂くように高速飛翔し、一気に敵船に接近する。
後ろからは追いすがる様に炎の爆撃が追ってくるけど、ジェネットはそれらをくぐり抜けて敵船まで100メートルほどまで迫った。
ここまで近付くと、奇妙な船の全容が見えてきた。
「何なんだ? あの船」
その船は僕の知る船とはまったく異なる姿をしていたんだ。
流線型の黒い鉄の塊のような船体には甲板と呼べるものがなく、乗組員の姿は見えない。
いや……流線型の頂点となる場所に小さな見張り台のようなスペースが設けられていて、そこに1人の人物が立っていた。
その人物を見て僕は思わず息を飲んだ。
それは刀を腰に携えた1人の少女だったんだ。
「アナリンだ!」
そこに立って僕らを見上げているのは確かにサムライ少女・アナリンだった。
やっぱりあの船に乗って逃げ去ろうとしているんだ。
その時、僕の目を通してこの状況を見ている王都の神様から通信が入った。
【あの船はこのゲーム世界には存在しないが、潜水艇という船だ。水の上ではなく水の中を進む船なんだ。あのアナリンが立っている艦橋と呼ばれる場所にしか出入口はないぞ】
神様からのその説明をすぐにジェネットに伝えていると、僕らの見ている前でその潜水艇は海中へと沈んでいく。
そして艦橋に立っていたアナリンは足元の出入口の蓋を開けると中に乗り込んでいこうとしていた。
「逃がしません!」
ジェネットはそこで素早く断罪の矢を放つ。
天空から降り注ぐ光の矢は敵船に襲いかかった。
もちろんあの船に王様が捕らえられているかもしれないのはジェネットも分かっていて、彼女は船体に損傷を与えないよう光の矢をコントロールしていた。
アナリンはいち早く船内に潜り込んでしまったけれど、彼女が閉めようとした出入口の蓋に断罪の矢が直撃して吹き飛ばしたんだ。
蓋が吹き飛ばされて密閉することが出来なくなったためか、潜水艇は潜水を停止してその場で止まった。
「やった!」
「強行突入します! アル様。つかまってて下さい!」
ジェネットの言葉に頷き、僕は彼女の法衣にしがみつく。
ジェネットは停止した船目がけて急降下していった。
そんな僕らを撃墜しようと上空から炎塊の爆撃が雨あられと降りそそぐ。
くっ!
何て数だ!
後方のガレー船じゃなくて僕らの方に集中して炎塊は降り注いでくる。
まだ見ぬ爆撃の主は船に近付く僕らを何が何でも排除しようとしていた。
「うわわわわわっ!」
すぐ間近に炎塊が落下して水しぶきを上げる中、それでもジェネットは怯まずに船体に取りつき、艦橋の欄干にしがみついた。
そして素早く自分のアイテム・ストックから何かを取り出すと、それを開いたままの潜水艇の出入口に放り込んだんだ。
途端に激しい爆発音がして、その出入口から強い光と白煙が舞い上がった。
「アル様! 目を閉じて息を止めて下さい! 突入します!」
そう言うとジェネットは懲悪杖を体の前面に構えて、滑り込むように潜水艇の出入口に身を投じた。
ガレー船は弧を描くように回避行動を取るけれど、いくら脚の速い船でも高速飛来する火球を避け切ることは出来ずに次々と被弾してしまう。
僕はジェネットの法衣の懐に入ったまま、被弾する甲板の上で七転八倒する船員たちの様子を見てたまらずに声を上げた。
「まずいよジェネット! このままじゃ船が沈められちゃう」
「ノア! 手伝って下さい! ヴィクトリアは甲板で迎撃を!」
ジェネットの声にノアはすぐに応じて空中に浮かび上がり、ヴィクトリアは素早く両手に2本の羽蛇斧を構えた。
「ジェネット。上空からの狙撃って一体……」
「我々があの船を追うことを嫌う輩がいるということですね。もしアナリンが敵船に乗っているとすれば……」
「それはアナリンの仲間ってことだね」
「ええ……来ます!」
ジェネットの声で反射的に見上げた上空に浮かぶ雲の中、何かが光った。
そうかと思うと、あっという間に炎塊が目の前に迫ってきた。
「清光霧!」
反射的にジェネットは徴悪杖を振り上げて得意の魔法・清光霧を噴射した。
光り輝く聖なる霧が杖の先端の宝玉から噴き出して、頭上から迫る炎塊を迎え撃つ。
その二つがぶつかった途端、激しい閃光が瞬いて爆発音が轟いた。
「くっ!」
「ひえっ!」
頭上で起きた爆発の衝撃は強く、ジェネットはたまらずに顔を背ける。
そんな僕らから十数メートル離れた空中に浮かぶノアは、蛇龍槍を振るって落ちてくる炎塊を叩き返したけれど、同じように爆発に巻き込まれていた。
「ノア!」
あの炎塊は触れたら爆発するんだ。
でもその正体は一体何なんだ?
