26 / 71
第二章 陰謀のしっぽ
第11話 白イタチ・サバドの猛攻!
しおりを挟む
白イタチが連続で放つ光の刃が次々と雷奈を襲った。
雷奈はこれらを受け流し、身をかわしながら懸命に回避するが、さまざまな角度から迫り来る刃は雷奈の四肢をかすめ、その表皮を切り裂いていく。
雷奈は額に汗を浮かべて、唇を噛んだ。
「神衣があればもう少しマシなんだけどね。言っても仕方ないけど。ああ頭にくる!」
霊的な防御力に優れた神衣であれば、少しくらいの攻撃は防ぐことが出来る。
だがそれを考えたところで意味はない。
雷奈は一秒でも早く攻勢に転じる必要があるのだが、彼女と白イタチの距離は一向に縮まらない。
光刃の雨あられに耐え続ける雷奈の体力は徐々に削り取られていった。
「雷奈さん。危ない!」
弥生は雷奈の危機に顔面蒼白になりながら思わず叫んでいた。
「大丈夫。アイツは喧嘩マジで強いから。それにまだ奥の手を出していない」
弥生を落ち着かせるようにそう言うと響詩郎は口を真一文字に引き締めた。
こういうとき、彼は直接的に加勢する術を持たない。
無力感も感じる。
だが、それでも響詩郎は心得ていた。
自分がそんなことをしても雷奈には毛の先ほども役に立たないことを。
響詩郎がするべきことは体を使った戦いではなく頭を使って考えることだった。
「響詩郎さん……」
呻くようにそうつぶやいて響詩郎を見やり、弥生はハッとした。
目は冷静に戦況を見続けている響詩郎の拳が、小刻みに震えるほど強く握られている。
(……一番不安なのは響詩郎さんなんだ)
弥生はそう感じて唇を噛むと、戦いを続ける雷奈に視線を戻す。
戦況はいっこうに好転しない。
必死に間合いを詰めようとする雷奈だったが、白イタチの放つ光の刃の勢いは増し、今や彼女は一歩も動けない状態に陥っていた。
むしろ後退しないように意地を張り続けているような状況だ。
響詩郎はポケットの中に手を入れ、拳を握り締めた。
雷奈は反撃のタイミングを待っている。
だが、それが出来ないまま光の刃の餌食となってしまうのも時間の問題のように思えて仕方の無い響詩郎は、嫌なイメージを払拭するように頭を振ると腹の底に力を込めた。
(白イタチは俊敏だ。間合いを詰めたとしても一瞬で捉えなくてはまたすぐに距離をとられてしまう。チャンスは一度きり)
響詩郎は瞬きもせずに戦況を見つめ続け、その機会をひたすらに待ち続けた。
一方の雷奈は体のあちこちに傷がつき出血箇所も少なくはなかったが、体が興奮状態にあるため痛みは感じなかった。
今、雷奈の身の内にあるのは燃えたぎるマグマのような強い憤怒だった。
雷奈は歯噛みして白イタチを睨みつける。
「よくも私をこんな目に……」
小学校時代に教室で雷奈の髪を引っ張ったイジメッ子は、彼女の拳を顔面に食らって青アザをいくつもこしらえることになった。
中学校時代に雷奈の尻を触った痴漢の犯人は、彼女の肘打ちをもらって上下の前歯4本を失うことになった。
高校時代に雷奈のカバンを盗もうとした引ったくり犯は、彼女の回し蹴りを浴びて白目をむいて失神した。
いつだって雷奈は、自分に危害を加えようとする者には倍以上の返礼を持って返り討ちにしてきたのだ。
「ああああっ!」
雷奈は気を吐いて大声を張り上げると、迫り来る光の刃を両手の護符で叩き落とし続けた。
「しぶとい女だな。だが、そろそろ楽にしてやるよ!」
そう言ってニヤリと笑うと、白イタチは大きく上空に飛び上がり、背筋をそらして両腕を交差させる。
白イタチの頭上に白く輝く三日月型のひときわ大きな光の刃が形作られていく。
「くらえ!」
ギロチンのように巨大な刃を見た雷奈の背中に冷たい汗が流れ落ちた。
(くっ……まずい……あんなの受け切れない)
罪人の首を切り落とさんとするかのごとく光り輝く刃が、夜の闇の中で雷奈の首に狙い定められていた。
雷奈はこれらを受け流し、身をかわしながら懸命に回避するが、さまざまな角度から迫り来る刃は雷奈の四肢をかすめ、その表皮を切り裂いていく。
雷奈は額に汗を浮かべて、唇を噛んだ。
「神衣があればもう少しマシなんだけどね。言っても仕方ないけど。ああ頭にくる!」
霊的な防御力に優れた神衣であれば、少しくらいの攻撃は防ぐことが出来る。
だがそれを考えたところで意味はない。
雷奈は一秒でも早く攻勢に転じる必要があるのだが、彼女と白イタチの距離は一向に縮まらない。
光刃の雨あられに耐え続ける雷奈の体力は徐々に削り取られていった。
「雷奈さん。危ない!」
弥生は雷奈の危機に顔面蒼白になりながら思わず叫んでいた。
「大丈夫。アイツは喧嘩マジで強いから。それにまだ奥の手を出していない」
弥生を落ち着かせるようにそう言うと響詩郎は口を真一文字に引き締めた。
こういうとき、彼は直接的に加勢する術を持たない。
無力感も感じる。
だが、それでも響詩郎は心得ていた。
自分がそんなことをしても雷奈には毛の先ほども役に立たないことを。
響詩郎がするべきことは体を使った戦いではなく頭を使って考えることだった。
「響詩郎さん……」
呻くようにそうつぶやいて響詩郎を見やり、弥生はハッとした。
目は冷静に戦況を見続けている響詩郎の拳が、小刻みに震えるほど強く握られている。
(……一番不安なのは響詩郎さんなんだ)
弥生はそう感じて唇を噛むと、戦いを続ける雷奈に視線を戻す。
戦況はいっこうに好転しない。
必死に間合いを詰めようとする雷奈だったが、白イタチの放つ光の刃の勢いは増し、今や彼女は一歩も動けない状態に陥っていた。
むしろ後退しないように意地を張り続けているような状況だ。
響詩郎はポケットの中に手を入れ、拳を握り締めた。
雷奈は反撃のタイミングを待っている。
だが、それが出来ないまま光の刃の餌食となってしまうのも時間の問題のように思えて仕方の無い響詩郎は、嫌なイメージを払拭するように頭を振ると腹の底に力を込めた。
(白イタチは俊敏だ。間合いを詰めたとしても一瞬で捉えなくてはまたすぐに距離をとられてしまう。チャンスは一度きり)
響詩郎は瞬きもせずに戦況を見つめ続け、その機会をひたすらに待ち続けた。
一方の雷奈は体のあちこちに傷がつき出血箇所も少なくはなかったが、体が興奮状態にあるため痛みは感じなかった。
今、雷奈の身の内にあるのは燃えたぎるマグマのような強い憤怒だった。
雷奈は歯噛みして白イタチを睨みつける。
「よくも私をこんな目に……」
小学校時代に教室で雷奈の髪を引っ張ったイジメッ子は、彼女の拳を顔面に食らって青アザをいくつもこしらえることになった。
