激レア職業のハズレ持ち、現代ダンジョンを無双するー地図しか作れない無能と罵られ、最難関の大迷宮に捨てられたけど、ソロで攻略できるから問題ない

安田 渉

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【第33話】成長限界突破

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 相手のパーティは、盾を構えた重装備騎士のタンク役が3体、剣を構えた軽装備剣士の近接DPSが4体、杖を構えた魔術師の遠隔DPSが3体、計10体のキョンシー。そして黄泉川 久遠よみかわ くおん

 こちらの戦力は3人。
 先程、山田を殺した時のような奇襲は何度も通じはしない。
 パーティ相手の戦いは初めてで、正直勝手がよくわからない。
 だが、戦力では相手が勝っている。剣と盾の王道のコンビネーションで攻められれば負けは濃厚。
 まずはスピードで押し切る。

 相手の最前線、重装騎士キョンシーがジリジリと間合いを詰めてくる。
 魔術師キョンシーの間合いに入ったのか、火の玉が降り注ぐ。

「笑止!!」

 アクアが爆炎を飛ばし相殺する。

「アクア、援護を」
「了解じゃ!!」

 俺と神崎は駆け出し、一気に間合いを詰める。
 盾の重装備キョンシーの目の前で、アクアの作る氷柱が地面から突き出した。
 瞬時にそれに乗って、盾の重装備キョンシーを飛び越える。着地した先は、重装騎士キョンシーと剣士キョンシーの間。

――スキル発動、<四閃>!!

 一瞬にして生み出される神崎の四連撃が炸裂。反応できなかった一体のキョンシーを細切れにする。

 俺は、3体の重装騎士キョンシーの足元を氷漬けにして動きを止める。と、2体の剣士キョンシーが襲いかかってくる。
 <行動予測>によって、相手の攻撃を難なく防御していく。2体の隙のないコンビネーションは、カウンターを放つ余地がない。こちらの態勢を崩したところに、要所要所で、突きや大振りの攻撃スキルを織り交ぜてくる。間違いなく手練だ。

「やるじゃん! 一条凪!」

 後方で悠長に観戦していた久遠が興奮気味に叫ぶ。

「でも、これはどうかなぁ~~?」

 相変わらずニタニタと不気味な笑みを浮かべながら、印を結んだ手を顔の前に掲げる。

――スキル発動、<鬼門遁甲・陰火きもんとんこう・いんか>

 久遠のスキル発動と同時に、残る9体のキョンシーの額ではためく呪符が、蛍光イエローから燃えるような赤に変わった。真っ赤に染まった呪符から黒い文字が浮かび上がる。

「アアアァァァアアア……!!」

 キョンシー達が悶え苦しむと共に、尋常ではない魔力が引き出される。

「なんだ? 何が起こってる?」
「神崎さん、一旦下がって!」

 キョンシー達は血管が浮き出し、蒼白だった肌全体が黒く変色していく。歯をむき出しにして、白髪赤眼に変わっていく。その姿は、まさに鬼のようだ。

「オトモダチの本領発揮ィ~~!!」
「……屍を弄びやがって、クソ外道が」

 キョンシー達は、魔力と膂力の潜在能力を呪符によって無理矢理解放され、狂人と化した。

 剣士キョンシーが、踏み込むと足元の地面がボコッと割れた。一気に間合いを詰めて突っ込んでくる剣士キョンシー。<行動予測>がブレるほどのスピード。反射で避ける、紙一重だ。
 神崎並みのスピードで2体のコンビネーションなんか来た時には、回避し切ることなんて不可能だ。

 先程までの剣撃や魔術が嘘のように、勢いを増している。避けた剣撃は地面を割るほどの威力。放たれる火の玉は、10倍ほどのサイズになっている。
 受けることはままならない。避けなければ、消し飛ばされる。

(一度、距離を取らねば……)

 俺は、瞬時に空いている空間に下がるも悪手だった。
 今度は盾を構えていた2体の重装騎士キョンシーは、膂力が上がったことによって、盾と大剣の両方を構えることが出来るようになり、破竹の勢いで突進してくる。

「うぐっ……!!」

 辛うじて防御の態勢をとるもトラックに轢かれたような衝撃が全身を貫く。スキル<突進>の攻撃範囲は広く、避けきれずに跳ね飛ばされた。まるでプチ二階堂虎徹のようなパワーとスピードだ。
 吹き飛ばされて壁に打ち付けられると、今度は大剣を思い切り振りかざしてくる。
 寸出でそれを躱し、今度こそ距離を取った。

「どうしたのぉ~~! そんなもんかい、一条凪~~!!」

 久遠はハイになっているのか。
 煽り散らかしてくるがーーがくんと膝をついた。

「あれぇ~? 魔力切れかなぁ~~~」

 そりゃそうだ。9体のキョンシーは、星1つ分以上強くなっている。それほどまでのバフを生むスキル<鬼門遁甲・陰火きもんとんこう・いんか>。スキル発動によって、とんでもない魔力が消費されているに違いない。
 久遠の魔力量も無限ではない。魔力が切れれば、全てのキョンシーの動きが止まることだってありえる。まだ勝機はある。

 すると久遠は、青い液体の入った注射器を取り出した。いくつもの細かい針が束になったハンコ注射のようなものを首筋に突き刺した。

「あれは! 『MAXISマキシス』!!」

 神崎が叫ぶ。

「『MAXISマキシス』……?」
「成長限界突破を促す、ダンジョンドラッグだ。体力や魔力を増強する効果がある。一種のドーピングだ!」

 勝機が見えた瞬間に打ち砕かれるのを感じた。
 嘘だろ。魔力切れをドラッグで補う? そんなのチートだろ!

「アヒャハハハァ~……まだ、まだまだまだ、イケるよねぇ~~~……コロスコロスコロスコロス!! ブチ殺ス!! アッヒャアアァ!!!!」

 久遠の赤眼は焦点が定まらずにグルグル回り、灰色の髪をガシガシと掻き乱しながら、喚いている。狂ってやがる。

 クソ! ペースが乱される!
 久遠との戦いはペースが乱されっぱなしだ。次から次へと予測不能な事態に陥る。
 落ち着け。冷静になれ。久遠の魔力は無限じゃない。
 MAXISを投与するのに身体的な負荷が掛かっているはずだ。必ず限界は来る。

 とにかく今は、目の前の厄介な覚醒したキョンシーを片付けないと。
 優先事項を決めて、意識を集中することに努める。

 呪符を破壊した方がいいのか?
 呪符を破壊すれば久遠の命令や呪符による強化もきかなくなる。もしかしたら、狂人化が解除される? いや、楽観視は危険だ。何が起きるかわからない。
 呪符を失えば、その代わりに生気を求めてがむしゃらに噛み付いてくるだろう。今の狂人化した状態のまま噛み付きに専念されるの危険だ。
 万が一、噛み付かれでもしたら、終わりだ。
 それよりも、今のように戦闘に専念してもらっている方がいい。

 プランが決まらずに逡巡する。
 何が正解かわからない。どうすれば勝ち筋がみえる?

「お困りのようじゃな。お前様よ」

 腕を組みながら豪胆にほくそ笑むアクアが、俺の思考を遮る。 

「え? アクアさん?」
「ふっふっふ。妾の真の力を魅せてやろう」
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