55 / 71
第四章 追跡! 響詩郎 救出 大作戦!
第12話 強大にして凶悪! オロチの絶対的な力
しおりを挟む
悪路王は大きく舞い上がり、漆黒の拳でオロチの右側頭部を殴りつけた。
だが、その感覚は雷奈が今まで感じたことが無いほど頑強なものだった。
その一撃もまるで効果がないかのようにオロチは首を振ると、その尾で悪路王を叩き落とした。
「くっ!」
海面に漂う船の上から悪路王を操る雷奈は顔をしかめる。
海面に叩きつけられた悪路王はすぐに再び飛び上がり、オロチの胴に鋭い手刀を幾度も打ち込んでいく。
だが、オロチは微動だにせず、今度は頭部の一撃で悪路王の巨体を弾き飛ばした。
吹き飛ばされながらも再び海面から立ち上がるが、悪路王は決して軽くないダメージを負っていた。
白イタチのザバドを倒して45万イービルの軍資金を得ていた雷奈だったが、今のレートで戦い続ければまともに戦えるのはもう5分もない。
それほど悪路王使役の消費レートを高めているというのに、まったくオロチには歯が立たずにいた。
オロチの上に立つヒミカは鼻で笑った。
「貴様の自慢の黒鬼もオロチの前にはまるでノミだな。試し斬りをしたいところだったが、どうやらこちらが強くなりすぎてしまったようだ」
そう言うとヒミカは雷奈を見下して嘲笑した。
雷奈は悔しさに歯噛みして呻く。
「あの妖狐さえ落とせれば……」
響詩郎の顔が脳裏に浮かび、雷奈は歯を食いしばった。
「響詩郎。あんたの仇は絶対に討つ」
雷奈は強気にそう言ったが、何をすればオロチを退けてヒミカを叩き落せるのか、皆目見当もつかなかった。
対照的にオロチの防御力に満足したヒミカの目に殺気が宿る。
「では、そろそろこちらからいかせてもらうぞ」
ヒミカがそう言うと、オロチの赤い舌が鋭く伸びて悪路王を襲った。
オロチの舌は無限に伸びるのではないかと思われるほど長く伸び、さらにその速度は悪路王が完全に避け切れないほど速かった。
そしてその舌の切れ味は鋭利な刃物のようであり、連続で繰り出されるそれを避け切れない悪路王の肩や脇腹は容赦なく削られていく。
「どうした! このまま一方的に終わりか? つまらんな」
その言葉とは裏腹にヒミカは悦に入って圧倒的な力で悪路王を攻めたてた。
「いいぞ。この力があれば私は再び大陸で成功を収められる」
ヒミカは自分が手にした力の強大さに陶酔していた。
対照的に雷奈は焦燥感に唇を噛む。
このままではジリジリと追い詰められていくことは目に見えていた。
もう悪路王を使役していられるのは後3分もなく、かといって今よりも使役レートを落とせば悪路王の力は弱まり、すぐにオロチにやられてしまうだろう。
(こうなったら……一か八かだ!)
雷奈は船の縁を蹴って海上に身を躍らせ、悪路王の右肩に飛び乗ると、自分ごと悪路王を上空高く跳躍させた。
「馬鹿め! 狙い撃ちだ!」
上空から舞い降りる悪路王目がけてオロチは再び舌を弾丸のように射出した。
上空で必死に体を入れ替えこれを避けようとするも、オロチの舌は悪路王の左肘の上に深々と突き刺さった。
すると落下の勢いも手伝って、悪路王の左腕が串刺しにされたまま、その肘からもぎ取られてしまう。
思わず空中でバランスを崩す悪路王の右肩を蹴って雷奈は宙に身を投げ出した。
(許して。悪路王。こうでもしないとアイツには届かない)
海面に墜落する悪路王を尻目に、雷奈はそのまま空中で護符を握り締め、オロチの頭部に立つヒミカに襲いかかった。
「あんたは絶対に許さない!」
そう叫んだ雷奈の拳がヒミカの頭部に打ち下ろされようとする刹那、その背後から迫ったオロチの尾が雷奈の体に叩きつけられた。
「きゃあっ!」
バキッと体のどこかの骨が折れる音が聞こえ、あまりの衝撃に雷奈は呼吸もままならないままに体勢を崩して海上に落下していく途中で気を失った。
「甘かったな。小娘」
ヒミカは狩りが簡単すぎてつまらないといったふうに素っ気なくそう言った。
だが、その感覚は雷奈が今まで感じたことが無いほど頑強なものだった。
その一撃もまるで効果がないかのようにオロチは首を振ると、その尾で悪路王を叩き落とした。
「くっ!」
海面に漂う船の上から悪路王を操る雷奈は顔をしかめる。
海面に叩きつけられた悪路王はすぐに再び飛び上がり、オロチの胴に鋭い手刀を幾度も打ち込んでいく。
だが、オロチは微動だにせず、今度は頭部の一撃で悪路王の巨体を弾き飛ばした。
吹き飛ばされながらも再び海面から立ち上がるが、悪路王は決して軽くないダメージを負っていた。
白イタチのザバドを倒して45万イービルの軍資金を得ていた雷奈だったが、今のレートで戦い続ければまともに戦えるのはもう5分もない。
それほど悪路王使役の消費レートを高めているというのに、まったくオロチには歯が立たずにいた。
オロチの上に立つヒミカは鼻で笑った。
「貴様の自慢の黒鬼もオロチの前にはまるでノミだな。試し斬りをしたいところだったが、どうやらこちらが強くなりすぎてしまったようだ」
そう言うとヒミカは雷奈を見下して嘲笑した。
雷奈は悔しさに歯噛みして呻く。
「あの妖狐さえ落とせれば……」
響詩郎の顔が脳裏に浮かび、雷奈は歯を食いしばった。
「響詩郎。あんたの仇は絶対に討つ」
雷奈は強気にそう言ったが、何をすればオロチを退けてヒミカを叩き落せるのか、皆目見当もつかなかった。
対照的にオロチの防御力に満足したヒミカの目に殺気が宿る。
「では、そろそろこちらからいかせてもらうぞ」
ヒミカがそう言うと、オロチの赤い舌が鋭く伸びて悪路王を襲った。
