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ご馳走になってもいいんですか?これくらいはご馳走するよ!

これくらいはご馳走するよ!(右田香視点⑥)

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帰宅して、のぞみさんと弟にメールをしたら、すぐに望さんから返信があった。


~・~・~・~・~

今日は本当に、
ありがとうございました!

こうさんに会えて
とてもうれしかったです。


土日ですが、
香さんとの約束を
最優先にします。

今週の土曜日は
どうですか?

~・~・~・~・~


俺との約束を最優先にするなんて、うれしいことを言ってくれる。望さんが益々かわいく思えてならない。明るくて素直な望さんとなら、どこへ行っても楽しめそうだ。早速、今週の土曜日に会うことにした。



弟から返信があったのは、次の日の朝だった。


~・~・~・~・~

兄貴がキャバクラに
行ったらあんな感じか。
望と仲良くな。

~・~・~・~・~


えんくんも、キャバクラのようだと思っていたんだね!今更だけど、お兄ちゃん、穴があったら入りたいよ!居た堪れなさから弟にメールしたのに、藪蛇やぶへびだった。

とほほと思いながら、会社に着くと、大芝おおしばがまだ来ていなかった。この時間に出勤していないのは珍しい。

始業ぎりぎりになって、大芝が現れた。息が切れており、急いで来たのがよくわかる。しかし、くたびれた感じはなく、いつもより溌剌はつらつとした顔をしている。

荏原えばらさんは、大丈夫なのか?



昼休憩になり、大芝に話しかける。


「荏原さんは、大丈夫だったのか?」

「なんとか仕事に行ったよ。心配で、途中まで付き添ったら、遅刻しそうなった!」

「間に合ってよかったな。…昨日あれから、無理でもさせたのか?」

「そうだね!前々から準備は進めていたから、割とすんなり入ったけど、1回で済むわけないしね。何度もおかわりをさせてもらったよ!」

「そこまで生々しい話は、聞いてない!!」

「そう?右田うだのおかげで、一番のご馳走を食べられたから、ちゃんと報告しておきたくてさ。最高に美味しかったよ!!で、そっちは?」

「望さんとは、今週の土曜日に会うことになった。」

「順調だね!のんタン、かわいいからな。初デートでいきなり食べるなよ!」

「食べないから!」

「右田の理性が試されるね。面白くなってきた!」


大芝にまた面白がられる。望さんのことはかわいいと思うが、男相手に手を出すことはないだろう。膝の上に乗せた時に抱き締めてしまったが、それは性的な感情ではなく、小さな動物を愛でるみたいな感情であって…。

さすがに今日は手作り弁当ではないなと、大芝の様子を眺めながら、望さんへ抱く気持ちについてぼんやりと考えた。





~土曜日~

望さんから、午前中だけバイトに入る予定だったが、マスターと取り引きをして休みにしてもらったとメールが届いた。取り引きとは何か気になったが、会った時に聞けばいいかと思い、午前中から会うことにした。お互いの中間地点にある駅で待ち合わせをする。


こうさん、おはようございます!」

「おはよう!望さん早いな。俺も約束の時間より早く来たんだけど。」

「楽しみすぎて、そわそわ落ち着かなくて、気がついたらここに立ってました!」

「そんなに緊張しなくていいから。俺にも、えんにするように話して。」

「いいんですか?あ、いいの?」

「いいよ!」


望さんを少しでもリラックスさせたくて、そう言うと、うれしそうに表情を和らげてくれた。


「香さん、どこに行く?」

「散策するのはどうかな?気になるお店があれば覗いたりして。そんなのも楽しいと思うんだけど。」

「賛成!香さんとなら、きっと楽しいよ!」

「ありがとう。」


2人でにこにこしながら歩き出す。天気もいいし、ぶらぶらするにはちょうどいい。


「香さんも右田も、背が高いよな。」

「うちの家族はみんな高いよ。姉がいるけど、望さんより高いし。」

「俺も右田家に生まれたかった!」


右田家と言われて、望さんの名字を未だに知らないことに気がついた。


「そういえば、望さんの名字って?」

「名字が望だよ!」

「そうだったのか!?名前は?」

実時さねとき。みんな名字で呼ぶから、名前呼びってほとんどされないんだよ。あ!香さん、俺のこと名前で呼んで!」

「じゃあ、実時くん?」

「なんかいい!!もっと呼んで!」


俺に名前を呼ばれると、にこりと顔をほころばせる。そんな望さんがかわいくて、何度も呼んでみた。


「実時くん?」

「香さん!」

「実時くん?」

「香さん!」

「実時くん?」

「香さん!」


…なんだこれ!だんだん恥ずかしくなってきた。


「…喉が渇いたな。何か飲まない?」

「飲む!冷たい物がいい!」


こじんまりとしたカフェを見つけたので、入ることにした。


「このちっさいスイーツもおいしそう!」

「一緒に頼む?」

「頼む!2種類あるから、1つずつ頼んで、半分個しない?」

「そうしようか。」


アイスコーヒーを2つと、プチスイーツを1種類ずつ頼んだ。


「はい、半分個!香さん、あーん!」

「ありがとう。…うん、おいしい!実時くんも、はい、口開けて。」


横並びで腰を掛けたので、向かい合うより距離が近く、実時くんの申し出を何も考えずに受け入れてしまった。お返しにと思って、俺も実時くんに食べさせたが…。


「ありがとう!どっちもおいしい!」


にこっと微笑む実時くんがかわいくて、俺も笑って頷いた。大芝には、初デートなんて言われたが、これでは本当にデートだな。恋人同士のような雰囲気が、くすぐったい。序盤からこんな雰囲気では、帰る頃にはどうなってしまうのだろうか。


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