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一章 四人の勇者と血の魔王
第24話 キンキンキンキンキンキン!!!!
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ーーーーーーー
帝国 魔王城付近のとある町
ーーーーーーー
「貴様……自分でどれほどの無茶を言っているか分かっているのか」
「……」
「あぁ言ったとも。私に出来る範囲で貴様に剣を教えてやると」
「はい……」
「その期限が今日中とはどういう事だ!?悪徳にも程があるだろう!?」
「ごめんなさいぃ……!」
軍事帝国コンロソンが誇る最高戦力かつ【黒の聖剣】保有者。東の勇者ことディグマ・キサカは昨日出会った女性に土下座をかましていた。
だだっ広い草原の柔らかな土の感触が彼に膝に伝わる。
「やむを得ない事情があるんです!どうしてもすぐに剣を扱えるようにならないと……!」
「ならないと、なんだ?」
「……妹が危ないんです」
「!」
今代はマジストロイ・アスタグネーテが率いる魔王軍が誇る四天王の一角かつ【風飲剣】保有者。風天ことストゥネア・モーウェンは昨日出会った少年の目が嘘を言っていない事を察する。
そして、家族に危険が迫っているという話題は……家族を失った事が戦う理由である彼女にとって無視出来ないものだった。
「話してみろ」
「……実はボク、帝国軍の名誉ある任務中でして。具体的にはまだ取りかかっていないんですけど」
「……どんな任務だ?」
(帝国の内情は出来れば知っておきたい。そして東の勇者の行方を掴む────)
ストゥネアは探りを入れる。ディグマに協力するのも東の勇者を探すため。あくまで彼女は本来の目的を忘れていない。
「す、すみません。機密です……」
「まぁ、そうだろうな。遮ってすまない、続けてくれ」
ここで『話さなければ剣を教えない』などの脅しが全く思いつかず、思いついたとしてもやらないのがストゥネアの長所であり短所だ。目的に向けての推進力はあるが、自らの心を裏切るような事はできない。
────が、この時にもう少し踏み込んでいれば、彼女は核心に近づけたはずだった。
ディグマの言う『任務』とは……魔王討伐の事なのだから。
(言えねえええええ!!最強と名高い東の勇者がよりにもよって剣がヘタクソとか言えるわけないよおおおおおおおお!!!)
汗をダラダラと流しながら、この話題から離れるためにディグマは早々と続ける。
「で、その任務にボクが選ばれたのを……同じく軍に所属している妹が気に食わないらしくて」
「ほう?」
「追ってきてるんです。軍のお偉いさんの許諾も貰って、ボクと剣で決闘して妹が勝ったら任務を奪うっていう……」
「なんだ、それは……」
絶賛魔王との戦いの最中だと言うのに、仲間割れのような揉め事を起こしている帝国軍に敵ながらストゥネアは呆れを隠せなかった。
「剣で決闘と限定されているのは何故だ?貴様の得意分野は銃だろう」
「帝国って結構硬い考え方で。ボクは銃を手に妹に勝って、この任務を任せてもらったんです。でも本当は上の連中もボクと銃の事は良く思ってなくて、それで妹の頼みを快く引き受けたって感じです」
「妹がその任務とやらを奪いたがっているのは何故だ」
「この任務に関してはボクが担当するのは相応しくないって思われてるのと、功績目当てかと……」
「ふむ。では、貴様が任務に固執しているのは何故だ?面倒なら譲ればいい話だろう」
「……危険なんですよ、この任務」
それで『妹が危険』という言葉に繋がるのか、とストゥネアは1人納得した。
「本当は……この任務、剣を扱える人の方が向いてるんです。でも妹を危険な目に合わせたくない」
「……」
「お願いします!どうかボクに剣を……!」
「構えろ」
地に伏せた顔を上げ、騎士を見上げた。
「時間は無いのだろう?剣が苦手と言うが……まずは貴様の腕を見せてみろ」
「……っ、はいっ!ありがとうございますネアさんッ!!」
