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第四章 追跡! 響詩郎 救出 大作戦!
第14話 光を放て! 白雪の奮闘!
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白雪の後に続き、紫水が弥生とルイランを抱えて甲板の上へと飛び上がった。
着地した紫水が目にしたのは、オロチの尾の鋭い一振りをまともに浴びて、雷奈が海へと墜落していくところだった。
「雷奈さん!」
まっ逆さまに墜落していく彼女の様子に、船上で弥生は思わず叫び声を上げた。
だが、はじかれたように白雪が素早く光の矢を放つと、それは高速で宙を飛び、海面スレスレで雷奈の神衣の首もとに引っかかった。
光の矢はそのまま彼女を運び去っていく。
あまりにも鮮やかなその技術に紫水は思わず目を奪われた。
針の穴を通す正確さと自由自在に矢を操るその力は、幼少の頃より英才教育を施されてきた白雪ならではの技術だった。
同じ事をやれと言われたら紫水は即座に降参するだろう。
光の矢はそのまま旋廻して船の上へと戻り、紫水の真上で雷奈を振り落とした。
紫水は失神したままの雷奈を抱き止めるとその体を甲板に横たえ、息のあることを確認した。
「この衣の防御力のおかげもあるだろうが、それにしてもしぶとい娘だ」
そう言った紫水だが、雷奈の左の腕が骨折していることがすぐに分かった。
そんな彼女の目の前で白雪が駆け出す。
「姫さま!」
紫水の呼びかけにも振り返らず、白雪は大きく飛び上がって船の最上階へと降り立った。
紫水を見下ろすと白雪は軽く手を振った。
「3人を頼みますわよ。紫水」
「無茶です! 姫さま!」
だが紫水の心配をよそに白雪は海上にそびえ立つ塔のようなオロチの姿を見据えた。
海風が白雪の艶のある白髪を揺らす。
「禍々しい神ですこと。あんなもののために響詩郎さまは……」
白雪は怒りに唇を震わせると、静かに呼吸を整えて力を高めていく。
オロチとの距離はわずかに200メートルほどである。
小鬼らとの戦闘やヨンスとの果し合い、そして響詩郎への魔族転生の施術。
一連の行動で白雪の体力は著しく低下していたが、雷奈が倒れた今、オロチと戦えるのは自分しかいないことも彼女は分かっていた。
白雪は自分を奮い立たせ集中力を研ぎ澄ませると、今日すでに数千本は放っている光の矢をその体の周囲に無数に展開する。
白く輝く矢の先端は、全てオロチに狙いを定められていた。
一方、弾き飛ばした雷奈を救う光の矢を見ていたヒミカは、船の最上階である3階部分に光の矢の主である白雪が陣取っていることに気が付いて愉快そうに声を上げた。
「次の相手は狩人の娘か。面白い。遠距離射撃を得意とする相手にどのように対処が出来るか試させてもらおう」
そう言うとヒミカはオロチの頭を白雪の方向へと転じた。
ヒミカにとってこの戦いは試運転であり、ただ戦って勝つだけではなくオロチに何が出来るのかを見極める必要がある。
色々なタイプの敵と戦えることは何よりの収穫だった。
着地した紫水が目にしたのは、オロチの尾の鋭い一振りをまともに浴びて、雷奈が海へと墜落していくところだった。
「雷奈さん!」
まっ逆さまに墜落していく彼女の様子に、船上で弥生は思わず叫び声を上げた。
だが、はじかれたように白雪が素早く光の矢を放つと、それは高速で宙を飛び、海面スレスレで雷奈の神衣の首もとに引っかかった。
光の矢はそのまま彼女を運び去っていく。
あまりにも鮮やかなその技術に紫水は思わず目を奪われた。
針の穴を通す正確さと自由自在に矢を操るその力は、幼少の頃より英才教育を施されてきた白雪ならではの技術だった。
同じ事をやれと言われたら紫水は即座に降参するだろう。
光の矢はそのまま旋廻して船の上へと戻り、紫水の真上で雷奈を振り落とした。
紫水は失神したままの雷奈を抱き止めるとその体を甲板に横たえ、息のあることを確認した。
「この衣の防御力のおかげもあるだろうが、それにしてもしぶとい娘だ」
そう言った紫水だが、雷奈の左の腕が骨折していることがすぐに分かった。
そんな彼女の目の前で白雪が駆け出す。
「姫さま!」
紫水の呼びかけにも振り返らず、白雪は大きく飛び上がって船の最上階へと降り立った。
紫水を見下ろすと白雪は軽く手を振った。
「3人を頼みますわよ。紫水」
「無茶です! 姫さま!」
だが紫水の心配をよそに白雪は海上にそびえ立つ塔のようなオロチの姿を見据えた。
海風が白雪の艶のある白髪を揺らす。
「禍々しい神ですこと。あんなもののために響詩郎さまは……」
白雪は怒りに唇を震わせると、静かに呼吸を整えて力を高めていく。
オロチとの距離はわずかに200メートルほどである。
小鬼らとの戦闘やヨンスとの果し合い、そして響詩郎への魔族転生の施術。
一連の行動で白雪の体力は著しく低下していたが、雷奈が倒れた今、オロチと戦えるのは自分しかいないことも彼女は分かっていた。
白雪は自分を奮い立たせ集中力を研ぎ澄ませると、今日すでに数千本は放っている光の矢をその体の周囲に無数に展開する。
白く輝く矢の先端は、全てオロチに狙いを定められていた。
一方、弾き飛ばした雷奈を救う光の矢を見ていたヒミカは、船の最上階である3階部分に光の矢の主である白雪が陣取っていることに気が付いて愉快そうに声を上げた。
「次の相手は狩人の娘か。面白い。遠距離射撃を得意とする相手にどのように対処が出来るか試させてもらおう」
そう言うとヒミカはオロチの頭を白雪の方向へと転じた。
ヒミカにとってこの戦いは試運転であり、ただ戦って勝つだけではなくオロチに何が出来るのかを見極める必要がある。
色々なタイプの敵と戦えることは何よりの収穫だった。
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