中学校時代に雷奈の尻を触った痴漢の犯人は、彼女の肘打ちをもらって上下の前歯4本を失うことになった。
高校時代に雷奈のカバンを盗もうとした引ったくり犯は、彼女の回し蹴りを浴びて白目をむいて失神した。
いつだって雷奈は、自分に危害を加えようとする者には倍以上の返礼を持って返り討ちにしてきたのだ。
「ああああっ!」
雷奈は気を吐いて大声を張り上げると、迫り来る光の刃を両手の護符で叩き落とし続けた。
「しぶとい女だな。だが、そろそろ楽にしてやるよ!」
そう言ってニヤリと笑うと、白イタチは大きく上空に飛び上がり、背筋をそらして両腕を交差させる。
白イタチの頭上に白く輝く三日月型のひときわ大きな光の刃が形作られていく。
「くらえ!」
ギロチンのように巨大な刃を見た雷奈の背中に冷たい汗が流れ落ちた。
(くっ……まずい……あんなの受け切れない)
罪人の首を切り落とさんとするかのごとく光り輝く刃が、夜の闇の中で雷奈の首に狙い定められていた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い
八神 凪
ファンタジー
旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い
【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】
高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。
満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。
彼女も居ないごく普通の男である。
そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。
繁華街へ繰り出す陸。
まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。
陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。
まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。
魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。
次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。
「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。
困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。
元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。
なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。
『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』
そう言い放つと城から追い出そうとする姫。
そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。
残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。
「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」
陸はしがないただのサラリーマン。
しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。
今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――
クロスタウン・アンノウン SFなの?なんなの?バカなの?無敵の南警察女署長 暴れます。
尾駮アスマ(オブチアスマ おぶちあすま)
キャラ文芸
この作品は、すべてフィクションです。
実在する個人・団体とは一切関係ありません。
よろしくお願いします。
真剣にふざけてます、コメディ作品としてお楽しみいただければ幸いです。
第二次世界大戦、終戦直後、退役軍人のところに宇宙人3人が現れ、彼に財力と未来のテクノロジーを授ける。
それで・・・あぁそうさ、ソレデ?ナニ?的なくっどい説明的で下手くそな文章がのたくってますわ
だがな
なんでもありのめちゃくちゃなラストバトルに向かって一緒に読んでくだせェ
こっちやー命懸けで書いてんだァーオラァアアアアアアアアっ!
なに?バカなの?ヤケクソなの?イイネゼロなのねw
もしよければお気に入り登録・イイネ・感想など、よろしくお願いいたします。
大変励みになります。
ありがとうございます。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
無能な陰陽師
もちっぱち
ホラー
警視庁の詛呪対策本部に所属する無能な陰陽師と呼ばれる土御門迅はある仕事を任せられていた。
スマホ名前登録『鬼』の上司とともに
次々と起こる事件を解決していく物語
※とてもグロテスク表現入れております
お食事中や苦手な方はご遠慮ください
こちらの作品は、
実在する名前と人物とは
一切関係ありません
すべてフィクションとなっております。
※R指定※
表紙イラスト:名無死 様
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~いざなわれし魔の手~
高見南純平
ファンタジー
最弱ヒーラーの主人公は、ついに冒険者パーティーを100回も追放されてしまう。しかし、そこで条件を満たしたことによって新スキルが覚醒!そのスキル内容は【今まで追放してきた冒険者のスキルを使えるようになる】というとんでもスキルだった!
主人公は、他人のスキルを組み合わせて超万能最強冒険者へと成り上がっていく!
~いざなわれし魔の手~ かつての仲間を探しに旅をしているララク。そこで天使の村を訪れたのだが、そこには村の面影はなくさら地があるだけだった。消滅したあるはずの村。その謎を追っていくララクの前に、恐るべき魔の手が迫るのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる