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一章 四人の勇者と血の魔王

第30話 ウイルスとか入ってない?

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 赤刃山脈 小屋
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「ふむ、では……ここから魔王城まで一直線に飛んでいくというのはどうだ?」

「いくら鳥頭でも翼は生えてねーぜ俺は」

 小屋から出て、上空を指差したルタインが言った。

「だが……『南の勇者』はその手段をとったようだが?」

「っ!?」

「つい先刻、君が目覚める少し前の事だ。『彼女』がホウキに乗って空中を通りすがるのを見た」

 南の勇者は『魔女』……そう言われている。飛行魔法を扱えるのは独自の魔法式を遺伝子に組み込んだ魔女の一族だけらしい。サヴェルが言うには、普通の魔法使いが飛行魔法を使おうとすれば禁忌の領域に入らなければいけない……とか。

「私なら使えるぞ?サヴェルほど得意ではないが」

「まぁそりゃ、アイツの親父だもんな……」

 この大賢者様、サヴェル以上に底の見えない奴だ。もう魔王とかこの人一人でなんとかなるんじゃねーのか?

「ありがたいが遠慮しとくよ」

「ほう。君の性格なら楽な道を選ぶと思っていたが……他人の手を借りるのが嫌か?禁忌を味わうのが嫌か?」

「ちげーよ。他人の手なんか借りすぎて延滞料金やべー事になってるし禁忌の味はサヴェルに散々ご馳走になってらぁ。ただ……」

「ただ?」

「競争心を燃やしてムキになって突っ走ると痛い目見るって学んだからな……」

 リェフルちゃんが赤刃山脈を突っ切ったという勘違い、あまりにも恥ずかしすぎる。結局その後マリちゃんに吹っ飛ばされるし……とにかく、俺は俺のペースで良いって事だ。

「……いや、閃いたぞ。君が私の手を借りる事を厭わないのなら別の手がある」

「というと?」

「今直ぐ魔王城への比較的安全な道を君は進む事ができる画期的な案だ。思いついた私はやはり大賢者でしかない」

 そう言ったルタインは─────無言で俺の見慣れた魔法を発動させた。

「え、【次元穴ディメンションホール】?」

「この中に入れ」

「はぁ!?俺を聖剣と勘違いしてんじゃねーだろうな」

「君の矮小な【次元穴】と一緒にするな。世界の端から端までも、私の【次元穴】なら繋いでみせるさ」

 確かにルタインの【次元穴】は俺達の身長と同じくらいの直径を持ってる。規模というか、何から何まで俺の中途半端な魔法とは違うらしい。

「さぁ入った入った」

「ちょっ、てかこれどこに繋がって────」

 ルタインに押されて入った穴の中……景色が揺らぐ。
 はっきり言って吐き気が助長される。何色とも言えない微妙な空間はぐにゃぐにゃと止まる事を知らない。

「うおっ眩し……」

 かと思えばいきなり外への穴が現れる。またもルタインに押された俺はなんとか地面に立つ事が出来た。

「どこだここ。草原……?」

「さっき、私は君に頼み事をしたな。『東の勇者』の力になって欲しいと」

「ん?あぁ、それがどうし……」

「せっかくならもう東の勇者と一緒に魔王城に向かえば良いのでは?……と私は閃いてしまった訳だ」

「……まさか」

 周囲を見回す。だだっ広い草原、それを見下ろす空には─────夕日と被る魔王城と、そこへ繋がる『帝国の』橋がうっすらと見えた。

「察しの通り……ここは帝国だ」

「何してくれてんだあんたァ!ナルベウスから魔王城挟んで正反対の国に来ちまったのか!?」

「何をそんなに怒っている?東の勇者と合流し、戦力を増強させると同時にスムーズに魔王城へと向かえる。完璧なプランだろう」

「サヴェルとゴルガスはどうすんだよ!?今頃南方に落ちてった俺を探してる頃だろ!?」

「あ」

「……」

「……では、ディグマ・キサカを頼む。彼は──────いや、何でもない」

「思わせぶりな台詞で誤魔化すんじゃねえよ大賢者ァ!」

