上 下
14 / 14

ある朝の散歩。(小話)

しおりを挟む
≪side ムムマル≫


俺と清彦サヤヒコが後輩の家で暮らし始めてしばらくが過ぎ、夕方の散歩の時間にしか会えなかった後輩と毎日一緒の日々にも慣れた。


『先輩!先輩!今日も一緒だね!うれしいね!』


『毎日一緒だろ?目が覚めてすぐ、いつもそれを言うよな』


『だって、うれしいから先輩に言いたくなる!先輩もうれしいでしょ?』


『そうだな、うれしいな』


後輩は驚くほど大きく成長した。今でも綿あめみたいなのだが、綿あめと呼ぶには大きすぎるから、清彦もいつの間にかルシアンと呼ぶようになった。

後輩はよく覆いかぶさってきて、俺はこいつの重さに耐え切れず、いつもヨタヨタしてしまう。でも、後輩と戯れるのは楽しいからそれを咎めたことは一度もない。


『先輩!咲弥サクヤと清彦が来た!朝の散歩だね!うれしいね!』


『今日は2人とも休みっぽいぞ。いつもより長めに散歩できるかもな』


朝夕の散歩は、清彦だったり、咲弥だったり、2人だったり、3人だったりと、その日によって変わる。おふくろさんが1人でってのはまずない。大きすぎる後輩に俺も一緒となると、けっこうな力がいる。後輩は素直だし、俺もぐいぐい引っ張ることはあまりしないが、おふくろさんなんかは、後輩の背中に乗って行った方が手っ取り早いし、楽だと思う。


「ヒコちゃん、今朝はK公園の先まで行こうか?川岸を歩くのも気持ちがいいんじゃない?」


「…あぁ」


一緒に暮らし始めてから、咲弥は清彦を「ヒコちゃん」と呼ぶようになった。おふくろさんは「清彦君」だ。鈴掛スズカケ呼びより、親しみが湧くからという理由だ。

清彦はヒコちゃん呼びされることにまだ慣れないし、恥ずかしがって咲弥を「佐熊サクマ」と呼んでしまう。

「ヒコちゃん、呼び方が違くない?」と、優しく問いかける咲弥に清彦は弱いらしく、うつむきながら「…咲弥」と言い直している。それにふわりと笑いかける咲弥は、俗にいうデレ顔をしている。


「アンタ、…咲弥、その手は何だ?」


「朝早いから人が少ないし、誰か来たらやめるから手を繋がせて欲しい」


「…いいけど」


「や!やっぱり、散歩を早めに終わらせて家に戻っていい?母さんにバレないようにこっそりとイチャ――みんなの視線が痛いから今の発言はなかったことにして…。ルシアン、俺のつま先をガリガリするのヤメテ!」



K公園を通り過ぎ、川岸を散歩する。至るところにベンチが設置されているから、そこに座ってのんびりと景色を眺めることができる。清彦と咲弥はベンチに腰を掛け、俺と後輩は戯れ始める。


『先輩ってとってもいいニオイ!オレ、先輩のニオイも先輩も大好き!先輩もオレのことが大好きでしょ?』


『俺の後輩はお前しかいない。後輩のことを大好きなのはこれからも変わらないぞ』


『うれしいな!先輩、いつも重たいでしょ?今日は先輩がオレの上に乗っかって!』


後輩が寝転び、俺に向かって腹を見せている。この上に乗ってもいいってことか?


『大丈夫か?』


『先輩は軽いから大丈夫だよ!』


これなら後輩の重さに耐え切れず、ヨタヨタすることはない。後輩もすごく満足そうにしているので、その体勢のままワフワフワフワフ戯れる。


「引かないで、聞いてくれる?俺には、女王様ムムさんに踏みつけられて、喜ぶ変態ブタ野郎ルシアンに見えなくもないんだけど」

「…確かに。ルシアンいいツラしてんな」


2人の話し声は俺達には届かず、楽しい戯れの時間はまだまだ続く。


しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

保育士だっておしっこするもん!

こじらせた処女
BL
 男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。 保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。  しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。  園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。  しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。    ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?

俺の小学生時代に童貞を奪ったえっちなお兄さんに再会してしまいました

湊戸アサギリ
BL
今年の一月にピクシブにアップしたものを。 男子小学生×隣のエロお兄さんで直接的ではありませんが性描写があります。念の為R15になります。成長してから小学生時代に出会ったお兄さんと再会してしまうところで幕な内容になっています ※成人男性が小学生に手を出しています 2023.6.18 表紙をAIイラストに変更しました

孤独な戦い(3)

Phlogiston
BL
おしっこを我慢する遊びに耽る少年のお話。

クラスの仲良かったオタクに調教と豊胸をされて好みの嫁にされたオタクに優しいギャル男

湊戸アサギリ
BL
※メス化、男の娘化、シーメール化要素があります。オタクくんと付き合ったギャル男がメスにされています。手術で豊胸した描写があります。これをBLって呼んでいいのかわからないです いわゆるオタクに優しいギャル男の話になります。色々ご想像にお任せします。本番はありませんが下ネタ言ってますのでR15です 閲覧ありがとうございます。他の作品もよろしくお願いします

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

支配された捜査員達はステージの上で恥辱ショーの開始を告げる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ゆるふわメスお兄さんを寝ている間に俺のチンポに完全屈服させる話

さくた
BL
攻め:浩介(こうすけ) 奏音とは大学の先輩後輩関係 受け:奏音(かなと) 同性と付き合うのは浩介が初めて いつも以上に孕むだのなんだの言いまくってるし攻めのセリフにも♡がつく

騎士団長が民衆に見世物として公開プレイされてしまった

ミクリ21 (新)
BL
騎士団長が公開プレイされる話。

処理中です...