オロチの舌は無限に伸びるのではないかと思われるほど長く伸び、さらにその速度は悪路王が完全に避け切れないほど速かった。
そしてその舌の切れ味は鋭利な刃物のようであり、連続で繰り出されるそれを避け切れない悪路王の肩や脇腹は容赦なく削られていく。
「どうした! このまま一方的に終わりか? つまらんな」
その言葉とは裏腹にヒミカは悦に入って圧倒的な力で悪路王を攻めたてた。
「いいぞ。この力があれば私は再び大陸で成功を収められる」
ヒミカは自分が手にした力の強大さに陶酔していた。
対照的に雷奈は焦燥感に唇を噛む。
このままではジリジリと追い詰められていくことは目に見えていた。
もう悪路王を使役していられるのは後3分もなく、かといって今よりも使役レートを落とせば悪路王の力は弱まり、すぐにオロチにやられてしまうだろう。
(こうなったら……一か八かだ!)
雷奈は船の縁を蹴って海上に身を躍らせ、悪路王の右肩に飛び乗ると、自分ごと悪路王を上空高く跳躍させた。
「馬鹿め! 狙い撃ちだ!」
上空から舞い降りる悪路王目がけてオロチは再び舌を弾丸のように射出した。
上空で必死に体を入れ替えこれを避けようとするも、オロチの舌は悪路王の左肘の上に深々と突き刺さった。
すると落下の勢いも手伝って、悪路王の左腕が串刺しにされたまま、その肘からもぎ取られてしまう。
思わず空中でバランスを崩す悪路王の右肩を蹴って雷奈は宙に身を投げ出した。
(許して。悪路王。こうでもしないとアイツには届かない)
海面に墜落する悪路王を尻目に、雷奈はそのまま空中で護符を握り締め、オロチの頭部に立つヒミカに襲いかかった。
「あんたは絶対に許さない!」
そう叫んだ雷奈の拳がヒミカの頭部に打ち下ろされようとする刹那、その背後から迫ったオロチの尾が雷奈の体に叩きつけられた。
「きゃあっ!」
バキッと体のどこかの骨が折れる音が聞こえ、あまりの衝撃に雷奈は呼吸もままならないままに体勢を崩して海上に落下していく途中で気を失った。
「甘かったな。小娘」
ヒミカは狩りが簡単すぎてつまらないといったふうに素っ気なくそう言った。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い
八神 凪
ファンタジー
旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い
【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】
高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。
満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。
彼女も居ないごく普通の男である。
そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。
繁華街へ繰り出す陸。
まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。
陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。
まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。
魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。
次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。
「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。
困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。
元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。
なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。
『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』
そう言い放つと城から追い出そうとする姫。
そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。
残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。
「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」
陸はしがないただのサラリーマン。
しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。
今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――
ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~
にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。
その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。
そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。
『悠々自適にぶらり旅』
を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。
婚約破棄?喜んで!復縁?致しません!浮気相手とお幸せに〜バカ王子から解放された公爵令嬢、幼馴染みと偽装婚約中〜
浅大藍未
恋愛
「アンリース。君との婚約を破棄する」
あろうことか私の十六歳の誕生日パーティーで、私の婚約者は私ではない女性の肩を抱いてそう言った。
「かしこまりました殿下。謹んで、お受け致します」
政略結婚のため婚約していたにすぎない王子のことなんて、これっぽちも好きじゃない。
そちらから申し出てくれるなんて、有り難き幸せ。
かと、思っていたら
「アンリース。君と結婚してあげるよ」
婚約破棄をした翌日。元婚約者はそう言いながら大きな花束を渡してきた。
陰陽転化
煙々茸
BL
『あらすじ』
とある依頼により地方の山奥にやってきた祓い師の御屋敷晴明。
仕事中に見知らぬ男が現れ、共に調査をすることに……。
男は浮世離れした姿をしており、結界や瘴気にも平気な顔をしていることから普通の人間ではないことを早々に見抜く。
隠すつもりがないのか妖だろうと問うても男は動じず、親し気に晴明に話しかけてくる。
「……相も変わらず律儀だな」
「今何て……?」
「いや、こちらのことだ」
男は何かを隠している。
それでも悪い妖ではないのだろうと信じた晴明は男の名を聞く。
「――雨月」
そう名乗った男は何か目的をもって動いているようだ。
遥か昔の因縁を断つため、晴明の運命が大きく動き出す――。
黒い聖域
久遠
現代文学
本格長編社会派小説です。
宗教界という、不可侵な世界の権力闘争の物語です。 最初は少し硬い感じですが、そこを抜けると息も吐かせぬスリリングで意外な展開の連続です。
森岡洋介、35歳。ITベンチャー企業『ウイニット』の起業に成功した、新進気鋭の経営者で資産家である。彼は辛い生い立ちを持ち、心に深い傷を負って生きて来た。その傷を癒し、再び生きる希望と活力を与えたのは、大学の四年間書生修行をした神村僧である。神村は、我が国最大級の仏教宗派『天真宗』の高僧で、京都大本山・本妙寺の執事長を務め、五十代にして、次期貫主の座に手の届くところにいる人物であった。ところが、本妙寺の現貫主が後継指名のないまま急逝してしまったため、後継者問題は、一転して泥沼の様相を呈し始めた。宗教の世界であればこそ、魑魅魍魎の暗闘が展開されることになったのである。森岡は大恩ある神村のため、智力を振り絞り、その財力を惜しみなく投じて謀を巡らし、神村擁立へ向け邁進する。しかし森岡の奮闘も、事態はしだいに混迷の色を深め、ついにはその矛先が森岡の身に……!
お断り
『この作品は完全なるフィクションであり、作品中に登場する個人名、寺院名、企業名、団体名等々は、ごく一部の歴史上有名な名称以外、全くの架空のものです。したがって、実存及び現存する同名、同字のそれらとは一切関係が無いことを申し添えておきます。また、この物語は法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
他サイトにも掲載しています。
ひとまず一回ヤりましょう、公爵様 7
木野 キノ子
ファンタジー
21世紀日本で、ヘドネという源氏名で娼婦業を営み、46歳で昇天…したと思ったら!!
なんと中世風異世界の、借金だらけ名ばかり貴族の貴族令嬢に転生した!!
第二の人生、フィリーという名を付けられた、実年齢16歳、精神年齢還暦越えのおばはん元娼婦は、せっかくなので異世界無双…なんて面倒くさいことはいたしません。
小金持ちのイイ男捕まえて、エッチスローライフを満喫するぞ~…と思っていたら!!
なぜか「救国の英雄」と呼ばれる公爵様に見初められ、求婚される…。
ハッキリ言って、イ・ヤ・だ!!
なんでかって?
だって嫉妬に狂った女どもが、わんさか湧いてくるんだもん!!
そんな女の相手なんざ、前世だけで十分だっての。
とは言え、この公爵様…顔と体が私・フィリーの好みとドンピシャ!!
一体どうしたら、いいの~。
一人で勝手にどうでもいい悩みを抱えながらも、とりあえずヤると決意したフィリー。
独りよがりな妬み嫉みで、フィリーに噛みつこうとする人間達を、前世の経験と還暦越え故、身につけた図太さで乗り切りつつ、取り巻く人々の問題を解決していく。
しかし、解決すればまた別の問題が浮上するのが人生といふもの。
嫉妬に狂った女だけでもメンドくせぇのに、次から次へと、公爵家にまつわる珍事件?及びしがらみに巻き込まれることとなる…。
しかも今回…敵だったアイツらが…。
逢魔が刻の料理店/『双剣の陰陽師』『聖なる祓魔師』『厄災の魔導師』『ただの?調理師』ごきげんなスタッフが、皆様のご来店をお待ちしております!
ペンギン饅頭
キャラ文芸
『世界を救う? まさか!? 私はただの調理師です!』 横須賀海岸通の外れ、海辺の景色と地場の新鮮な魚料理が自慢の小さな料理店に、『偶然か必然か』ふとした事がキッカケで変な奴らが集まりだして、とんでもない事件が巻き起こる。ただ美味しい物を食べて平穏に暮らしていただけなのに『どうしてこうなった!』人外魔境を押し通り、魑魅魍魎を相手取り、後悔しても始まらない、後悔している暇も無い、一歩前へと突き進む、3人娘を引き連れて、アラサーおねいさん獅子奮迅、東奔西走の大活躍!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる