ハッピーストリーム

黒川あきと

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第9ステージ 2度目の都大会

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突如始まった前哨戦には負けたけど、
単純比較もリューヌちゃんの感想も、
しおりは五家谷さんを上回ってるってことで一致した。
だから、私達は自信を失うことはなかった。

あと、清水さんが先生に
「目標なら雑誌よりまず先に私達に言ってください。
 ああいった雑誌は誇張して載せたりもするので、
 挑発、他校を舐めてるととられてもおかしくないようなことは少しも言っちゃいけないんです。」
とガチ説教し、
先生が「盛り上げようと思って、結果やりすぎてしまいました。
    本当にごめんなさい!」
とガチ謝罪したため、
チームの雰囲気も悪くない。
雑誌に載ってしまったもんはしょうがない。とひとまず開き直って、
全勝を目標に、より勝利を意識して練習するようになった。

平日は河川敷、休日は先生の車や、あきねパパの車で西の方へ遠征し山岳練習。
ゴールデンウィークを挟んだのもあって、この2週間は今までで一番の練習量だった。
意識も明確で質も高かった自信がある!

寝つきが悪いことで有名な私も、
布団入った瞬間爆睡の毎日で、
本当にあっという間だった。

雑誌で堂々と宣言した全勝を目標に。

私達は創部2年目にして、迎え撃つ立場で都大会に参戦する。

5月7日(土)
いつもの河川敷。
去年と同じく開会式は割とあっさりしたもので、
すぐにレースへと移行する。

ルールは去年と変わっていなくて、
全6ステージ。
その合計タイムで競うのが総合順位。
総合順位1位、2位、3位の選手の高校は関東大会出場。
そしてステージ優勝数が一番多かった高校を加えた4校が関東大会へ。

総合1位2位が同じ高校の選手なら4位、
ステージ優勝数最多が総合3位までの選手の高校と被ってたらステージ勝利数2位、
って感じに下がっていき、とにかく4校が関東大会出場。

今年のコースプロフィールは、
今日の第1ステージ個人タイムトライアル
第2ステージ 河川敷での平坦ステージ
第3ステージ 森林公園を周回する、少しアップダウンのある平坦ステージ
第4ステージ 中級山岳ステージ 下りゴールで少し軽めの山岳コース。
第5ステージ 超級山岳ステージ 大会1番の山岳で登りゴール。優勝争いが決着するクイーンステージ(最重要ステージ)。
第6ステージ 河川敷での平坦ステージ

って感じ。
王道のシンプルな構成でいいなって思う。

総合争いで特に注目は、第5ステージだけど、
今日の個人TTも超重要。
去年は渋谷さんが大会記録で制したステージ。

さて、

今回は出場12校で、
去年の総合1位の多摩女子高校が1~5、私達は11~15、
豊女は21~25っていう風にゼッケンが割り振られてる。
ゼッケンが若くない順って言い方でいいのかな、数字が多い順にスタート。
111~115が割り振られてる初出場の亀戸高校の1人目からスタートしていって、
多摩女で一巡。次に亀戸高校の2人目がスタートって感じで、多摩女の5人目が最終スタート。

大体総合のエースを最後に持ってくるので、
うちのスタートは、しおり、みほり、私、リューヌちゃん、清水さんの順。

沿道にはたくさんの人が詰めかけている。
自転車人気が増してるのもあって、去年よりさらに増えてるかも。

一応この河川敷に一番近い高校はうちなんだけど、
全然ホームって感じじゃない。うちの高校の制服全く見ないよ!
やっぱりうちではマイナースポーツ、地味な部活の1つでしかないから。

スターターに合わせて沿道の観客も
「5!4!3!2!1!GO!」
とカウントダウンしてくれる。
この盛り上がりが最高、気持ちよさそうに亀戸高校の1人目がスタートしていった。

次の選手がスタートする間隔は1分。
あと10分でしおりがスタート、私もあと30分ぐらい。

ウォーミングアップは人それぞれの調整があるけど、
狙ってる選手は意外と思いっきり汗かく。
スタートまで1時間近くある清水さんは既にローラー台の上、真剣な表情で回してる。

私やしおりは明日思いっきり力を出さなきゃいけないので、
少しでも疲労を抑えるよう少し温める程度。
TT本番も100%までは追い込まない。
それでも手を抜きすぎず格好はつけるのが、暗黙のマナーだけど。

さすがに1人目の選手はどこの高校も総合優勝を狙う選手ではなさそうで、
かなり肉体も精神も追い込んだ状態でスタート台に立つ選手はいない。
去年しおりはテンションが上がりすぎて、スタートと共にかっ飛んでいった。
で、すげー失速してた。

「5!4!3!2!1!GO!」

落ち着いてしおりはスタートしていった。
みほり、リューヌちゃん、清水さんはアップ中。あきねは10km地点にいるので、
私と先生が見届けた。
ゴールは私のスタート後だから見れない。10kmで折り返すから途中ですれ違うのが楽しみ。
「先生、後はよろしく!」
「おうよ!」
さて、私もアップしにいく。

・・・

私が今日のステージ優勝を狙ってないってのもあるけど、
何より去年の経験って大きいなって感じる。
勝手が分かってるので全く慌てることなく、私の一個前、豊女の和田さんのスタートと同時に待機場所に来た。
待機というか、もうスタート準備。

今日は往路が向かい風、復路が追い風。風はほとんどなく、雨もここ最近降ってないので、
路面コンディションOK。

「5!」
去年の都大会は本当に不甲斐ない結果だった。

「4!」
だから1年頑張れた。

「3!」
今思うとだけど、3月までの練習は、質としては足りなかった部分もあると思う。

「2!」
でも、その日その瞬間の私は一生懸命やったつもりだから。少しでもその価値を見出したい。

「1!」
自転車ロードレースのステージレースは旅に例えられる。

「GO!」
6日間の旅が始まる!
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