 再び次元の穴を生成したルタイン。そそくさと入り込もうとしていたが……途中でその動きは止まり、静かに一点を見つめ始めた。

「……あれだ」

「あ?」

「私は全ての聖剣の魔力を現在も測定している。故に出来るだけ彼の近くに繋げたつもりだったが……すぐそこじゃないか」

 ……ルタインの呟きの意味を理解した後は早い。俺も同じようにその方向に視線を向け─────

 帝国の軍服を確認する。

「間違いない、この禍々しい魔力は【黒の聖剣】のモノだ」

「こんな遠くからよく分かるな。大賢者様は敏感なんだねぇ」

「妙な言い方をするな。気をつけておけ……黒の聖剣の邪念の濃さが異常だ。何かが起きている」

「!」

 黒の聖剣は『適合者を選ばない』……だが、使い続けた者は聖剣に取り憑かれ、『洗脳』を受けたような状態になってしまうっつーのは有名な話。
 適合が無いとは言えど、結局のところ洗脳を受けつけないような奴じゃないと使えない訳だ。

「君だけの力……聖剣と共鳴した者が手に入れるユニオンスキルを手に入れろ。それが今後の君の鍵となる」

「ユニオンスキルぅ?何だそりゃ、聖剣以外のユニークスキルでさえ一つも持ってない俺にゃ身に覚えがねえよ」

「惚けるな。もうその感覚は掴んでいるだろう」

 眼鏡をかけ直したルタインは、その半身を次元の穴に突っ込んだ。

「これだけ手伝ってくれるのはありがたいけど……もうあんたが直接魔王倒しに行ってくれよ、その方が速い」

「……私はディグマ・キサカと直接会いたくない。それに────『役割』というモノがあるだろう?」

 大賢者の姿は完全に見えなくなり、声は徐々に縮まる次元の穴から聞こえてくる。

「君の役割は魔王を倒す勇者。私は─────を全うする」

 そして、空間から歪みは消えた。

「役割ねぇ……んなもん、状況によって二転三転すると思うんだがなぁ」

 そんなモノをどこか────重視しているような口ぶりだった。

「ま、とりあえず行きますか。東の勇者へご挨拶に……!」


















 ー ー ー ー ー ー ー















「……『西の勇者』」

 掌から血を流す少女は、一切状況を理解できないままその光景を眺めていた。

「ならその剣は【岩の聖剣】か。同じ勇者としてぜひ丁寧に挨拶をしたい所だけど……どうしてあなたが?」

「んー、まぁ分かるよ。西の勇者が東の国にいるなんて馬鹿げてるよな!次元の穴でいつの間にか帝国についてたなんてもっと馬鹿げてるよな!」

「そうじゃない。ボクが聞きたいのはそこじゃない……」

 二丁の魔導銃。握りしめたディグマは……銃口をゆっくりと上げていく。

「どうしてあなたがボクの邪魔をしたのかって事だ」

 そして、彼の右手に握られた銃は、完全にロクト・マイニングという男を捉えた。

「確かに勇者としての面子、尊厳、立場は大事。だがボクは勇者である前に『兄』だ。兄と妹の『教育の時間』に─────部外者は邪魔でしかない」

 対するロクトは───────

(うん、コイツ確定で洗脳されてるわ)

 確固たる確実な確信を得たところだった。

(しかもなんで死体があるんだよ。東の勇者、ガチで手にかけちまったパターンか?だとしたら勇者の評判とか今更どうにもならねえし……ここは!)

 任せとけと自信満々に宣言したはずの約束から全力で逃亡することを決めたロクトは歯を似せて輝かしい笑顔を作る。

「あっ、ふーん……教育の時間ね!なんだ、殺すつもりじゃなかったのかぁ!んじゃあ俺はこの辺で失礼させてもr」

「動けば撃つ」

 が、当然逃がしてくれるような雰囲気ではなかった。

「…………あぁクソ、いいぜ!喧嘩してやろうじゃねえか!」

 引き金に指をかけたディグマを睨む。
 少しでも動けば『戦闘』が始まり、自分は撃たれる……分かっていたロクトは担いだ聖剣をに力を込めたまま、動かない。

(……ん?そう言えばなんでコイツ銃持ってんの?聖剣は?アレ……コイツ本当に勇者で合ってる!?俺すごい勘違いしてたりしないよな!?聖剣の操り人形じゃなくてナチュラルやべー奴って可能性もあるんじゃね……?)

 というより、緊張で震えてきた足をなんとか動かさないようにしていた。



 帝国。魔王城への道のりで最後に寄るだろう村の近くで。
 西の勇者と東の勇者が戦いを始めようとし────すぐ側には首を切られた魔族と、豹変した兄に撃ち抜かれた少女。

 そんな訳の分からない状況を────さらに見ている者が。

(……いやどういう事コレ)

 木の葉の音が鳴らないように、茂みの中で動かないのは……無精髭を生やした男。

(ォレが小便かましてる間に何が起こっちゃったのコレェ!!意味不明すぎるんですワ流石に!!!)

 冷や汗を垂らすシャーグは、拭った両目で火蓋が切って落とされる瞬間を目撃した。

 まず動いたのはロクト。

「【次元穴】」

 担いだ剣を次元の穴という鞘にしまう動作────それを見たディグマが一発。躊躇無く放つ。

「【岩刃】っと!おぉ~流石は勇者の恩恵!素早い攻撃も見える見える」

 咄嗟に生成され、弾を防いだのは岩の剣。先ほどディグマとザラの間に投げ込まれたものと同じ……聖剣の『ユニークスキル』だ。
 雷の聖剣で言う【雷剛】のように、岩の聖剣のユニークスキルの中で最も基本的なスキル。

 そして、ディグマは異国の勇者が見慣れた構えを取る姿を見た。

「イアイ……やっぱり勇者なら、剣士としての技術は持ち合わせているものか」

(……あの構え)

 茂みの奥から、若干身を乗り出したシャーグが目を見開く。

(少し癖の抜けきらない、見様見真似のイアイの構え……まるでクルグじゃねえか)

 シャーグが旅の途中に出会い、斬り合った者の中で最も恐ろしく、鋭く、強く……虚しい剣の男。
 彼は剣聖を思い出していた。

「ならこれはどうかな?……【風弾エアロバレット】」

 二つの風を纏った弾丸が同時に発射される。さっきとはスピードも威力も上がっている……スキルを発動していた時点でロクトは察した。

「だが【岩刃】ッ!この岩の硬さは世界一信用してるんでなァ!」

 その上でロクトの判断は変わらない。『防御をしつつ正面突破』────風の弾丸を防ぎながら、岩の刃に隠れた彼は抜刀する。

 右腕を振り抜き、一閃。

 ──────が、対剣士の立ち回りは熟知しているディグマ。

「ボクほどじゃないけど、大した剣はしていないようだね」

 既にバックステップで距離を取り、攻撃後のロクトに狙いを定めている。

「ッ!」

 ロクトは一旦聖剣を【次元穴】に戻さずに持ち、対応を練る。

(なんでこいつが銃握ってんのかは知らねェが、採掘師が勇者になれるくらいだしとりあえずそこは気にしないとして……学生時代に1人、天職が【銃士】の奴がいた。そいつが使ってたスキルからして、今この状況で警戒すべきなのは『大技』と『曲がる弾丸』と、あと──────)

 ロクトはそれを受けるためのスキルを発動させるが─────

「【戦技・乱弾世界】」

 ロクトは知らなかった。ディグマ・キサカの職業が【技師】である事を。


 人間は一般的には、自分の『天職』のスキルを習得していく。天職ではない職業のスキルを習得する……例えば【採掘師】が【剣士】のスキルを習得しようとした場合。

 莫大な時間がかかる。
 剣士ならば数日で習得できるスキルも、下手すれば年単位かかるケースもある。

 ディグマの【風弾】もそのように手に入れたスキルだが────このペースでは妹を守れるほど強くなれないと彼は気付いた。しかし【技師】のスキルは戦闘用のモノが無く、戦うには【銃士】などのスキルを習得するしかない。

 ─────『ユニークスキル』という抜け道以外は。

 それに気付いてからは、ディグマは速い。本来、ユニークスキルなんてものは狙って生み出せるものでは無く、一部の天才が偶然手に入れるものと言われている。


 そしてディグマのユニークスキルの数は、彼が習得した通常の戦闘用スキルの数より『多い』。
 彼は天職という運に負けただけの────類稀なる天才なのだ。

 故にロクトが警戒すべきだったのは『銃士』のスキルではなく、ディグマ・キサカという人間自体。

「なんだっ、これ……!」

 ロクトの周囲を囲んだのは『浮遊する魔導具』……のようなモノだった。

「【風弾】」

 ディグマが撃った2つの弾丸はロクトでは無く、浮かぶ魔道具に向けられたものだった。

 ……が、それだけでは済まないという事は誰にでも分かる。

「ッ、まさか……!」

 ロクトは気づく。その魔導具の役割が何なのかを。

「───反射しろ」

 跳弾。……狙って当てられるモノではない。だがそれを可能にしてしまってもおかしくないようなディグマの気迫をロクトは感じ取っていた。

 そして予想通り、風の弾丸は魔導具の間を反射しながら猛スピードで駆け巡る。

「……そう来たか」

 だがディグマもこの程度で【勇者】が倒れるとは思っていない。
 現れたのは────岩で出来た男。

(【岩鎧】……あらかじめ使っておいて正解だったな)

 曲がる弾丸という、一方向への盾では防ぎきれない攻撃を可能性として考えていたロクトが取った対抗策が、全身の周りを岩の防御で固めてしまう【岩鎧】。

「うん、の【岩鎧】」

 ─────が。ディグマは微笑む。

「そのスキルは高度の防御力を誇るが、身軽な動きが出来なくなる。対勇者戦を帝国がどれだけ重視したと思っている?……岩の聖剣のユニークスキルは全て把握している」

 同時に【戦技・乱弾世界】の浮遊する魔導具を変形させ────銃口を出現させる。

「……灰となれ」

 それは『跳弾させる魔導具を展開する』だけのユニークスキルではない。その魔導具は彼の持つ魔導銃と同じ、『発射』する機能がある。【戦技・乱弾世界】はその多機能魔導具を大量に展開し、全てを同時に制御するユニークスキルだ。

「【絶技・天焦地融】」

 熱線。ただ純粋な魔力の『熱』はまずディグマの両手の魔導銃から発射され───岩の鎧を囲む魔導具達からもまた同様に。

 轟音と共に豪炎が燃え盛る。

(……やりすぎだ、どう考えても)

 シャーグは離れていても迫ってくる熱風から目を守りながら、熱された冷や汗を拭う。

 そのユニークスキルは単純に『威力が高すぎる』。故に訓練では使うべきではなく、ここまでしなければいけない敵もいない。

(……焼け野原じゃねえか)

 放ったディグマの足元までも炎は届く。岩の鎧があった場所は揺らめく火炎で見えない。

「ザラは……」

 あまりに高火力な攻撃のため、それほど広い範囲ではないが……ロクトがザラと正反対の方向の離れた場所で【岩鎧】を使うよう、ディグマは攻撃のタイミングや位置どりを調整していた。

(勇者と言うには大した事は無かった……かな。ザラに気にする余裕もあった)

 そして彼の予定通り、妹は怯えつつ傷一つ無い顔を彼に見せた。

「良かった、無事かい?」

「……」

「……ザラ?」

「うん!無事だよお兄ちゃん!」

 ディグマは足を早めた。視界を遮る炎に邪魔されないくらいまで近づき─────『元気に無事を知らせた別人の気色の悪い高い声』の主を確かめた。

「ッ!?」

 その瞬間。『何か』が正面からディグマに向かって発射される。ぼやけた視界だがザラが何かをしたようには見えなかった彼だが……落ち着いてその攻撃を避ける。

「……これ、は?」

 かわした瞬間、彼は肌が焼けるような『熱』を感じた。
 何か、『高音の何か』を────発射された。

 不敵な笑みを浮かべ再び現れた、その男によって。

「傷一つ付いてねェ……自信満々の大技だったが痛くも痒くもないぜ?よ」

「西の勇者……ッ!」

 ロクト・マイニング。逆立った金髪が特徴のその男が……ザラの背後に立っていた。

「おっと!それ以上近づくんじゃねえぜ」

「……まさか」

「俺に攻撃しようもんなら……お前の可愛い妹ちゃんに何があるか分からねーぜ!?」

 先ほどとは異なり、岩を纏っていない、剣としての鋭利さを持つ岩の聖剣を……彼の妹は首筋に突きつけられていた。

(ウッソでしょ勇者ともあろう者が人質!?イメージとか言ってた割には自分で飛びっきりの悪役ムーブかましちゃってるよ!?)

