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フリマアプリで服買ったら出品者まで届いちゃった話
しおりを挟む「今日も新しいの出てる」
一服休憩、ネクタイを少し緩め、ついついスマホでフリマアプリを開いてしまう。
「これ良いな」
ポチ
大体、衣類を買う人は決まっている。サイズ感の心配もないし、なんせ好みが合うのでちょっとしたやり取りも楽しいし安心できる。フォローもしているので、新しいのが出品されたら通知がきてついついまたポイントで買ってしまうのだ。
『grunmmさん!いつもお世話になっております!今回も購入させて頂きました。届くの楽しみに待ってます!』
『こちらこそいつもありがとうございます。そめやんさんに着て頂けて嬉しいです。発送までもうしばらくお待ちくださいね。』
電子タバコから癒しを吸い込むと、思いっきり疲労を吐き出した。すると、甘めの煙を掻き分け後輩の宮下が現れた。
「まーたフリマアプリっすかよく飽きないっすね」
「もう癖になってんだよ」
2年後輩の宮下は、なんだかんだ憎めない奴で、よく企画書のアドバイスをさせられたり、残業を手伝わされたり、飯を集られたりする。まあつまる所、良いように使われているのだ。デカイ身長と短く整えられたアッシュブラックの髪がさながら野球部を思わせるが、学生時代は弓道部だったらしい。
「先輩、昨日のお礼です♡」
「おお!パクさんから!?ひゃほー!」
「本当に好きですよねー」
「お前は本当に幸せものだぞー絶対パクさんと別れるなよーそして俺に老後までこれを届け続けろ」
「はいはい」
そして、今日とてご機嫌で良いように使われるのだ。
今日は珍しく定時に上がれた。明日の朝一、会議で使う書類もデスクに用意してきた。内心ルンルンで帰路へ着く。今日は手の込んだの作れるなー。ビーフシチューかなーパエリアもありだなー。頼んでた本ももう届いてる筈だし。久しぶりにプロジェクターでも出すかな。宮下が韓国のドラマだか映画だかが凄いって言ってたしな。
因みに、宮下の彼女は総務課の韓国籍の女性だ。偶に宮下経由で貰うキムチがまじ美味い。秀人は彼女をキムチ師匠と呼んでいた。誰にも言えないが内心、社内で一番尊敬している。そのくらい美味い。それもあって宮下を可愛がっているのだ。ゆくゆくは取り入って師匠にキムチ漬けを伝授して貰う算段だ。
そんな事を考えてたらチゲ鍋も食いたくなってきたなー。今日はパクさんのキムチもあるし。という事はマッコリも必要じゃん。秀人は3歩下がってスーパーへ駆け込んだ。ついでに大量の醤を買い、カクテキにオイキムチ、イカジャン。チャンジャまで買ってしまった。秀人は絶対に料理の元を使わない。カレーも鍋も全て、いちから自身で作らないと気が済まない。これはポリシーであり、秀人のプライドでもある。
秀人は超インドア人間だった。
ついでの買い物の筈が、給料日も相まってついつい買いすぎてしまった。両手に大量の買い物袋を持ち、さながら夜逃げのような大荷物になってしまう。最近、運動をしていないせいかダイレクトで腰にくる。よろよろとエレベーターに乗り込み、やっとの思いで部屋まで辿り着けた。腕が地味に痙攣して袋を掛けていた箇所が鞭打ちにあったかのように赤い線になっている。自身のへぼ筋肉に失笑しながら靴下を脱ぎ、洗濯機へ放り込んだ。筋トレしなければと思うが、袋の中のキムチを取り出せばそんな思考は秒速で消え失せてしまう。取り敢えず、ビールだ!!ルンルンで全てのキムチを小皿によそり、1人キムチパーティが始まった。
カクテキを口に放り、プロジェクターを取り出す。取り出すと言っても、カーテンをピンと貼って、スマホ大の機械のボタンを押すだけなんだが、サブスク画面を開きドラマを流し出す。なんか、凄く楽しくなってきてしまった。土鍋をシンク下から取り出し、ザクザクと野菜を突っ込んでゆく。そして、手を包丁へ持ってゆく、と見せかけてビールをギュビッと呑む。やばい本当に楽しくなってきちゃった。リモコンで音量を上げる、と見せかけてまたビールを呑む。えっへへちょー楽しい。袋から取り出した2Lのマッコリを机に置くと鍋が縦に揺れ、秀人の笑い声がケラケラと部屋に響く。後は待つのみ!それが一番辛いのだが、鍋ができるのを膝を上下に揺らしながら堪えるようにじっと待った。
「君!!絶対幸せになるべきだよ!!うわぁーーん!!」
窓に向い、泣き叫びながらカーテンの向こうの彼女へ訴えかける。数分後、完全に出来上がった秀人がそこに居た。
ピンポーーン
「ん?はーい」
『宅急便でーす』
「ご苦労さまれーす」
秀人は後にgrunmmから届く衣類は基本ポスト投函だという事に気付く。そもそも今日の数時間後で届くのは早すぎる。また、モニターをちゃんと見ていなかった事に激しく後悔する事となるが最早、後の祭りだ。
ガチャ
「染谷さん?」
「···あれ?」
「やっと会えたぁ」
「え?」
ガチャン
勢い良く腕を引かれ、扉が閉められる。瞬く間に鍵もチェーンも掛けられた。
「え?···宅急便は?···てゆうか君、誰?迷子?」
腕を掴んでいる男は紺色のブレザーを着ており、秀人より頭一つ小さい。クリクリとした大きな目が上目遣いで秀人を見つめる。栗色の髪も相まってその様相は小動物のような可愛らしさを感じさせた。秀人の脳内は?で埋め尽くされる。本物に誰??
