上 下
57 / 71
第四章 追跡! 響詩郎 救出 大作戦!

第14話 光を放て! 白雪の奮闘!

しおりを挟む
 白雪の後に続き、紫水しすい弥生やよいとルイランを抱えて甲板の上へと飛び上がった。
 着地した紫水しすいが目にしたのは、オロチの尾の鋭い一振りをまともに浴びて、雷奈らいなが海へと墜落していくところだった。

雷奈らいなさん!」

 まっ逆さまに墜落していく彼女の様子に、船上で弥生やよいは思わず叫び声を上げた。
 だが、はじかれたように白雪が素早く光の矢を放つと、それは高速で宙を飛び、海面スレスレで雷奈らいな神衣かむいの首もとに引っかかった。
 光の矢はそのまま彼女を運び去っていく。
 あまりにも鮮やかなその技術に紫水しすいは思わず目を奪われた。
 針の穴を通す正確さと自由自在に矢を操るその力は、幼少の頃より英才教育を施されてきた白雪ならではの技術だった。
 同じ事をやれと言われたら紫水しすいは即座に降参するだろう。

 光の矢はそのまま旋廻せんかいして船の上へと戻り、紫水しすいの真上で雷奈らいなを振り落とした。
 紫水しすいは失神したままの雷奈らいなを抱き止めるとその体を甲板に横たえ、息のあることを確認した。

「この衣の防御力のおかげもあるだろうが、それにしてもしぶとい娘だ」

 そう言った紫水しすいだが、雷奈らいなの左の腕が骨折していることがすぐに分かった。
 そんな彼女の目の前で白雪が駆け出す。

「姫さま!」

 紫水しすいの呼びかけにも振り返らず、白雪は大きく飛び上がって船の最上階へと降り立った。
 紫水しすいを見下ろすと白雪は軽く手を振った。

「3人を頼みますわよ。紫水しすい
「無茶です! 姫さま!」

 だが紫水しすいの心配をよそに白雪は海上にそびえ立つ塔のようなオロチの姿を見据えた。
 海風が白雪のつやのある白髪を揺らす。

禍々まがまがしい神ですこと。あんなもののために響詩郎きょうしろうさまは……」

 白雪は怒りにくちびるを震わせると、静かに呼吸を整えて力を高めていく。
 オロチとの距離はわずかに200メートルほどである。
 小鬼らとの戦闘やヨンスとの果し合い、そして響詩郎きょうしろうへの魔族転生の施術。
 一連の行動で白雪の体力はいちじるしく低下していたが、雷奈らいなが倒れた今、オロチと戦えるのは自分しかいないことも彼女は分かっていた。

 白雪は自分を奮い立たせ集中力を研ぎ澄ませると、今日すでに数千本は放っている光の矢をその体の周囲に無数に展開する。
 白く輝く矢の先端は、全てオロチに狙いを定められていた。

 一方、弾き飛ばした雷奈らいなを救う光の矢を見ていたヒミカは、船の最上階である3階部分に光の矢の主である白雪が陣取っていることに気が付いて愉快そうに声を上げた。

「次の相手は狩人の娘か。面白い。遠距離射撃を得意とする相手にどのように対処が出来るか試させてもらおう」

 そう言うとヒミカはオロチの頭を白雪の方向へと転じた。
 ヒミカにとってこの戦いは試運転であり、ただ戦って勝つだけではなくオロチに何が出来るのかを見極める必要がある。
 色々なタイプの敵と戦えることは何よりの収穫だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

転生墓守は伝説騎士団の後継者

深田くれと
ファンタジー
 歴代最高の墓守のロアが圧倒的な力で無双する物語。

東京の空の下 ~当節猫又余話~

月夜野 すみれ
ファンタジー
高校二年の大森孝司が目覚めると隣に男が寝ていた。まさか男と初体験してしまったのでは!?と動揺していると、男は目の前で猫になった。 猫が男の姿に化けていたのだ。 猫が化猫だと訴えても家族に信じてもらえないまま学校へ行くと幼馴染みの内藤秀介から彼女が出来たと告げられる。 彼女を紹介してもらうために中央公園に向かうと桜の木の上で化物が人を喰っていた。 そして孝司達も化物に捕まり喰われそうになったところを秀介の彼女に助けられる。 秀介の彼女、武蔵野綾は孝司と同い年くらいに見えた。 だが綾は10年前に失踪した孝司の祖母だと告げられる。 化猫は家に住み着いてしまい、家族がいつ食い殺されるかと気が気ではない。 そして秀介の彼女・武蔵野綾は自分の祖母だと言っているが事実なのだろうか? カクヨム、小説家になろう、noteにも同じものを投稿しています。 カクヨム、noteは1章1話、小説家になろうはここと同じく細切れ版です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...