爆発で巻き起こった白煙の中から出てきたノアはノー・ダメージだった。
さすが防御力ナンバーワンの竜人ノアだ。
彼女の鱗はそうそう簡単には傷つけられない。
ノアは平然とした顔で頭上を見上げると、蛇龍槍を持つ手を下ろし、再び降ってくる炎塊を敢えてその身で受け止めたんだ。
当然、激しい爆発が巻き起こる。
「ノア!」
さっきは槍で叩き落としたからノー・ダメージだったけれど、体でまともに受けた今度はいかにノアといえどもダメージを負ってしまっている。
といっても彼女の特徴としてライフの総量は7と極端に少ない代わりにダメージは1ずつしか受けないので、まだ6/7のライフが残っているんだけど。
だけど彼女がそんなことをしたのには当然、意味があった。
「謎の炎の正体見たり、だな」
爆発に耐えたノアはその頬を煤で汚しながら、その手に何かを掴んでそう言った。
彼女の持つそれは上半分が爆発して吹き飛んでいるけれど、下半分は金属で渦巻き状に作られた30センチほどの奇妙な形の筒だった。
「原理はよく分からぬが、これが発火体となっているんだろう。吹き飛んでいる上半分には衝撃で誘爆するように爆薬でも詰めておるに違いない」
そう言うとノアはそれを放り捨てて、頭上に向けて得意のブレス・聖邪の炎を噴射した。
白と黒の斑色の炎が、上空から飛来する炎塊とぶつかり合って爆発する。
「こ、これなら迎撃できるね!」
僕は安堵してそう声を上げたけれど、ノアもジェネットも頭上を見上げたまま懸念の表情を崩していない。
「そう簡単にはいかないようだぞ。アルフリーダ」
「降り落とされないよう、しっかりつかまっていて下さいね。アル様」
彼女たちの言葉の通り、上空の雲の中にいくつもの光が瞬いた。
それは3つ、4つ、いや……10は越える数だ!
咄嗟にジェネットとノアがそれぞれの魔法とブレスで迎撃を試みるけれど、炎塊の数が多すぎた。
迎撃し切れないそれらがいくつも海面に落ちて爆発し、盛大に水柱を立たせる。
その水柱の合間を縫うようにして航行するガレー船の甲板に立つヴィクトリアは、2本の羽蛇斧を鋭く投げ放った。
「オラアッ! ナメんじゃねえ!」
羽蛇斧追尾によって自在に宙を舞う2本の手斧が迫り来る炎塊を迎撃して爆発する。
もちろん歴戦の武器である羽蛇斧が破壊されることはなく、それらはヴィクトリアの念力に操られて宙を舞い、彼女の手元に戻った。
だけど雲の上から舞い落ちてくる炎塊は止むことが無く、その数と勢いを増していく。
このままじゃ対応しきれないぞ!
