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第四章 追跡! 響詩郎 救出 大作戦!
第20話 白雪の秘策
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「うぅ……」
紫水の膝の上で白雪がうめき声を上げて目を覚ました。
「姫さま……」
心配そうに彼女を覗き込む紫水の下で白雪はハッとしてすぐに起き上がった。
「大蛇は……」
白雪はすぐに周囲を見渡し、黒炎を連続で吐き出しているオロチの姿を目視した。
オロチは自分の周囲を飛び回る小さな影を黒い炎で撃墜しようとしている。
「あれは……」
白雪は目を凝らすと、それが雷奈であることを察したが、雷奈の背に何か小さな人影がくっついていることと、その人影が翼をはためかせているのを見て怪訝な顔を見せた。
そんな主の様子に紫水が口を挟む。
「よく分かりませんが、鬼ヶ崎雷奈の新たな能力のようです」
紫水は委細を説明することはせず、ただそう告げた。
白雪は素早く状況を判断すると緊迫した顔で雷奈の奮戦を見つめる。
「そうですか。ですが、あのままではいずれ炎に焼かれてしまいます。援護を」
「しかし我々にはもはや打てる手立てが……」
そう言って口ごもる紫水に目をやると、白雪は何かを思いついたかのように目を見開いた。
そして何も言わずに立ち上がると、おぼつかない足取りで数メートル先にある船体に開いた大きな穴の近くへと向かった。
そこはオロチ出現の際に出来た大きな大穴が開いており、最下層の船底までを見下ろすことができた。
そして船底には響詩郎の亡骸が床に横たえられている。
「姫さま! ご無理は……」
そう言って紫水はすぐに白雪に駆け寄り、穴の手前で彼女の肩を掴んでその場に留まらせた。
「姫さま。一体何を……」
「転生の施術は残念ながら失敗に終わったようですね。我が無力を呪います」
唇を歪ませて悲しげにそう言う白雪に、紫水はかける言葉を失った。
「姫さま……」
「響詩郎さま。必ず仇は討ってみせます」
悲痛な表情でそう呟くと白雪は視線をずらして、最下層の廊下部分に目をやった。
そこには先ほど彼女が打ち倒したヨンスの亡骸が横たわっており、そのすぐ傍には小刀が落ちていた。
白雪はその様子を見てとると、すぐに紫水に指示を出した。
「紫水。あの小刀をここに」
一瞬、主の意図を探った紫水だったが、すぐにその真意を察して頷くと、大破して筒抜けになっている最下層へと身を躍らせた。
紫水の膝の上で白雪がうめき声を上げて目を覚ました。
「姫さま……」
心配そうに彼女を覗き込む紫水の下で白雪はハッとしてすぐに起き上がった。
「大蛇は……」
白雪はすぐに周囲を見渡し、黒炎を連続で吐き出しているオロチの姿を目視した。
オロチは自分の周囲を飛び回る小さな影を黒い炎で撃墜しようとしている。
「あれは……」
白雪は目を凝らすと、それが雷奈であることを察したが、雷奈の背に何か小さな人影がくっついていることと、その人影が翼をはためかせているのを見て怪訝な顔を見せた。
そんな主の様子に紫水が口を挟む。
「よく分かりませんが、鬼ヶ崎雷奈の新たな能力のようです」
紫水は委細を説明することはせず、ただそう告げた。
白雪は素早く状況を判断すると緊迫した顔で雷奈の奮戦を見つめる。
「そうですか。ですが、あのままではいずれ炎に焼かれてしまいます。援護を」
「しかし我々にはもはや打てる手立てが……」
そう言って口ごもる紫水に目をやると、白雪は何かを思いついたかのように目を見開いた。
そして何も言わずに立ち上がると、おぼつかない足取りで数メートル先にある船体に開いた大きな穴の近くへと向かった。
そこはオロチ出現の際に出来た大きな大穴が開いており、最下層の船底までを見下ろすことができた。
そして船底には響詩郎の亡骸が床に横たえられている。
「姫さま! ご無理は……」
そう言って紫水はすぐに白雪に駆け寄り、穴の手前で彼女の肩を掴んでその場に留まらせた。
「姫さま。一体何を……」
「転生の施術は残念ながら失敗に終わったようですね。我が無力を呪います」
唇を歪ませて悲しげにそう言う白雪に、紫水はかける言葉を失った。
「姫さま……」
「響詩郎さま。必ず仇は討ってみせます」
悲痛な表情でそう呟くと白雪は視線をずらして、最下層の廊下部分に目をやった。
そこには先ほど彼女が打ち倒したヨンスの亡骸が横たわっており、そのすぐ傍には小刀が落ちていた。
白雪はその様子を見てとると、すぐに紫水に指示を出した。
「紫水。あの小刀をここに」
一瞬、主の意図を探った紫水だったが、すぐにその真意を察して頷くと、大破して筒抜けになっている最下層へと身を躍らせた。
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