 草むらから出て助けに行くべき……シャーグはわかってはいたが、もし気づかれた場合がどうしても恐ろしく、足は動かない。

「……なぜ生きている?アレを喰らって無傷だなんて……」

「いやだから言ったじゃん。お前の攻撃が弱すぎて全部【岩鎧】で防げちまったんだよ!」

 嘘である。
 種は簡単。【岩鎧】を発動したロクトは同時にもう一度【岩鎧】を使っていた。────ディグマに勘違いさせるための人形役として。その後ロクトは【次元穴】の中に【アイテムボックス『鉱石』】を使った小袋を入れる。小袋の中には……【岩鎧】によって身体より岩石の割合が大きくなり、アイテムボックスの中に入れるようになったロクトが隠れている。そうすれば、ロクトが小さな穴しか開けられなくとも……次元空間の中に身を隠せる。
 攻撃が終わった事を確認したら、少し離れた場所に穴を作り脱出。

(勇者の恩恵と、直前にルタインの【次元穴】を見て感覚を掴みやすくなってなかったら……妹ちゃんの後ろまで行けなくて、直ぐに撃たれてたかもな)

 聖剣を握り締め、ロクトは歯を見せながら笑う。

「銃だからよ、俺が妹ちゃんの首を切るよりお前の弾丸が俺に届く方が速いかもしれねえよな。でも一応忠告……無駄だぜ、それ」

「どういう意味だ」

「例え俺を殺せても、俺のそばに妹ちゃんがいれば確実に妹ちゃんは死ぬだろうな。……気付かねーか?お前の攻撃から大分離れているはずなのに、俺の周囲は既に燃え盛っている」

「っ!」

「俺が死ねば……溢れ返るんだよ。今抑えてる分、全てが……!」

 ディグマは燃え盛っている炎のせいで、ザラの後ろにいるロクトをすぐに視認出来なかった。なのになぜ─────?
 ふとディグマが目線を落とした地面に、その答えがあった。

「これは……『溶岩』……!?」

「正解。溶だ」

 ロクトとディグマの間には灼熱の水溜まりが生まれていた。赤く、凄まじい熱気を放つそれは……間違いなく本物。

「岩の聖剣のスキルは全部知ってまーすみたいな事言ってなかったっけ?勉強しなおした方がいいんじゃねえか!?」

「そんな……新しいユニークスキルか?いや、違う……でも……まさか」

 話には聞いていた。『聖剣と同調し、完全に息を合わせた者のみが手に入れられる』スキルがあると。情報が残っている先代の勇者達は入手出来なかったため、ディグマもそれがどのような力なのか知らなかった。

 だが────それほど剣士として成熟している訳でもなく、小物っぽい言動のロクトという男が出来るわけない……その先入観が僅かにあった。

 先ほどディグマを襲った灼熱の斬撃。溶岩に覆われた岩の聖剣を振るったモノだと、納得が行ってしまう。

「ロクト・マイニングのユニオンスキル第一号、名付けて────【インストール】」

 岩の聖剣と言うのなら……溶岩も操れるのではないか。採掘師である彼は様々な鉱石と聖剣を融合させながら、その思考に至った。

『岩の聖剣の外装自体を』別の性質の岩石に変更するスキル。

 そしてそれを実現出来る同調率。
 擬似的に─────数百年前に魔を焼き払う劫火によって勇者を支えた【葬の聖剣】のような力を手に入れたのだ。







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葬の聖剣は初代勇者に作られてから今まで、2人にしか自身を握らせていません。1人目が初代勇者であり、2人目は数百年前のとある若者です。このように魔王が現れても姿を見せない聖剣がほとんどで、賢者達もおおよその位置と魔力反応は検出していますが、姿を見る事は出来ていません。
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