「ノア! 船の真上で迎撃態勢を取って下さい! 私は狙撃手を炙り出します」
ジェネットはそう言うと束の間、法力を高めるために精神を集中させる。
彼女の上位スキルである必殺の魔法が炸裂するのが分かった。
「断罪の矢!」
そう言ってジェネットが懲悪杖を振り上げると、雲の中でいくつもの爆発音が響き渡った。
彼女の放つ断罪の矢は、無数の光の矢が天空から舞い降りてくる弾幕となって敵を襲う、強力な攻撃魔法だ。
だから雲の中ではすでにジェネットの魔法が敵の攻撃とぶつかり合って相殺されている。
あの爆発はそのせいだ。
そしてもしあの雲の中に炎塊を投射している主が潜んでいれば、断罪の矢によって攻撃されているはずだ。
それがジェネットの狙いだった。
だけどその狙いは無念にも当たらなかった。
雲の中の爆発のおかげで炎塊の放射を一時的に止めることは出来たけれど、それもほんの束の間のことで、すぐに再び炎塊の爆撃が再開された。
そして爆撃の主は一向に姿を表さない。
ジェネットの断罪の矢は無数の光の矢の弾幕だけど、それでも敵を捉えることは出来なかったってことか?
僕が困惑していると、不意にノアが声を上げた。
「ジェネット! 天空の敵は捨て置け! ノアが船に直撃しそうな火球だけを迎撃する。そなたは敵船を追え! 今はとにかくあの船を逃すでない。せっかくここまで追い詰めたのだからな」
そう言うとノアは船を守りながら飛び、聖邪の炎で炎塊を迎撃する。
そうだ。
敵の船を追っている今、上空の敵にばかり気を取られているわけにはいかない。
「ノア! 決して無茶をしてはいけませんよ! ガレー船を守ることだけに集中して下さい!」
ジェネットの言葉に分かったというようにノアは一度槍をブルンと振るって見せた。
この集中砲火の中、ノアのことは心配だけど、簡単にやられる彼女じゃない。
無理さえしなければ大丈夫だろう。
確かにノアの言う通り、このままじゃ敵の船に追いつけない。
次々と降り注ぐ炎塊の爆撃がガレー船を襲う。
ガレー船は敵船を追ってまっすぐ進み続けるから、上から見れば格好の的だ。
かといって光を避けようとして蛇行すればそれだけ速度が落ちてしまい、敵の船を逃してしまう。
そんなジレンマを解消すべく、ジェネットは一気に空を飛行して敵船へと向かった。
「行きますよ! アル様!」
「うん!」
単独先行になるけれど、とにかくあの船に取り付いてその進行を止めなくちゃならない。
ジェネットは海風を切り裂くように高速飛翔し、一気に敵船に接近する。
後ろからは追いすがる様に炎の爆撃が追ってくるけど、ジェネットはそれらをくぐり抜けて敵船まで100メートルほどまで迫った。
ここまで近付くと、奇妙な船の全容が見えてきた。
「何なんだ? あの船」
その船は僕の知る船とはまったく異なる姿をしていたんだ。
流線型の黒い鉄の塊のような船体には甲板と呼べるものがなく、乗組員の姿は見えない。
いや……流線型の頂点となる場所に小さな見張り台のようなスペースが設けられていて、そこに1人の人物が立っていた。
その人物を見て僕は思わず息を飲んだ。
それは刀を腰に携えた1人の少女だったんだ。
「アナリンだ!」
そこに立って僕らを見上げているのは確かにサムライ少女・アナリンだった。
やっぱりあの船に乗って逃げ去ろうとしているんだ。
その時、僕の目を通してこの状況を見ている王都の神様から通信が入った。
【あの船はこのゲーム世界には存在しないが、潜水艇という船だ。水の上ではなく水の中を進む船なんだ。あのアナリンが立っている艦橋と呼ばれる場所にしか出入口はないぞ】
神様からのその説明をすぐにジェネットに伝えていると、僕らの見ている前でその潜水艇は海中へと沈んでいく。