疲れたように微笑んだ騎士は、未変形の魔剣を構えた。
同時に─────少年は黒い鞘から黒い刀身を引き抜く。
「模擬戦だ。私は寸止めに慣れているが、貴様は遠慮しなくて良い。当たるのならもう教える事は……無いのだからな!」
「ッ!分かりましたッ!」
ストゥネアは両手に剣を握り、足を踏み出して振りかぶる───────
「……あの」
「なんでしょう!?」
「遠すぎだろう、剣の間合いにしては。私の剣が五倍の長さでも貴様に届かない距離だぞ」
「だって近いと危ないじゃないですか!?」
「いや剣士同士の戦いに何を言っている!?本当に強くなる気はあるのか!?」
戦いが始まった瞬間に素早い足捌きでバックステップを決め込んだディグマ。草原の上にも関わらず足をもつれさせなかった所には評価をしたかったストゥネアだったが、大きめの声を出さなければ届かない程離れた相手にわざわざ言う気にはならなかった。
「射手ならば距離を取るのは賢明な判断だが……今の貴様は剣士だ。忘れるなよ」
「は、はいッ!帝国でも剣の訓練自体は頑張ってたので……すぐにはやられないと思います!」
「なら……がっかりさせてくれるなよ!」
剣を構えると同時に、ストゥネアはディグマの次の行動を伺う。
(……動いたか)
彼から距離を詰めてきたその闘争心に笑みを浮かべ、彼女は降ってくるであろう斬撃を──────
「あ、ちょ、重っ」
「……」
「あぁあ、あぁいてっ」
「……」
黒い刀に振り回されるが如く、ディグマは草原というクッションに全身を包まれる。
「─────流石、災害を撃退した剣の腕。まさかこんな一瞬でやられるとは……!」
「いや私何もしてないが!!??」
魔剣を地面に突き刺し、ストゥネアは寝転がるディグマの襟を掴む。
「まさかこんな一瞬で自滅されるとか私も思ってなかったが!?」
「あ、あはは……これで分かったでしょう?ボクの実力は」
「何故そんなに自慢げなのだ……全く。ほら、立て」
ため息混じりに、剣を握り直したディグマに言った。
「まずは剣の基礎!貴様の妹が来るまでに仕上げられるかは分からんが……基礎が成っていなければ何も教えられん」
「す、すみません……」
「謝罪はいらん。まずは剣の持ち方だ」
ストゥネアは魔剣を両手に握り、ディグマに見せる。
「私は両手剣寄りだから、貴様のような刀とは少し異なってしまうが……共通している事はある。剣を離すな!敢えて投げたり持ち手を変えたりという高等テクニックは絶対に真似するな。まずは強く剣を握る!」
「は、はい!」
言われた通りに身体中の力を込めて刀を握るディグマの肩を、ストゥネアは人差し指で撫でた。
「うひゃぁお」
「妙な声を出すな……ここからは無駄な力を抜いていく。しっかりと『剣を構える』事が出来ていれば、相手に圧をかけられる」
「ひゃ、ひゃい」
「右手はこうで……いや、足はまだ動かすな。次は─────」
状況を説明すると。
カチコチに剣を構えているディグマを背後からストゥネアが抱きつくように構えを直している。文字通り手取り足取り。
(やめるんだボク!構えるのは聖剣一本で良い!そっちのセイ剣は鞘の中で眠らせるんだッッ)
「……いいじゃないか!ゆったりとした構え、しかし腰は力が入っていて体幹がブレていない。この感覚を忘れるなよ」
「え?あ、はいっ!」
ストゥネアが離れ、彼の前に立つと────ディグマは再認識してしまう。
(このでっかいのがボクの背中に刺さってたのかぁ……)
「ってちがーーーう!!や、やっぱりストゥネアさんの立ち姿が参考になるんですよ!!傍観者との戦いの時も思わず見惚れちゃいそうになりましたよ」
自分の気を紛らわすために、今目の前にいるのは『かっこいい』存在であると暗示をかけるように口に出す。
「え“」
だが────奇しくもストゥネアはディグマの言葉に背筋が凍ってしまうのだ。
(……まずいまずいまずい!!まさかあの時の戦いで私の方を見る余裕があったというのか!?なら……私が魔剣を解放しているところも見られているとしたら……!)
「ど、どうかしましたか?」
「い、いや別に。ただ私も他人からどういう風に見えているのか気になってしまってな……例えばどこが参考になると思った?貴様が強くなる手掛かりにもなるかもしれん」
もちろん嘘である。魔剣使いである事がバレていないか確かめたかっただけなのだが─────対するディグマも嘘をついていたのだった。
(ウッソでしょそこ追求してくるの!?紛らわすために適当に言っただけなのにッ!え、えーと……クソ、頭が回らない……!!)
会話の中で不自然な間が開くのを嫌う性格だったディグマは……確信もない事を口走ってしまった。
「え、えーと。なんか剣を変形?させてた感じのがかっこよかったなーっていうか、ははは……」
そして、彼の嫌いな沈黙の間が2人の間をゆっくりとした足取りで通り過ぎた。
「いや、何を言ってるのだ貴様は……」
「え?あ、あはは……そうですよね、おかしいですよね」
(うわやっぱりそうだっ!ボクが見たのって傍観者がなんやかんやしたのが原因の幻覚とかだッ!)
ため息をついたディグマは、会話でうまくいかない事があるだけで一喜一憂してしまう自分の性格が難儀なものだと、また二重でため息をついた。
「では、構え方の次だ。準備はいいな?」
「はいっ!」
精神を切り替え、少年は黒刀を再び握り直す。
「攻撃の方法、防御、技……色々あるが、次に学ぶのはどれだと思う?」
「うーん、そうですね……やっぱり間合いの取り方とか?」
「残念!正解は『剣の変形のさせ方』だ」
「剣の変形のさせ方!?!?!?」
ディグマは目をまん丸にしながらストゥネアの持つ剣を見る。
────まるで生き物の口のように、剣が開いて閉じてを繰り返しているのだ。
「あれ、ボクの幻覚じゃなかった……あれ?剣って変形するものだっけ」
「何を言っている……さっき貴様も言っていたじゃないか」
平然とストゥネアはぐにゃぐにゃとうねる魔剣を持ちながら言った。
──────そう、平然と。
(しまったァァァアアアア!!!バレたと思って焦って変形見せちゃったァァァアアアア!!!)
ディグマが『剣が変形』というワードを口走った時点で、ストゥネアの思考回路はショートしていた。焦った彼女はまともに働かない脳を動かし、たどり着いた結論が……。
(構え方の次に変形のさせ方を学ぶ剣講座って一体なんだ!?私は妹を助けたい純情な少年に何を教えているのだ!?)
剣のうねりは止まらない。今更止められない。
「え、あの……変形ってそんな基本的っていうか皆やってるものなんですかね……?」
「当たり前だろう。これすら出来なければ即ち剣の才能がないという事だ。大人しく任務を妹に譲るがいい」
(何を言っているんだ私はァァァア!!それはもう才能というか剣自体の問題ではないか!!)
後には引けなくなってしまったストゥネア。もう疲れたかのようにうねりのキレが悪くなってきた風飲剣から目を逸らし、ディグマを見た所─────
「分かりましたッ!やってみますッ!そうか、帝国の連中は基本的な事もわざとボクに教えてなかったんだ……!だからボクはこんなに剣が下手なんだ……全部繋がったッ!」
「あ、馬鹿だぁ」
「へ?」
「続けろ。集中するんだ」
険しい表情を作りながら、ストゥネアは必死に剣を握り「変形しろ変形しろ……」と念じる少年を憐んでいた。
(剣への苦手意識が強すぎるあまり、剣に関する自分の常識すら疑ってしまう……いや、それでも流石に変形は疑うだろう……)
顔を手で覆わずにはいられなかった。
ディグマの言った経緯が真実なら────ストゥネアは同情と共感で肩入れしてしまう。
マジストロイが魔王を継ぐ以前の魔王軍。レナによる政治は平和ではあったものの、彼女は軍事的な方面ではあまり関与しなかった。そのため魔王軍の治安、腐った体制は変わらず。
家族を殺した【勇者】への憎しみは蓄積されていく。が、人間の血が混じっているストゥネアは古い価値観の上層部に認められない。
実力はあるはずなのに。達成したい目的には下らない理由で届かない。
(……魔剣を所持している事については上手く誤魔化すとしよう)
剣は普通、変形などしないという事は正直に言おうと決めた。今、彼女が彼にとってのマジストロイに……差し伸べられた光になってやらなければいけないと、ストゥネアの心が火を戻した。
「……すまない、変形についてだが─────」
「あの、ネアさん!」
「ん?」
目を開けた彼女は───────
「剣の変形、出来ました!」
「……」
グニャグニャとうねる黒い刀の姿が脳に焼きついた。
「……は???何で出来るの?????」
「え、もしかしてボク才能ある感じですか!?いやぁでもこれ結構キツいですね!」
「あ、あぁ。でも貴様がというよりは……刀の方がキツそうなのだが」
まるで生き物のようにうねる黒刀だが、時折疲労したのかのようにヘニャっと曲がった状態で動かなくなる。
……ディグマもストゥネアも知る由はないが。持ち主の無茶振りに全力で応えようとしている黒の聖剣の哀れな姿がここにある。
「剣が変形するなんて魔剣くらいの話だと思い込んでました!皆これをやってたのか……」
「うぐっ」
『魔剣』というワードが聞こえた恐怖。そして間違った事を教えている罪悪感。
「ま、まままままぁ……これで貴様もようやく一歩踏み出したというところか」
その二つから逃げる選択肢は、嘘をつき続ける事だった。
「本当にありがとうございます、ネアさん!」
「はは……気にするな、大したことはしていない。いや本当に」
「それでも、出会ったばかりのボクにこんなにしてくれて……」
「……実は、私の出身地も帝国でな」
正確に言うと、ストゥネアの母が生まれ、魔界に移住するまで暮らしていた地だ。
「へぇ、そうだったんですか!」
「故郷繋がりで力になってやりたいのもある。……懐かしい、小さい頃の私は【黒の勇者】の逸話を聞かされたりして憧れていたものだ。最強の勇者、なんて────子供心をくすぐられて当然だろう?」
そのストゥネア・モーウェンはもう存在しない。
彼女にとって【勇者】は憧れの対象ではなく……憎むべき『敵』となってしまったのだから。
……が。
「へ、へぇえぇ……あ、ああああ憧れますよね!」
そんな彼女の『敵』は目の前で声を震わせていた。
(うわ尚の事絶対言えねぇぇえええええ!!!憧れの勇者が聖剣振っただけで転ぶとかあまりにも夢が無さすぎるだろ!!!)
止まらない冷や汗を拭いながら、今だに剣をグニャグニャさせているディグマに……ストゥネアは気を引き締めた。
(少し話しすぎた。帝国の人間に絆されるとは……いや、これはあくまで『東の勇者』を見つける任務のため。任務……とは言え、だ)
目が合う2人。互いに下手くそな苦笑いで────訓練と指導を再開した。
(絶対に勇者だとバレる訳にはいかない……ッ!!!)
(絶対に私の教えが嘘だとバレる訳にはいかない……ッ!!!)
交錯しつつすれ違う思惑は……2人の境遇の割には、笑い飛ばせるほど下らないものだった。
(ハッ!?いつから私は魔王軍四天王である事ではなく、剣をグニャグニャ曲げるのが普通ではない事を隠したがっていた……?)
……ポンコツな彼女と彼の低次元心理戦はまだ終わりそうにない。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
時系列について
ストゥネアは現在22才です。マジストロイが魔王になり、聖剣が出現し始めたのが9年前の13才の時。彼女の家族が【勇者】に殺されたのは15年前の7才の時。レナが魔王になり、聖剣が出現し始めたのが100年以上前。
レナ就任
↓約100年
ストゥネア(7)の家族が勇者に殺害される
↓6年
マジストロイ就任
↓9年
現在
つまり、ストゥネアの家族を殺した勇者はマジストロイの代ではなくレナの代の勇者で、その時既にかなりのご長寿だったようです。
帝国 魔王城付近のとある町
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「貴様……自分でどれほどの無茶を言っているか分かっているのか」
「……」
「あぁ言ったとも。私に出来る範囲で貴様に剣を教えてやると」
「はい……」
「その期限が今日中とはどういう事だ!?悪徳にも程があるだろう!?」
「ごめんなさいぃ……!」
軍事帝国コンロソンが誇る最高戦力かつ【黒の聖剣】保有者。東の勇者ことディグマ・キサカは昨日出会った女性に土下座をかましていた。
だだっ広い草原の柔らかな土の感触が彼に膝に伝わる。
「やむを得ない事情があるんです!どうしてもすぐに剣を扱えるようにならないと……!」
「ならないと、なんだ?」
「……妹が危ないんです」
「!」
今代はマジストロイ・アスタグネーテが率いる魔王軍が誇る四天王の一角かつ【風飲剣】保有者。風天ことストゥネア・モーウェンは昨日出会った少年の目が嘘を言っていない事を察する。
そして、家族に危険が迫っているという話題は……家族を失った事が戦う理由である彼女にとって無視出来ないものだった。
「話してみろ」
「……実はボク、帝国軍の名誉ある任務中でして。具体的にはまだ取りかかっていないんですけど」
「……どんな任務だ?」
(帝国の内情は出来れば知っておきたい。そして東の勇者の行方を掴む────)
ストゥネアは探りを入れる。ディグマに協力するのも東の勇者を探すため。あくまで彼女は本来の目的を忘れていない。
「す、すみません。機密です……」
「まぁ、そうだろうな。遮ってすまない、続けてくれ」
ここで『話さなければ剣を教えない』などの脅しが全く思いつかず、思いついたとしてもやらないのがストゥネアの長所であり短所だ。目的に向けての推進力はあるが、自らの心を裏切るような事はできない。
────が、この時にもう少し踏み込んでいれば、彼女は核心に近づけたはずだった。
ディグマの言う『任務』とは……魔王討伐の事なのだから。
(言えねえええええ!!最強と名高い東の勇者がよりにもよって剣がヘタクソとか言えるわけないよおおおおおおおお!!!)
汗をダラダラと流しながら、この話題から離れるためにディグマは早々と続ける。
「で、その任務にボクが選ばれたのを……同じく軍に所属している妹が気に食わないらしくて」
「ほう?」
「追ってきてるんです。軍のお偉いさんの許諾も貰って、ボクと剣で決闘して妹が勝ったら任務を奪うっていう……」
「なんだ、それは……」
絶賛魔王との戦いの最中だと言うのに、仲間割れのような揉め事を起こしている帝国軍に敵ながらストゥネアは呆れを隠せなかった。
「剣で決闘と限定されているのは何故だ?貴様の得意分野は銃だろう」
「帝国って結構硬い考え方で。ボクは銃を手に妹に勝って、この任務を任せてもらったんです。でも本当は上の連中もボクと銃の事は良く思ってなくて、それで妹の頼みを快く引き受けたって感じです」
「妹がその任務とやらを奪いたがっているのは何故だ」
「この任務に関してはボクが担当するのは相応しくないって思われてるのと、功績目当てかと……」
「ふむ。では、貴様が任務に固執しているのは何故だ?面倒なら譲ればいい話だろう」
「……危険なんですよ、この任務」
それで『妹が危険』という言葉に繋がるのか、とストゥネアは1人納得した。
「本当は……この任務、剣を扱える人の方が向いてるんです。でも妹を危険な目に合わせたくない」
「……」
「お願いします!どうかボクに剣を……!」
「構えろ」
地に伏せた顔を上げ、騎士を見上げた。
「時間は無いのだろう?剣が苦手と言うが……まずは貴様の腕を見せてみろ」
「……っ、はいっ!ありがとうございますネアさんッ!!」
疲れたように微笑んだ騎士は、未変形の魔剣を構えた。
同時に─────少年は黒い鞘から黒い刀身を引き抜く。
「模擬戦だ。私は寸止めに慣れているが、貴様は遠慮しなくて良い。当たるのならもう教える事は……無いのだからな!」
「ッ!分かりましたッ!」
ストゥネアは両手に剣を握り、足を踏み出して振りかぶる───────
「……あの」
「なんでしょう!?」
「遠すぎだろう、剣の間合いにしては。私の剣が五倍の長さでも貴様に届かない距離だぞ」
「だって近いと危ないじゃないですか!?」
「いや剣士同士の戦いに何を言っている!?本当に強くなる気はあるのか!?」
戦いが始まった瞬間に素早い足捌きでバックステップを決め込んだディグマ。草原の上にも関わらず足をもつれさせなかった所には評価をしたかったストゥネアだったが、大きめの声を出さなければ届かない程離れた相手にわざわざ言う気にはならなかった。
「射手ならば距離を取るのは賢明な判断だが……今の貴様は剣士だ。忘れるなよ」
「は、はいッ!帝国でも剣の訓練自体は頑張ってたので……すぐにはやられないと思います!」
「なら……がっかりさせてくれるなよ!」
剣を構えると同時に、ストゥネアはディグマの次の行動を伺う。
(……動いたか)
彼から距離を詰めてきたその闘争心に笑みを浮かべ、彼女は降ってくるであろう斬撃を──────
「あ、ちょ、重っ」
「……」
「あぁあ、あぁいてっ」
「……」
黒い刀に振り回されるが如く、ディグマは草原というクッションに全身を包まれる。
「─────流石、災害を撃退した剣の腕。まさかこんな一瞬でやられるとは……!」
「いや私何もしてないが!!??」
魔剣を地面に突き刺し、ストゥネアは寝転がるディグマの襟を掴む。
「まさかこんな一瞬で自滅されるとか私も思ってなかったが!?」
「あ、あはは……これで分かったでしょう?ボクの実力は」
「何故そんなに自慢げなのだ……全く。ほら、立て」
ため息混じりに、剣を握り直したディグマに言った。
「まずは剣の基礎!貴様の妹が来るまでに仕上げられるかは分からんが……基礎が成っていなければ何も教えられん」
「す、すみません……」
「謝罪はいらん。まずは剣の持ち方だ」
ストゥネアは魔剣を両手に握り、ディグマに見せる。
「私は両手剣寄りだから、貴様のような刀とは少し異なってしまうが……共通している事はある。剣を離すな!敢えて投げたり持ち手を変えたりという高等テクニックは絶対に真似するな。まずは強く剣を握る!」
「は、はい!」
言われた通りに身体中の力を込めて刀を握るディグマの肩を、ストゥネアは人差し指で撫でた。
「うひゃぁお」
「妙な声を出すな……ここからは無駄な力を抜いていく。しっかりと『剣を構える』事が出来ていれば、相手に圧をかけられる」
「ひゃ、ひゃい」
「右手はこうで……いや、足はまだ動かすな。次は─────」
状況を説明すると。
カチコチに剣を構えているディグマを背後からストゥネアが抱きつくように構えを直している。文字通り手取り足取り。
(やめるんだボク!構えるのは聖剣一本で良い!そっちのセイ剣は鞘の中で眠らせるんだッッ)
「……いいじゃないか!ゆったりとした構え、しかし腰は力が入っていて体幹がブレていない。この感覚を忘れるなよ」
「え?あ、はいっ!」
ストゥネアが離れ、彼の前に立つと────ディグマは再認識してしまう。
(このでっかいのがボクの背中に刺さってたのかぁ……)
「ってちがーーーう!!や、やっぱりストゥネアさんの立ち姿が参考になるんですよ!!傍観者との戦いの時も思わず見惚れちゃいそうになりましたよ」
自分の気を紛らわすために、今目の前にいるのは『かっこいい』存在であると暗示をかけるように口に出す。
「え“」
だが────奇しくもストゥネアはディグマの言葉に背筋が凍ってしまうのだ。
(……まずいまずいまずい!!まさかあの時の戦いで私の方を見る余裕があったというのか!?なら……私が魔剣を解放しているところも見られているとしたら……!)
「ど、どうかしましたか?」
「い、いや別に。ただ私も他人からどういう風に見えているのか気になってしまってな……例えばどこが参考になると思った?貴様が強くなる手掛かりにもなるかもしれん」
もちろん嘘である。魔剣使いである事がバレていないか確かめたかっただけなのだが─────対するディグマも嘘をついていたのだった。
(ウッソでしょそこ追求してくるの!?紛らわすために適当に言っただけなのにッ!え、えーと……クソ、頭が回らない……!!)
会話の中で不自然な間が開くのを嫌う性格だったディグマは……確信もない事を口走ってしまった。
「え、えーと。なんか剣を変形?させてた感じのがかっこよかったなーっていうか、ははは……」
そして、彼の嫌いな沈黙の間が2人の間をゆっくりとした足取りで通り過ぎた。
「いや、何を言ってるのだ貴様は……」
「え?あ、あはは……そうですよね、おかしいですよね」
(うわやっぱりそうだっ!ボクが見たのって傍観者がなんやかんやしたのが原因の幻覚とかだッ!)
ため息をついたディグマは、会話でうまくいかない事があるだけで一喜一憂してしまう自分の性格が難儀なものだと、また二重でため息をついた。
「では、構え方の次だ。準備はいいな?」
「はいっ!」
精神を切り替え、少年は黒刀を再び握り直す。
「攻撃の方法、防御、技……色々あるが、次に学ぶのはどれだと思う?」
「うーん、そうですね……やっぱり間合いの取り方とか?」
「残念!正解は『剣の変形のさせ方』だ」
「剣の変形のさせ方!?!?!?」
ディグマは目をまん丸にしながらストゥネアの持つ剣を見る。
────まるで生き物の口のように、剣が開いて閉じてを繰り返しているのだ。
「あれ、ボクの幻覚じゃなかった……あれ?剣って変形するものだっけ」
「何を言っている……さっき貴様も言っていたじゃないか」
平然とストゥネアはぐにゃぐにゃとうねる魔剣を持ちながら言った。
──────そう、平然と。
(しまったァァァアアアア!!!バレたと思って焦って変形見せちゃったァァァアアアア!!!)
ディグマが『剣が変形』というワードを口走った時点で、ストゥネアの思考回路はショートしていた。焦った彼女はまともに働かない脳を動かし、たどり着いた結論が……。
(構え方の次に変形のさせ方を学ぶ剣講座って一体なんだ!?私は妹を助けたい純情な少年に何を教えているのだ!?)
剣のうねりは止まらない。今更止められない。
「え、あの……変形ってそんな基本的っていうか皆やってるものなんですかね……?」
「当たり前だろう。これすら出来なければ即ち剣の才能がないという事だ。大人しく任務を妹に譲るがいい」
(何を言っているんだ私はァァァア!!それはもう才能というか剣自体の問題ではないか!!)
後には引けなくなってしまったストゥネア。もう疲れたかのようにうねりのキレが悪くなってきた風飲剣から目を逸らし、ディグマを見た所─────
「分かりましたッ!やってみますッ!そうか、帝国の連中は基本的な事もわざとボクに教えてなかったんだ……!だからボクはこんなに剣が下手なんだ……全部繋がったッ!」
「あ、馬鹿だぁ」
「へ?」
「続けろ。集中するんだ」
険しい表情を作りながら、ストゥネアは必死に剣を握り「変形しろ変形しろ……」と念じる少年を憐んでいた。
(剣への苦手意識が強すぎるあまり、剣に関する自分の常識すら疑ってしまう……いや、それでも流石に変形は疑うだろう……)
顔を手で覆わずにはいられなかった。
ディグマの言った経緯が真実なら────ストゥネアは同情と共感で肩入れしてしまう。
マジストロイが魔王を継ぐ以前の魔王軍。レナによる政治は平和ではあったものの、彼女は軍事的な方面ではあまり関与しなかった。そのため魔王軍の治安、腐った体制は変わらず。
家族を殺した【勇者】への憎しみは蓄積されていく。が、人間の血が混じっているストゥネアは古い価値観の上層部に認められない。
実力はあるはずなのに。達成したい目的には下らない理由で届かない。
(……魔剣を所持している事については上手く誤魔化すとしよう)
剣は普通、変形などしないという事は正直に言おうと決めた。今、彼女が彼にとってのマジストロイに……差し伸べられた光になってやらなければいけないと、ストゥネアの心が火を戻した。
「……すまない、変形についてだが─────」
「あの、ネアさん!」
「ん?」
目を開けた彼女は───────
「剣の変形、出来ました!」
「……」
グニャグニャとうねる黒い刀の姿が脳に焼きついた。
「……は???何で出来るの?????」
「え、もしかしてボク才能ある感じですか!?いやぁでもこれ結構キツいですね!」
「あ、あぁ。でも貴様がというよりは……刀の方がキツそうなのだが」
まるで生き物のようにうねる黒刀だが、時折疲労したのかのようにヘニャっと曲がった状態で動かなくなる。
……ディグマもストゥネアも知る由はないが。持ち主の無茶振りに全力で応えようとしている黒の聖剣の哀れな姿がここにある。
「剣が変形するなんて魔剣くらいの話だと思い込んでました!皆これをやってたのか……」
「うぐっ」
『魔剣』というワードが聞こえた恐怖。そして間違った事を教えている罪悪感。
「ま、まままままぁ……これで貴様もようやく一歩踏み出したというところか」
その二つから逃げる選択肢は、嘘をつき続ける事だった。
「本当にありがとうございます、ネアさん!」
「はは……気にするな、大したことはしていない。いや本当に」
「それでも、出会ったばかりのボクにこんなにしてくれて……」
「……実は、私の出身地も帝国でな」
正確に言うと、ストゥネアの母が生まれ、魔界に移住するまで暮らしていた地だ。
「へぇ、そうだったんですか!」
「故郷繋がりで力になってやりたいのもある。……懐かしい、小さい頃の私は【黒の勇者】の逸話を聞かされたりして憧れていたものだ。最強の勇者、なんて────子供心をくすぐられて当然だろう?」
そのストゥネア・モーウェンはもう存在しない。
彼女にとって【勇者】は憧れの対象ではなく……憎むべき『敵』となってしまったのだから。
……が。
「へ、へぇえぇ……あ、ああああ憧れますよね!」
そんな彼女の『敵』は目の前で声を震わせていた。
(うわ尚の事絶対言えねぇぇえええええ!!!憧れの勇者が聖剣振っただけで転ぶとかあまりにも夢が無さすぎるだろ!!!)
止まらない冷や汗を拭いながら、今だに剣をグニャグニャさせているディグマに……ストゥネアは気を引き締めた。
(少し話しすぎた。帝国の人間に絆されるとは……いや、これはあくまで『東の勇者』を見つける任務のため。任務……とは言え、だ)
目が合う2人。互いに下手くそな苦笑いで────訓練と指導を再開した。
(絶対に勇者だとバレる訳にはいかない……ッ!!!)
(絶対に私の教えが嘘だとバレる訳にはいかない……ッ!!!)
交錯しつつすれ違う思惑は……2人の境遇の割には、笑い飛ばせるほど下らないものだった。
(ハッ!?いつから私は魔王軍四天王である事ではなく、剣をグニャグニャ曲げるのが普通ではない事を隠したがっていた……?)
……ポンコツな彼女と彼の低次元心理戦はまだ終わりそうにない。
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時系列について
ストゥネアは現在22才です。マジストロイが魔王になり、聖剣が出現し始めたのが9年前の13才の時。彼女の家族が【勇者】に殺されたのは15年前の7才の時。レナが魔王になり、聖剣が出現し始めたのが100年以上前。
レナ就任
↓約100年
ストゥネア(7)の家族が勇者に殺害される
↓6年
マジストロイ就任
↓9年
現在
つまり、ストゥネアの家族を殺した勇者はマジストロイの代ではなくレナの代の勇者で、その時既にかなりのご長寿だったようです。
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