「かっ可愛い···」
「やだなーほらこれ。染谷さんが買ってくれたやつだよ?」
小包を顔まで上げ、秀人に見せつける。そこにはいつも届いていた茶封筒があった。
「へ?」
「ほらgrunmmだよ。」
「え?フリマアプリ?のだよね?」
「買ってくれたTシャツ届に来たよ」
「えーと服?でも買ったの今日だよ?···それになんで俺の家···?」
「来ちゃった」
「え!?可笑しい?可笑しい!何で!?」
「だって染谷さん匿名発送希望してないし」
「え!?」
「え!?」
顔を真っ赤にし目を大きく見開く秀人に対し、その動作を真似るようにわざとらしく驚いた表情を見せるgrunmm。なんだかテレビのご本人登場や好きな芸能人がいきなり目の前に現れたような、不思議な気分が秀人を襲った。
「grunmmってこんな可愛い子なの?てっきり古着ダンディを想像してたわ俺」
「あれは殆ど父さんの服だからね」
「へーー。え?帰んないの?」
「帰って欲しいの?」
「いや、制服着た学生??がこんな時間に酔っ払ったオヤジと密室で居るのはまずいでしょー」
「なんで?襲われるって事?」
「おっそんな事しないわいっ!」
「そうだよね秀人さんがそんな事する訳ないよね。」
おや?どんどん物理的にも心理的にも距離が近くなってやいないかい?おや?おやおや?酔いが回ってきたのか視界がチカチカしだした秀人は、深い瞬きを数度繰り返す。そして目を開く度、grunmmとの距離が近づいている事に気が付いた。その距離僅か15cm。
「そうそう!もっちのろんだぜっ!」
「そうだよね襲うのは秀人さんじゃなくて俺だしね」
「そうそう!襲うのは俺じゃな···へ?」
ドゴン
脚を掛けられ、秀人は床へ勢い良く倒れ込む。首元からしゅるしゅるとネクタイを外すと秀人の手首を縛り上げた。
カツアゲ!?これが噂に聞くオヤジ狩りか!?昨日、給料日だったから多めに降ろしちゃったよー!?ほんの数秒の出来事に秀人の脳内はパニックになっていた。
「grunmmくん!grunmmくんっ!俺の会社、給料日25日だから今すっからかんだよ!」
地味な嘘をつく秀人。死にものぐるいで迫真の演技をしてみせる。学芸会、草Bの底力ここに現れり。
「ん?」
「財布も全然金入ってないよ!!」
「もしかして金取られると思ってんの?俺の事、カツアゲかなんかだと思ってる?」
「だってさっき襲うって」
「ああなるほどね」
grunmmは一人で何かに納得したのか、怯えた表情の秀人をあやすように優しく頬を撫で上げ、逃げ道を奪うように膝に跨る。
「違うの?」
「襲うって強姦って意味だよ?」
「ごっなっなんですとっ!?」
全く想像していなかった言葉に派手に吃ってしまった。自身が性の対処になった経験自体がなく恋愛自体に縁遠かった為、その言葉自体、使う人間を初めて見た秀人は天然記念物でも見るかのようにgrunmmを見つめる。しかし、目の前の可愛らしい風貌からは全く想像できない獲物を狙うかのようなギラギラとした雄の目に一瞬思考が晴れ、言葉の意味を数秒探し一気に顔に焦りの色が現れる。クルクルと変わる秀人の表情をまるで、捕食動物を愛るように見つめるgrunmm。それとは対照的に焦る秀人は、逃げる時間を稼ごうと威勢よく話しかけまくった。
「grunmm!名前教えてよ!」
「中條悟」
「歳は?高校は?」
「17歳。明誠学院」
「めっちゃ頭良いじゃん!!つうか、ひと回り以上違うのかよ。まずいよー誕生日は?血液型は?」
「10/23。AB型」
「23日って明日じゃん!すげーおめでとー」
「ありがとう。でも明日もずっと一緒だよ?どうせだったら明日言ってよ」
「いや!いやいやいや!幾ら若いからって34歳のおっさんには勃たないだろ。ちょっと落ち着きなさい若者よ!あっちにチゲ鍋もあるぞ。食って帰るか?」
「もう諦めろよ」
ゴトッ
後ろポケットからスマホが滑り落ちた。手探りで電話を掛けようとしていた事がバレてしまい、自身の背に隠すも、すかさず奪い取られ、冷や汗が止まらない。視線を落とす悟の冷たい表情に血の気が一気に引いてゆく。
「この1番履歴多い宮下って誰?恋人?」
「ちっちがう!違うただの後輩だよ」
「へー後輩。でも仲良しなんでしょ?」
「仲良し···?コイツにはキムチの加護があるからなー可愛いがってるぞ。俺は後輩思いの良い先輩なんだぞ。悪い事も何もしてないし、何でこんな事になってるんだもーなんでー」
「可愛いがってるんだー」
「だからキムチの加護がっ!!」
