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ご馳走になってもいいんですか?これくらいはご馳走するよ!

ご馳走になってもいいんですか?(望実時視点⑤)

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右田うだが背の高い男性3人組をカフェに案内した時、その中の1人に、目が釘付けになった。

俺、この人のことをゼッタイ好きになる!直感がそう叫んでいた。

ほんの少しの間だったけど、右田に頭を小突かれるまで、その人を凝視してしまった。むこうも俺の目を見てくれるから、気兼ねなく視線を合わせられたっていうか。って、え??こうさん??!この人が香さんなの?!!

頭の中がごちゃごちゃで、手足がうまく動かせなかったけど、席までどうにか案内をした。ぎくしゃくしている俺に、香さんが話しかけてくれた。声もすっごく好き!その声を聞いたら、混乱していた気持ちが少しずつ落ち着いてきた。

俺を女性だと勘違いしていたと、香さんは言ってたけど、それはこっちだって同じだ。でも、そんなことはどうでもよくて、早く注文を済ませて、香さんとゆっくり話がしたかった。それでも、マスターへの挨拶は外せないので、断わりを入れてから、そちらに向かう。


「マスター、いらっしゃいませだニャン!毎年、ありがとうございますニャッ!」

「こちらこそ、毎年楽しませてくれてありがとう!のぞみくん、今回も様になってるな。目の色がきれいだね。」

「今のカラコンはすごいニャッ!俺は緑だけど、青や黄色の猫もいるニャン!」

「へぇ、青もいいね。どの猫かな?」


青か。えーっと、青色のカラコンをしているのは、佐丸さまるくんだったな。


「佐丸くん、こっち来てニャッ!こちらのお客様をお願いするニャン!」

「ニャーい!に゛ゃっに゛ゃっ!?」


佐丸くんが、マスターの顔を確認した途端、変な声を上げた。そういえば、去年、連れてかれそうになっていたんだっけ?俺ってば、うっかり!うっかり!

注文を調理場に伝え、カップの準備などを手伝っていると、佐丸くんが注文を伝えに来た。注文を受けるのが早すぎないか?マッハだな!

ちらほらいたお客さんは、香さん達が来るちょっと前に帰ったので、今は香さん達とマスターしかおらず、注文の品はすぐに出来上がった。マスターもおすすめセットのコーヒーだった。


のぞみ、兄貴達んとこに運ぶの手伝うから。」

「じゃあ、これとこれをお願い!」

「…俺が、あの人のところに持って行かなきゃダメ…?」


その弱々しい声に、俺はにっこりと頷いた。マスターが待っている猫は、佐丸くんだよ!

特別待遇なので、チーズケーキとクッキーの他に、チョコムースが付いている。クッキーも増量されていて、お皿から溢れ出そうになっている。コーヒーのおかわりもしてもらって!と、須野すやに言われた。喜んでくれるといいな!


「こんなにサービスしてくれるの?すごいね!」

「どれもうまそうだわ。」

「ここまで豪勢だと、なんか悪いな。」

「せっかくお越しいただいたお礼だニャン!どうぞ召し上がって下さいニャッ!」

「ごゆっくりどうぞ。ニャン!」

「ぶはっ!弟君猫ちゃん、やっぱ最高!」


右田は3人に対して頭を下げた後、「望はこのまま兄貴達と話しとけ」と、俺に耳打ちしてからトレイを持って去っていった。


「望さん、隣に座りますか?」

「ありがとうございますニャッ!」


香さんに勧められて、隣に腰を下ろす。

俺の前に座っている人が、香さんの職場の同期の大芝おおしばさんで、大芝さんの隣に座っている人が、大芝さんの同居人の荏原えばらさんだと紹介された。イケメンを同伴しないことだけを祈っていたけど、香さんも含め、みんながイケメンだった。


「のんタン、あのサービスを、香さんにもしてくるかな?」


大芝さんが、あっちの方を見ながら俺に言うので、振り返ってみると、マスターの膝の上に座った佐丸くんが、マスターの口にケーキを運んでいた。

佐丸くん、何やってんの?!いや、佐丸くんに何やらせてんの?!マスター!!!


「右田、せっかくだから。ね?恥ずかしいなら、俺も荏原を膝の上に乗せるからさ!」

「はあ?うぉいっ!?」


大芝さんが光の速さで、荏原さんを膝の上に乗せた。荏原さんも背が高いのにすごいパワーだな!なされるがままの、首まで真っ赤っかの荏原さんを見て、俺はあらゆることが吹っ切れた。

おしっ!香さんの膝の上に座ろうっと!


「失礼しますニャン!ニャッこらせっ!」

「の、望さん!?」

「香さん、重くニャいですか?」

「や、ちっとも!!」

「あーんして下さいニャン!ニャアーン!おいしいですかニャ?」

「…おいしいです。でも、…あの、いいのかな。他のお客さんが来たら、まずくない?」


俯きがちに、ケーキをもごもごしながら、香さんがまわりを気にしている。丁寧語が抜けているのが、なんだかうれしい。顔が薄っすら赤く見えるのは、俺の気のせいかな?

目の前では、大芝さんが、膝の上の荏原さんにクッキーを食べさせながら、さっき荏原さんに、口の中に突っ込まれたチョコムースをもぐもぐしている。お二人さん、手馴れていらっしゃる?


「貸切にしているので、大丈夫ですニャン!お客様方、ごゆっくりスイーツを堪能して下さいニャ!のんちゃん、スマホを寄越せニャッ!ナイスポージング~目線はこっちニャよ!」


須野の段取りには恐れ入った。こんな形で応援してくれるとは!香さんの膝の上に座わったまま、ポケットからスマホを取り出し、須野に手渡す。

須野だけでなく、他のメンバーもすごく協力的で、俺達だけでなく、大芝さんと荏原さん、マスターと佐丸くんの、それぞれのスマホを手にし、写真を撮りまくっていた。


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