そして艦橋に立っていたアナリンは足元の出入口の蓋を開けると中に乗り込んでいこうとしていた。
「逃がしません!」
ジェネットはそこで素早く断罪の矢を放つ。
天空から降り注ぐ光の矢は敵船に襲いかかった。
もちろんあの船に王様が捕らえられているかもしれないのはジェネットも分かっていて、彼女は船体に損傷を与えないよう光の矢をコントロールしていた。
アナリンはいち早く船内に潜り込んでしまったけれど、彼女が閉めようとした出入口の蓋に断罪の矢が直撃して吹き飛ばしたんだ。
蓋が吹き飛ばされて密閉することが出来なくなったためか、潜水艇は潜水を停止してその場で止まった。
「やった!」
「強行突入します! アル様。つかまってて下さい!」
ジェネットの言葉に頷き、僕は彼女の法衣にしがみつく。
ジェネットは停止した船目がけて急降下していった。
そんな僕らを撃墜しようと上空から炎塊の爆撃が雨あられと降りそそぐ。
くっ!
何て数だ!
後方のガレー船じゃなくて僕らの方に集中して炎塊は降り注いでくる。
まだ見ぬ爆撃の主は船に近付く僕らを何が何でも排除しようとしていた。
「うわわわわわっ!」
すぐ間近に炎塊が落下して水しぶきを上げる中、それでもジェネットは怯まずに船体に取りつき、艦橋の欄干にしがみついた。
そして素早く自分のアイテム・ストックから何かを取り出すと、それを開いたままの潜水艇の出入口に放り込んだんだ。
途端に激しい爆発音がして、その出入口から強い光と白煙が舞い上がった。
「アル様! 目を閉じて息を止めて下さい! 突入します!」
そう言うとジェネットは懲悪杖を体の前面に構えて、滑り込むように潜水艇の出入口に身を投じた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
どうせ俺はNPCだから
枕崎 純之助
ファンタジー
【完結しました!】 *この作品はこちらのスピンオフになります↓
『だって僕はNPCだから』https://www.alphapolis.co.jp/novel/540294390/346478298
天使たちのゲーム世界である「天国の丘《ヘヴンズ・ヒル》」と対を成す悪魔たちのゲーム世界「地獄の谷《ヘル・バレー》」。
NPCとして鬱屈した日々を過ごす下級悪魔のバレットは、上級悪魔たちのワナにハメられ、脱出不可能と言われる『悪魔の臓腑』という深い洞窟の奥深くに閉じ込められてしまった。
そこでバレットはその場所にいるはずのない見習い天使の少女・ティナと出会う。
バレットはまだ知らない。
彼女が天使たちの長たる天使長の2代目候補であるということを。
NPCの制約によって強さの上限値を越えられない下級悪魔と、秘められた自分の潜在能力の使い方が分からない見習い天使が出会ったことで、2人の運命が大きく変わる。
悪魔たちの世界を舞台に繰り広げられるNPC冒険活劇の外伝。
ここに開幕。
*イラストACより作者「Kotatsune」様のイラストを使用させていただいております。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】どうやら魔森に捨てられていた忌子は聖女だったようです
山葵
ファンタジー
昔、双子は不吉と言われ後に産まれた者は捨てられたり、殺されたり、こっそりと里子に出されていた。
今は、その考えも消えつつある。
けれど貴族の中には昔の迷信に捕らわれ、未だに双子は家系を滅ぼす忌子と信じる者もいる。
今年、ダーウィン侯爵家に双子が産まれた。
ダーウィン侯爵家は迷信を信じ、後から産まれたばかりの子を馭者に指示し魔森へと捨てた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる