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第二章 陰謀のしっぽ
第12話 雷奈の逆襲! 憤怒の拳!
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「くらえ!」
白イタチが今にも撃ち放たんとしているギロチンのように巨大な刃を見た雷奈の背中に冷たい汗が流れ落ちた。
(くっ……まずい……あんなの受け切れない)
雷奈は状況のまずさを瞬時に察知して拳を強く握り締める。
だがその刹那、飛び上がった白イタチの足元に光り輝く小石が数個投げ込まれたのを視界に捉え、雷奈の表情がパッと輝いた。
それを投げ込んだのが誰かなど確認するまでもない。
「で……でかしたわよ! 響詩郎!」
そう。
白イタチが隙を見せる瞬間をずっと狙っていた響詩郎は、ポケットに忍ばせていた霊石を思い切りよく投げ込んだのだ。
雷奈が指をパチンと鳴らして念じると、響詩郎が投げ込んだ光り輝く霊石から猛烈な炎の柱が立ち上がって夜の闇を明るく照らし出した。
燃え盛る炎の柱は上空の白イタチにまで達する。
「ぐおおおおおっ!」
突如として地面から噴き上がる業火に、白イタチは尻を焼かれて悲鳴を上げた。
自慢のギロチンは消失し、白イタチは地面に転げ落ちてのたうちまわった。
白い毛並みが真っ黒に焼け、焦げ臭いニオイが辺りに広まる。
雷奈は素早く白イタチに駆け寄ると、その白い頭髪を引っつかんで思い切り地面に叩きつけた。
「ぐあっ!」
「この機会をずっと待っていたのよ」
そう言って白イタチを睨みつける雷奈の顔が沸点を振り切って怒りに歪んだ。
「よくもやってくれたわね。このイタチ野郎!」
護符を握りしめた右の拳を突き下ろし、雷奈は思い切り白イタチの腹部にパンチを見舞った。
「ぐはっ!」
臓腑をえぐられるような強烈な痛みに白イタチの口から苦悶の叫びが漏れる。
雷奈はそのまま左右の拳で白イタチの胴に合計6発の拳を浴びせ、そのうちの2発は白イタチのあばら骨を砕く感触すら覚えた。
白イタチはあまりの苦痛に目を剥いたが、こんなものでは雷奈の怒りは収まらなかった。
「悪路王!」
雷奈がそう叫ぶと地面から悪路王が現れ、白イタチを羽交い絞めにする。
突然現れた漆黒の鬼に体の自由を奪われ、白イタチは仰天して上ずった声を上げた。
「なっ……何だ?」
必死に身じろぎするが、圧倒的な力が白イタチの体の自由を奪い去る。
「な、何て馬鹿力だ……」
白イタチは信じられないといった表情で雷奈を睨みつけた。
これに構わず雷奈は悪路王を操り、怒りに任せて白イタチを締め上げる。
「ぐあああああああああああっ!」
あまりの激痛に悲鳴を上げ、白イタチはあっという間に気を失ってぐったりと頭を垂れた。
相手の妖気がすっかり消え去るのを確認してもなお、雷奈は悪路王の手を緩めなかった。
「何よ。威張りくさってたワリに大したことないわね」
「雷奈」
戦いの熱は雷奈の腹の底からなかなか立ち去ろうとはせず、背後から響詩郎に声をかけられても彼女は白イタチから目を離すことが出来なかった。
「そのくらいにしておけよ。雷奈」
「でも、まだ油断できない」
「もうヤツに力は残ってないさ。悪路王を下がらせて少しこっちを向いてくれ」
そう言って突然、響詩郎は雷奈の肩をつかんで自分のほうへ向き直らせた。
「な、なに?」
意外に力強い響詩郎の腕に思わず戸惑いながら、雷奈は戦闘で上気した顔で彼を見つめた。
彼女の背後では悪路王が白イタチを捕らえたまま主人の命令を待つように佇んでいる。
響詩郎は少しの間、雷奈の肢体を上下前後から見回して安心した顔を見せた。
「大丈夫だ。首もとや動脈近くは切れてない。出血もそんなにひどくはないから安心しろ」
「そ、そう。よかった」
響詩郎にそう言われてホッとしたのか、雷奈は今になって体中が痛み始めた。
見ると両腕と両足にそれぞれ各数ヶ所の切り傷があり出血はしていたが、響詩郎の言う通り、ひとつひとつの傷はそれほど深くはないのが幸いだった。
ようやく興奮状態から醒めた雷奈は悪路王を下がらせる。
漆黒の大鬼は抱えていた白イタチを放り出すと、地面の中へと消えていった。
「攻撃は手強かったけど、細身の体だし防御は大したことなかったわね。このイタチ」
そう言って雷奈は自分が倒した相手を見下ろす。
響詩郎は懐から取り出した妖魔捕縛用の霊力無効化ロープで迅速に白イタチをぐるぐる巻きにして捕縛した。
「勘定丸」
響詩郎がそう言うと、彼の背後から黒衣を纏った仮面の憑物・勘定丸が姿を現す。
響詩郎がすぐさま指で印を組むと、失神したまま縛られている白イタチの額に刻印が施された。
この刻印は至近距離からでないと打刻できず、そのためにはこのように相手を無力化する必要がある。
響詩郎はその刻印をタブレットで読み取り、それに目を通すと画面を雷奈に向けた。
「前科持ちだ。しかも脱獄犯。脱獄後からの累積でさらに45万イービル分の罪を犯してる。罪状はすべて妖魔の殺害。件数からいって殺しの専門家だな」
それを見ると雷奈は先ほどまでの怒りも消え、顔を輝かせて思わずはしゃいだ声を出した。
「45万? やったぁ! 超お釣りがくるじゃん」
悪路王の使用コストを賄って十分に余りある報酬に雷奈の機嫌は180度好転した。
そんな彼女の様子に苦笑を浮かべながらも、とりあえず事件解決への大きな手がかりとなるであろう容疑者を確保出来たのは僥倖だったと響詩郎は安堵する。
だが、そんな彼の目の前をふいに黒い何かが横切った。
「ん?」
響詩郎はその黒い何かに視線を定める。
頭上から彼の足元にゆっくりと舞い降りたそれは、カラスのものと思しき黒い羽だった。
怪訝な顔をする響詩郎の視界に、さらにいくつもの黒い羽が閃く。
顔を上げて響詩郎は驚きの声を上げた。
「な、何だ?」
無数の黒い羽が空から舞い降りる。
乱舞という言葉がふさわしいその奇妙な光景に、雷奈と響詩郎は呆気に取られて互いに顔を見合わせた。
「鳥の羽?」
雷奈がそう呟き終わらないうちに、弥生の悲鳴のような叫び声が辺りにこだました。
「上空に何かいます!」
白イタチが今にも撃ち放たんとしているギロチンのように巨大な刃を見た雷奈の背中に冷たい汗が流れ落ちた。
(くっ……まずい……あんなの受け切れない)
雷奈は状況のまずさを瞬時に察知して拳を強く握り締める。
だがその刹那、飛び上がった白イタチの足元に光り輝く小石が数個投げ込まれたのを視界に捉え、雷奈の表情がパッと輝いた。
それを投げ込んだのが誰かなど確認するまでもない。
「で……でかしたわよ! 響詩郎!」
そう。
白イタチが隙を見せる瞬間をずっと狙っていた響詩郎は、ポケットに忍ばせていた霊石を思い切りよく投げ込んだのだ。
雷奈が指をパチンと鳴らして念じると、響詩郎が投げ込んだ光り輝く霊石から猛烈な炎の柱が立ち上がって夜の闇を明るく照らし出した。
燃え盛る炎の柱は上空の白イタチにまで達する。
「ぐおおおおおっ!」
突如として地面から噴き上がる業火に、白イタチは尻を焼かれて悲鳴を上げた。
自慢のギロチンは消失し、白イタチは地面に転げ落ちてのたうちまわった。
白い毛並みが真っ黒に焼け、焦げ臭いニオイが辺りに広まる。
雷奈は素早く白イタチに駆け寄ると、その白い頭髪を引っつかんで思い切り地面に叩きつけた。
「ぐあっ!」
「この機会をずっと待っていたのよ」
そう言って白イタチを睨みつける雷奈の顔が沸点を振り切って怒りに歪んだ。
「よくもやってくれたわね。このイタチ野郎!」
護符を握りしめた右の拳を突き下ろし、雷奈は思い切り白イタチの腹部にパンチを見舞った。
「ぐはっ!」
臓腑をえぐられるような強烈な痛みに白イタチの口から苦悶の叫びが漏れる。
雷奈はそのまま左右の拳で白イタチの胴に合計6発の拳を浴びせ、そのうちの2発は白イタチのあばら骨を砕く感触すら覚えた。
白イタチはあまりの苦痛に目を剥いたが、こんなものでは雷奈の怒りは収まらなかった。
「悪路王!」
雷奈がそう叫ぶと地面から悪路王が現れ、白イタチを羽交い絞めにする。
突然現れた漆黒の鬼に体の自由を奪われ、白イタチは仰天して上ずった声を上げた。
「なっ……何だ?」
必死に身じろぎするが、圧倒的な力が白イタチの体の自由を奪い去る。
「な、何て馬鹿力だ……」
白イタチは信じられないといった表情で雷奈を睨みつけた。
これに構わず雷奈は悪路王を操り、怒りに任せて白イタチを締め上げる。
「ぐあああああああああああっ!」
あまりの激痛に悲鳴を上げ、白イタチはあっという間に気を失ってぐったりと頭を垂れた。
相手の妖気がすっかり消え去るのを確認してもなお、雷奈は悪路王の手を緩めなかった。
「何よ。威張りくさってたワリに大したことないわね」
「雷奈」
戦いの熱は雷奈の腹の底からなかなか立ち去ろうとはせず、背後から響詩郎に声をかけられても彼女は白イタチから目を離すことが出来なかった。
「そのくらいにしておけよ。雷奈」
「でも、まだ油断できない」
「もうヤツに力は残ってないさ。悪路王を下がらせて少しこっちを向いてくれ」
そう言って突然、響詩郎は雷奈の肩をつかんで自分のほうへ向き直らせた。
「な、なに?」
意外に力強い響詩郎の腕に思わず戸惑いながら、雷奈は戦闘で上気した顔で彼を見つめた。
彼女の背後では悪路王が白イタチを捕らえたまま主人の命令を待つように佇んでいる。
響詩郎は少しの間、雷奈の肢体を上下前後から見回して安心した顔を見せた。
「大丈夫だ。首もとや動脈近くは切れてない。出血もそんなにひどくはないから安心しろ」
「そ、そう。よかった」
響詩郎にそう言われてホッとしたのか、雷奈は今になって体中が痛み始めた。
見ると両腕と両足にそれぞれ各数ヶ所の切り傷があり出血はしていたが、響詩郎の言う通り、ひとつひとつの傷はそれほど深くはないのが幸いだった。
ようやく興奮状態から醒めた雷奈は悪路王を下がらせる。
漆黒の大鬼は抱えていた白イタチを放り出すと、地面の中へと消えていった。
「攻撃は手強かったけど、細身の体だし防御は大したことなかったわね。このイタチ」
そう言って雷奈は自分が倒した相手を見下ろす。
響詩郎は懐から取り出した妖魔捕縛用の霊力無効化ロープで迅速に白イタチをぐるぐる巻きにして捕縛した。
「勘定丸」
響詩郎がそう言うと、彼の背後から黒衣を纏った仮面の憑物・勘定丸が姿を現す。
響詩郎がすぐさま指で印を組むと、失神したまま縛られている白イタチの額に刻印が施された。
この刻印は至近距離からでないと打刻できず、そのためにはこのように相手を無力化する必要がある。
響詩郎はその刻印をタブレットで読み取り、それに目を通すと画面を雷奈に向けた。
「前科持ちだ。しかも脱獄犯。脱獄後からの累積でさらに45万イービル分の罪を犯してる。罪状はすべて妖魔の殺害。件数からいって殺しの専門家だな」
それを見ると雷奈は先ほどまでの怒りも消え、顔を輝かせて思わずはしゃいだ声を出した。
「45万? やったぁ! 超お釣りがくるじゃん」
悪路王の使用コストを賄って十分に余りある報酬に雷奈の機嫌は180度好転した。
そんな彼女の様子に苦笑を浮かべながらも、とりあえず事件解決への大きな手がかりとなるであろう容疑者を確保出来たのは僥倖だったと響詩郎は安堵する。
だが、そんな彼の目の前をふいに黒い何かが横切った。
「ん?」
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顔を上げて響詩郎は驚きの声を上げた。
「な、何だ?」
無数の黒い羽が空から舞い降りる。
乱舞という言葉がふさわしいその奇妙な光景に、雷奈と響詩郎は呆気に取られて互いに顔を見合わせた。
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