言葉を遮るように悟の舌が秀人の口内を犯し、すかさず0距離になる。本能で逃げようとした舌は噛み付かれ容易く絡め取られた。舌の裏までも執拗に舐め上げられると、酸欠になったかのように思考が鈍っていく。ぐちゃぐちゃと卑猥な水音が口の間から漏れ、苦しさでもがくように息をできる場所を探した。そんな秀人を弄ぶように悟は自身の唾液を流し続ける。その度にヒクヒクと喉の奥が鳴った。
「···············っんぅ······」
悟は餓鬼である自身が、10以上年上である筈の大の大人に、全く余裕の無い表情をさせている事がなんとも優越で同時に、嫉妬で盛ってしまった事がなんとも滑稽に思えた。複雑な感情に笑いを溢しながら尚も執拗に秀人を犯し続ける。しかし、甘さと苦しさから生理的な涙を流しもがく秀人に渋々唇を離した。
「酒くさ。鼻で息しないと秀人さん、俺も可愛がってくれるんでしょ?」
「···っだから!悟くんにはキムチの加護は無いだろうが!」
「加護か···じゃあ慈愛の加護で良いよね?」
「違う!違うッ!」
秀人の抵抗も虚しく言葉をも奪い去るように強引に再び唇をこじ開けられた。生温かい唾液が繰り返し送り込まれ、カプカプと溺れかける。すかさず舌を強引に擦り合わされ逃げども逃げどもすぐに追い付かれてしまい、押し返そうとするも全く力が入らない。悟の肩を掴んだ両手は小刻みに震え、ほんのり桃色を帯びていた。
「·········やめ···っ」
「やめてって言って全然力入ってないじゃん?フリでしょ?」
「···違っ酔ってるからじゃーっんん」
冷たい手がシャツをすり抜け脇腹まで潜り込む。堪らず、ピクリと全身が踊った。腰が揺れる自身に戸惑いつつ、細やかな抵抗を続けて見せる。
「ははっ耳まで真っ赤だねぇ可愛いねぇ」
「可愛いのは、悟くんでしょーがっ!早くおじさんを解放しなさいっ」
「さっきから、可愛い可愛い言ってくるけど地味に傷付いてるんだからね?格好良いって言ってよ」
「格好良いから解放しなさいっ」
「心こもってないからヤダ」
ワイシャツに手がかかり、ゆっくりボタンが外されてゆく。その手は迷う事なく胸の尖りへ向かい、鳥肌が立ったそこを中心を避けるようにクルクルと指の腹で弄ぶ。堪らず、肩を竦めると上からクスッと笑い声が降ってきた。その光景は余りにも背徳的で秀人は強い毒を頭がら被ったような気分になる。
「なにゃーやめてよー」
「ははっにゃーだって。秀人さんぐずぐずになると猫になっちゃうのぉ?ちょーかわいいねぇ」
「なっ何で大っきくなってんのー!んー離してよー」
腹部に押し付けられたそれは、秀人の陰茎とは明らかに異なり、切羽詰まった状況が布越しでも伝わってきた。
「何で俺が今日来ちゃったか分かる?」
悟の口から熱の篭った声が漏れ、露わになった肌がゾワッと波打つ。秀人の肌にかかる荒い息が静かに熱を伝染させてゆく。
「秀人さん今日、初めて俺の服を買ってくれたんだよぉ。父さんのじゃなくて、これ。もう、嬉しくってさぁ着てる秀人さん直接観たいと思っちゃうじゃん?」
また墓穴を掘りそうなので黙ってブンブンと思い切り首を横に振る秀人に対し、悟は見透かすように言葉を繋げる。
「なんなら俺が着せたいとも思っちゃうじゃん?」
「······っゃ··」
「だから、来ちゃった」
ベルトに手がかかり下着ごと一気に膝下まで脱がされる。床の冷たさが臀部から伝わるも、それに反して身体は発熱は下がる事なく全身を赤く染め上げる。
「···やめてよ悟くん」
酒が入っているせいで、夢と現実の区別もままならないまま、もじもじと身体をくねらせ、秀人はせめてもの抵抗に自身の中心を隠した。
カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ
「あぁ悟くんだってぇ可愛いぃ本当可愛い。全然隠せてないよぉ?秀人さんのスマホ、可愛い秀人さんでいっぱいにしてあげるねぇ」
カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ
「やだーー」
「俺のアドレスにも送っちゃったからね?後でホーム画面にしなくちゃ」
「·····ぃゃ···」
一瞬脅しとも取れたが悟の目を見ると、どうやら純粋に言っているらしい。それが逆に狂気的で心臓がブルリと震えた。
「秀人さん俺の服着てみせて?」
秀人の返答を待たず、自身で包んだ筈の包装紙を悟は乱雑に破り捨てた。そこには確かに昼頃購入したTシャツがあり、丁寧にアイロンまでかけられている。全てが暴かれているようで堪らず逃げようとするが、足元のズボンがもつれ数歩進んだところで転んでしまう。
「っんぐ」
「ほーら怪我しちゃうよー?」
縛られた両手を懸命に伸ばし、這うようにしてズルズルと逃げる。手の平と肘と膝が圧で真紅に染まり、羞恥と自身の滑稽さにぽろぽろと涙が零れた。そんな秀人の心理とは裏腹に、悟の加虐心は酷くくすぐられる。
「逃げちゃうのー可愛いねぇ」
カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ
「んー写真やめてよー」
「泣いちゃったの?えー無理可愛いぃ」
写真を連写で撮り続ける悟の顔は高揚し、話す声には興奮が混じる。温度を上げる感情に、僅かに廊下の冷えた空気が揺れた。
「秀人さんどこ行きたいの?お部屋?」
「んー」
あと少しでリビングに着きそうだった秀人を軽々と横抱きで持ち上げ、所謂お姫様抱っこで部屋の中へ入る。
「ちょっ重いよ悟くん下ろしてよー」
「いや、秀人さん俺より全然デカイのに軽すぎるよ。ちゃんと食ってる?ってか何これ良い匂い。本当にチゲ鍋食ってたんだ」
抵抗をやめた秀人が、ゆっくりとソファーに下ろされた。息つく間もなく、上に覆い被さられると逃げられぬよう、腿を思い切り悟の脚で締め上げられる。手首の拘束が静かに外され、腕に絡まったシャツをあっという間に剥ぎ取られた。間髪入れず、悟が握りしめていたTシャツを頭から被らされ、乱暴な扱いな筈なのに嗅いだ事のある柔軟剤の匂いが鼻を掠めると、妙な安心感を抱いてしまう。
「いつもの匂いだー」
「秀人さん、本当墓穴掘るよね」
「んーパンツ履かせてよー」
カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ
「はぁぁ俺の服着てぐずってる秀人さん。ずぅぅはぁぁ秀人さんから俺の匂いがする。ちょっと一回抜くわ」
悟は秀人の耳介に顔を埋め、匂いを全て奪い去るように深い呼吸を始める。
「んにゃーくすぐったいよーさとしくん」
「そうだね。にゃーだね。お利口さん、もうちょっと我慢できるねー」
秀人の耳に舌を這わせ、悟は両手で自身を扱き始める。既に溢れた先走りがぐぷぐぷと音を立て悟のスラックスに白いシミを飛ばした。悟の荒い息に苦しさが混じりだす。その興奮が伝染するかのように秀人の肌を逆立たせ、半身を刺激した。粘度の高い粘液がでろでろと滴り落ち、秀人の陰茎をしならせる。その光景は二人を容易に乱していった。
「ああイクわー秀人さん秀人さん」
悟の舌が耳から頬を伝い難なく唇へと辿り着く。舌が這った跡が艶かしくテカり、悶え逃げる秀人の唇をこじ開けた。追撃するように、生温かい舌が歯茎を執拗に舐め上げると、瞬く間に熱の篭った息が送り込まれ、情に溺れた秀人は無意識に舌を絡め返していた。その熱は、秀人を自身が性の対象になっている事を嫌でも実感させ、酒とは違う妙な酔いを甘く誘った。
「んんっーー」
「気持ち良い?」
「さと、しくんマセすぎ、だよっ」
「勉強熱心って言ってよ。全部、秀人さんの為だよ」
「っんんにゃー」
熱が込められた視線にビリビリと身体が痺れる。それを既に心地良いと感じてしまっている秀人を見透かすように悟はTシャツを荒々しくたくし上げ、辛うじて隠れていた恥部を露わにした。震える手で悟の手首を掴むも、その行為に説得力は無く、秀人より張りがありキメの細かい肌が優しく秀人を扱き上げた。片方では鈴口を握り込まれ、カリ首を指の腹でクリクリとなぞられる。容赦の無い刺激が秀人どろどろと溶かしていった。
「っや、そこ触っちゃだめ、んにゃー」
「何で?気持ち良いから鳴いてるんでしょ?もっと気持ち良くなったらどうなっちゃうの?」
「んんっわかん、ないよぉ」
「そうだねそうだよね、分かんないねぇ。俺のもシゴいて?秀人さん一緒に訳分かんなくなっちゃお?」
「んんっ·····ぁっぃぃ···」
秀人より、ひと回り小さい手に導かれ握り締めたそれは、可愛らしい顔立ちからは想像出来ないほど、雄を感じさせるものだった。手から伝わる熱い脈動に、秀人は堪らず下唇を噛み締める。広角から漏れる息には自然と高揚と期待が込められ、年甲斐もなく盛っている自身を羞恥させた。
「あぁ可愛い何でそんな可愛いの?俺の服ぐずぐずじゃん」
「んー、んんっ、ごめ、んなさいっ」
「はあぁ、やっぱ酒呑んでると勃たないか」
テレビの音で隠すように「まあ関係ないけど」悟はぼそっと呟くと、テーブルの上に置いてある3分の2空になったマッコリを手に取り、思い切り振り上げる。
「マッコリってエロいよねぇ」
満面の笑みで秀人の緩く起ち上がった陰茎にマッコリをぶっかけた。
「ああああっ冷たいっ」
「はぁ秀人さん漏らしたみたい。舐めて良い?良いよね」
「え?やだっ待って待って!汚いから!それにおさっけああっ······」
有無を言わさず股をぐいっと開かれると、驚く間もなく桃色に染まったヘソに溜まったマッコリを吸い上げられ、水分の多い舌が腹部を這う。安い抵抗も虚しくそれは、なんの障害もなく秀人の陰茎の裏筋まで届いてしまう。溝を丹念に舐め上げられ、陰嚢をふにふにと揉み込まれると過分な快感が秀人を襲った。
「いっばい、ないでいいよ」
「やだっそこっで、喋らな、いでよー、っんん」
秀人を咥え込みながら話す悟に、仰せのない感情が募り全身の熱が一気に上がる。柔らかい栗色の髪をわしゃわしゃと撫でると、微かに笑い声が漏れてきた。それは秀人の中心を擽り、更なる悶えをけしかける。
「はぁぁすっげ。えっろ、俺もう秀人さん以外だと勃たないかも」
カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ
「っん、んやーあ」
「気持ちい?脚プルプルしてるよ?」
「んんー」
「思うように勃たないと辛いねぇ」
「はぁ、まっ、て悟くん!そんなところ舐めるところじゃないよ」
「でも、こっちじゃちゃんと気持ち良くなれないでしょ?はぁぁ良い匂い。秀人の匂いだぁ」
秀人の中心に顔を埋めると、悟は自身の鼻を既に赤く染まり始めた後孔に、強く擦り付ける。下腹部から深い呼吸音が聞こえ、羞恥のあまりもがくも、後孔のシワの間を這うように悟の舌が弄び、秀人の肩息は呆気なく喘ぎ声に変わった。部屋の中心からは、ぬちゃぬちゃと粘度の高い音が響くが、垂れ流されるドラマによって容易に上書きされる。初めての刺激を知った後孔が、くにくにと焦らされるように小さな舌で押し広げられ、その度に催促するようにヒクヒクと振戦を起こした。
「秀人さんの声、もっと聞きたいからテレビ消しちゃうよ」
「やだやだ···っあ···なんで指入れてんのぉ」
「見て見て秀人さん。俺の指もう食っちゃってるよ?」
見せ付けるように腰を持ち上げられ、すかさず質量のあるものがグリグリと体内に潜り込もうとしてくる。初めての硬い異物の投入に、秀人は静止を懇願するように頭をブンブンと振り、乱れた呼吸を整えた。しかし、構うことなく悟の指は出して抜いてと単調な動きを繰り返し、何かを探すように、ぐりぐりと粘膜を撫で上げる。
「ああっ、ぬいてよっ悟くん」
「はぁぁ。秀人さんの中キュンキュンいってる」
「なんで増えんの、ああっ」
「だって増やしたほうが秀人さんの気持ちいとこ探しやすいでしょ?」
粘液の肉壁を微塵たりとも逃さぬように悟は、何度も何度も繰り返し撫で上げる。感じた事のない迫ってくるような快感が秀人の腹部に段々と凝縮され、それもある一点を掠めた瞬間大きな快楽へと変わった。その瞬間、秀人の身体は大きく跳ね上がり、本能が呼吸を放棄した。
「っん、なぁ······っかは」
「みーつけたぁ」
無邪気に笑う少年と部屋にぬちゃぬちゃと嫌らしく響く水音がなんとも背徳的で、秀人の思考を馬鹿にする。体内の異物は一点のみをぬちぬちと執拗に攻撃し、次第にピリピリと痺れるような感覚が秀人の全身に駆け巡る。
「あぁ秀人さんの中、温かい幸せ。これ入れたらどうなっちゃうんだろ俺」
「あぁ···だめっだめっ、んあぁ」
「もう3本も入っちゃってるよ」
「だめっ一緒に触っちゃやだよぉ、んん、あっ···ああ」
それはゾクゾクと全身を這うような刺激となり、体感した事のない恐怖とも似た感情が買ったばかりのTシャツを汚した。
「なんっ·····か、ど····しょ、さとっ·········」
「んん?どうしたの?」
「怖いぃ······こわ、ぃ····悟、さっ、し···くぅん···こわ、いぃ············」
「よしよし。俺の事見て秀人さん?」
根元まで収まった指は、まるで自我があるように体内を弄び、片方では根元を痛いくらいに扱き上げられ、鈴口からとぷとぷと溢れる子種は小さな口に収まってゆく。全く無駄のない行為に薄らぐ意識の中、秀人は情けなくも感心してしまった。流れる涙が首をゆっくりと伝い秀人を擽る。悶えに震え、赤く染まった手は一心不乱に柔らかい髪を撫で上げた。
「ごっじみで?」
「ふあぁ、お腹、おさ······ないでぇ······」
悟に応えとうと、強く瞑った瞳を恐々開く。視線を下げると歪んだ視界に、盛った小動物を捉えた。頬を赤く染めギラリと光る悟の目が、容易く秀人を捕まえる。視線が深く絡むと、喉の奥が干上がったように酷く渇き、秀人の身体全体が更なる淫楽を欲した。
「あぁ、さと、しく···んッ」
込み上げてくる羞恥と快楽に何故か縋るように少年の名を呼んでしまう。秀人を咥えた悟の口端からはどくどくと子種がこぼれ落ち、それを一滴も逃さぬよう、悟は親指の腹で全て掬い上げる。既に白が残り色の薄くなった自身の舌へでろりと乗せると、間髪入れず喰らうかのように、秀人と口を重ねた。苦味で眉を寄せ顔を歪める秀人を、愛しさが募るように悟は目尻を下げ見つめ続ける。
「マッコリの味する?」
「ふぁ、んにゃー、さ······とし、くぅん······」
桃色が見え隠れする銀糸が二人を艶かしく繋ぐ。悟の腕の中には息も絶え絶えに、物欲しそうに舌をしまい忘れた秀人がいた。ねだっているようにも見えるそれに当然、青い悟がその先の欲を抗える術はなく乱れる息の中、一度射精した筈の陰茎は血管が深く浮かび上がり、今にも破裂しそうなくらい勢い良く返り反っていた。秀人の小刻みに震える陰茎に悟は自身を乱暴に擦り上げる。振動が伝わる度、余震のように震え上がり、秀人の本能がその瞬間を今か今かと待った。
「あぁ···っんー、」
「はあぁ、挿れるから」
「ああぁ、さと···しく、っんん!」
「ああ、やっべー」
「ふぁ、っああ·········」
潤んだ後孔に導かれるまま、悟の先端が当てがわれると、待ちきれないと言わんばかりにヒクヒクと秀人の下半身が疼いた。捉えた先端を逃さぬよう自身にぐりぐりと押し付ける。互いが熱い圧で満たされると、連鎖するように二人の欲が少しずつ満たされ情の篭った声が漏れる。ぐぢぐぢと粘膜の壁がこじ開けられ、圧倒的な質量が容易に秀人をねじ伏せた。しかしそこには優しさしかなく、ピクピクと生温かく脈打つそれは、まるで甘い声を聞かせろと催促しているようだった。
「っあ、ああ···ん···ん···」
焦らすように、ゆっくりと突き進むそれは奥を犯す事はしなかった。秀人は痛みを感じる間もなくゴリゴリと良い場所を執拗に刺激され、波のように襲ってくる快楽が、体内を容易く弄んだ。自然とくねる腰を小さな手で押さえつけられ、食い込んだ指が腰骨を刺激する。押し寄せる快楽を噛み締めるように悟に視線を送ると、それを狙っていたかのように突然、奥深くまで勢い良く叩き付けられ悲鳴にも似た声が秀人から漏れた。味わう間もなく突如始まった打ち付けるような律動に、涙がぽろりと溢れるも、そこにマイナスの感情は無く、秀人は瞳を閉じる事も忘れ、ただ目の前の可愛い獣を捉え続ける。
「秀人さんの鳴き声聞かせて?」
「っさあ、とぉ·········んにゃ···んっ···」
ぐちゅぐちゅと体内で混ざり合った粘液が空気を含み、繋がった隙間から押し出されるようにして下品な音を立て漏れ出す。腰を休める事なく降ってくる問いに当然として解答権は無く、悟は人差し指でそれをこそぎ取り、そっと秀人の口内を犯した。柔らかい苦味と誘淫臭に秀人は堪らず顔が歪め、潤んだ瞳を悟に向ける。
「見て?メレンゲみたい」
「んやぁ、ぁあ」
「甘い?」
「···ん、んゃ、ぁああ」
広角を白く汚した秀人を愛おしそうに見つめ、汗ばんだ髪を撫で上げる。クスりと笑う悟の表情とは裏腹に肉同士が打ち合う音が次第に大きく、間隔が遅くなる。その淫靡な音は容易に悟の笑い声を掻き消した。いつの間にか秀人の視界は色が薄れ、パチパチと弾けてゆくような感覚に襲われる。まだ浅い最奥を広げるように抉られると、叫声にも似た声が下腹部から絞り出された。
「さぁ、ぁぁっ········あっ、ぁっ·········」
「可愛いぃ」
「······さあ、と、くぅぅ····っんもっ、と·····んんっ··········」
悟は愛おしそうに呟くと、体内で大きく膨らんだ陰茎をパンパンッと突き続け、居場所を求めた粘液が押し出されるように秀人の先端から溢れ出した。
「はっ、はぁうぅぅ·········うにゃ、はうぅ······」
「初めてなのにそんな感じちゃって大丈夫?」
「いっ、にゃあぁ···っあ··さぁ、しくうぅ·····っんせぇ········ぃぃい」
「ははっそうだね。全部俺のせい」
「っんん、あぁふぅ······っ···」
「でも、実はね」クスクスと楽しそうに笑う小さな獣。しかし、秀人から問いかけが投げかけられる事は無かった。
「あぁぁ·····!さぁあ···ぁあ······っ、とぉぉ······ッ、あぁ、ッあああぁ······!!」
「まだ、全部入ってないんだ」
「ふにゃ····ッ······はあっ·······ッ···ふうぅッ!」
体重の乗った一突が、一気に道をこじ開ける。それは、グチュりと淫らな音を立て秀人を痛みの先へ突き落とした。叩き付けるような肉襞の摩擦が、半身の痙攣を誘う。言うことの聞かなくなった身体がビクビクと絶えず収縮を繰り返した。釣られたように体内の欲棒もビクンッビクンッと大きな波打ちを見せる。すると上から絞り出されたような、どこか切なさを感じる懇願が降ってきた。
「秀人さん俺の猫になってよ」
「·······好きいぃ、すっ、ふぅぅ、きぃ·····ぃぃいッ!」
「俺だけの猫になって」
悟の頬に愛撫するように触れると、手の平に触れるだけの口付けが帰ってくる。繋がっているのにどこか離れた感覚が、秀人の鼻の奥をツンとさせた。切なく視線が絡むと、突如として切羽詰まった余裕の無いストレートな突き上げに変わる。その勢いからは年相応の熱を感じ、辛うじて残っていた秀人の体力を根こそぎ持っていかれるかのような推進力を感じた。
「····秀人さんっ」
「········イぐぅぅ、イッ·······さ、とし·····ぅ····ふうにゃ、ずっ、とぉぉ·····はぁき、もちッ······いぃ」
放精へと向かう荒々しい律動を続く、力なく悟の首に絡めていた腕がだらりと崩れ落ち、乱れた呼吸の中で悟がそれを受け止める。腕を思い切り掴まれ、身体を引き寄せられると距離を埋めるように奥の奥まで貫かれ、全身がぶつかり合い、汗と音とが混ざり合う。その瞬間、秀人の体内に途方もない熱が溢れ出し、目の前が真っ白になった。はくはくと短い呼吸で空気を求めるも、すぐに口は塞がれ、代わりに熱い呼吸が送り込まれる。意識が薄れる中、切望にもとれる呟きがふわりと秀人の耳を掠めた。
「秀人さん、俺だけにして」
カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ
微かな意識の中、鳴り止む気配の無い機械音に呼ばれ、薄く目蓋を開く。カーテンの隙間からは絵具で塗りたくったような綺麗な青が見えた。
「おはよう、秀人さん」
目の前には、相変わらずスマホを握りこちらを覗く悟の姿があった。
「······おはよう···悟くん?」
「ははっ何で疑問形なの?」
「だって···あっあの···お誕生日おめでとう」
「ありがとう。あぁ凄く嬉しい」
「運んでくれてありがとう、腕折れてない?」
「何言ってんの?ほらっ」
いつの間にかベッドへと運ばれていた秀人。肌けた毛布を悟にふわりとかけられ、頭を優しく撫でられる。ひとつひとつの仕草が余りにも紳士的で年甲斐も無く、頬が熱くなってしまった。視線が絡むと触れるだけのキスが降ってくる。啄むようなそれに、次第に互いから笑いを含んだ息が合わさった。
「っ!!てか今何時!?」
「7:26。まだ大丈夫だよ」
「はぁよかったー。今コーヒー入れるから···っ痛」
ベッドから立ち上がろうとした瞬間、一歩も進めず膝から崩れ落ちた。ギシギシと軋む半身に視線を落とすと、赤い痣が無数に散りばめられ嫌でも昨晩の自身の乱れを思い出す。わなわなと周りにある生地という生地を託し寄せた。布団を剥ぎ取られた悟は素知らぬ顔で立ち上がり、弾んだ足取りで寝室から出てゆく。
「俺が入れるよ。勝手にいじっちゃったけどお風呂も沸いてるから」
「·········あっありがとう」
余りの手際の良さに呆気に取られていると、去って行った筈のドアの隙間から悟がひょっこり顔を覗かせ呟いた。
「一人で行けなかったらお姫様抱っこで運んであげようか」
「···っだだだいじょうぶです」
廊下からクスクスと笑い声が聞こえる。鈍い痛みに漏れる声を噛み殺し、おずおずと立ち上がると椅子にかかったブランケットを羽織り、浴室へと向かった。
ザブーーン
お湯が一気に溢れ出し、タライが床を泳ぐ。深めの息をひとつ吐くと、なんだか夢でもみているような気分になった。髪を掻き分け、水が滴る。水面の揺れる自身を見つめても、昨日となんら変わらない冴えない姿がこちらを見つめ返していた。手をチャプチャプと蓋に付いた水滴で遊ばせると水捌けの悪い肌が嫌でも目に入る。身体が水分を欲し、勢い良く立ち上がった。
「あっやっぱり全然痛いわ」
現実逃避はやめました。リビングへ向かうと、昨夜の惨状は嘘のように消え去り、穏やかな空気が流れていた。出勤前だという事を忘れてしまいそうだ。テーブルにはほかほかの朝食が並べられている。美味しそうなスクランブルエッグに思わず腹の虫が鳴った。湯気の匂いに誘われるがままテーブルへと、へたり込む。お腹を摩りながら、悟が座るのを今か今かと待った。催促するように視線を送るとすぐさま微笑みが返ってくる。なんともむず痒く、こそばゆい。
「「いただきまーす」」
口の中に卵の優しい甘みがふわりと広がる。広角に反比例するかのように目尻が下がり、甘さがじんわりと胸に染み込んでくる。この甘味をどうしたら良いだろうか?
「どうしよう?」
「ん?」
「悟くんは、俺とどうにかなりたい?」
「なる」
先程の笑顔とは打って変わって、鋭く真剣な眼差しが返され一瞬怯んでしまう。しかし、悟の余りのレスの速さに尊敬にも似た感情が湧いた。
「なる、そうかーなるかー分かんなかったと思うけど。俺、悟くんの倍の歳なんだよ。34歳。もしかしたら君のお父さんと同い年くらいじゃない?」
なんの意味もない牽制をしてみる。そもそも悪意は無いみたいだが写真まで撮られてしまっているし、簡単にはどうこう出来ない事は分かりきっている。そもそも俺は·····
「染谷秀人、34歳。1988年4月21日生まれ、牡牛座。B型。岐阜県飛騨市出身。現住所東京都渋谷区。父、母、妹、弟、祖母、黒柴サン太の6人1匹家族。ジェリア株式会社勤務。京成大卒。小から高校までエスカレーターで私立明和学園に通う。初恋は6歳の時同じクラスのちひ「ちょっ!ちょっ!ちょっ!ストップ!!ストップ!!ストップッ!!」
突然、呪文のように唱えられた言葉にあんぐりと口を開け、聞き入っていたら、初恋というアッパーで秀人は危うくスクランブルエッグを溢しそうになった。
「なっななな」
「分かんないだろって言ったから」
「なっなんでなんで」
「逆に分からない事がこれ以上あるのか教えて欲しいよ」
「ななな」
「プロジェクターの鍵付きファイルにはNTR系のA「うわああああああああああああああああ」
「実際、家の中入ってみないと分からないものだよねやっぱり」
微笑みがさながら小悪魔を彷彿とさせる。悪意がない分厄介だと秀人は小さく息を吐く。
「悪いストーカーじゃないよ?」
秀人が電子で集めているラノベの台詞をもじったのか。瞬時に目の前の微笑みが悪魔のそれに進化した。
「いや、でも「俺が学生だとか、男だとか、歳の差とか、秀人さんにとって最後の恋になるかもとか、若い俺に捨てられたらとか、先に死ぬとか、俺にとっては塵にもならない問題だよ。簡単に言ってるように見えるかもしれないけど、俺にとっては秀人さんが俺なしじゃ生きていけなくなるかどうかが問題だから」
「いや、ちょっ「まあ、それもするんだけどね」
「ちょっと、話をさせ「そんなの俺に全部ほっぽって良いよ」
「いや、悟く「そんな悩みじゃ俺から離れられないからね?」
おっと。
「俺、正直全部にビビってるよ。今、悟くんが言ってた事もそうだし。悟くん可愛いし俺最近白髪まで生えてきて「だからっ···「でもね!でもっ一緒にいたいなと思っちゃったんだ!!昨日会ったばっかというか襲われた高校生からもう、目が離せないんだよ。でもね、こんな俺にも意思はあるからね。嬉しい事も嫌な事もあるよ?だからっだから、ちゃんと話し合おう?一方的に解決しないで?俺だって······俺にも悟くんの事縛らせて?」
清々しいくらい、全く聞く素振りを見せない悟を宥めるように大きな声で話出す秀人。途中遮られるも、もう譲る気はない。
「悟くん」
微笑みを送る先には、大粒の涙を浮かべ下唇を震わせながら顔をくしゃくしゃに歪める年相応の少年の姿があった。その表情に、嫌でも。いや、全く嫌じゃないけど。自身が愛されてる事を実感する。
「昨日は···ごめんなさい」
「うん」
「俺、秀人さんの事が好きです」
「ありがとう。俺も悟くんの顔見るとあったかくて切なくなるんだ。でも、悟くんのところまで追いつけるかは分からない。年だからね。のろのろだよ」
「ストックホルム症候群」
「うん。そうかもね」
悟の顔が一瞬、曇る。しかし、先程までの意見を押し付けるような事はしない。口を真一文字にきつく結び、静かに耐えている。そんな悟に微笑みながら秀人はゆっくりと言葉を続けた。
「でも、俺はそれが悪いとは思わない。それに俺がもしそうなら悟くんはリマ症候群なんじゃない?合わさっちゃったらどうなっちゃうんだろうね」
「······リマ?」
「ストックホルムの逆の事だよ」
「······分かんない」
「うん、俺も分からない」
「好きだよ、秀人さん」
「うん」
「好きなんだ」
「だからさ」
「う”んっ」
「だから···一緒に名前を決めよう。そこから始めていこうよ?」
「···っう”、んん」
「「フリマアプリ症候群」」
「はははっダサすぎ」
「ぶははっ安直すぎっ」
交わる笑い声が空気を温め、優しく響く中、ゆっくりと近付いていた日の光が二人を眩しいくらいに照らした。それは、祝福か呪詛か。知る者はきっとまだいない。
ちゃんちゃん
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