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第一章 麗らかな翻弄
第6話 真相を探る 5
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ネットカフェを出て目的地に向かう道中、二人は無言で何処か気まずい雰囲気の中同じ並びで歩いていた。
「…………」
「…………」
気まずい。そう思いながら橡は誤解がない様に、ハッキリと言うべきことは言う必要があると決意する。
「な、なぁ……」
「ん? なに?」
「なんというか……まだ大して親しくもない男の前なんだから、もう少し警戒しとけよ?」
何とは言わないが、橡は遠回しにそれだけを伝えた。
「あ、う、うん……」
気まずそうな返答に、橡はどう答えたらいいのか分からず、
「そ、それだけだ……。男は嫌でも失礼でもそう言うのに目が行くもんなんだ……悪かったよ」
と謝りながら慌てて話を切る。
目を合わせない様に前に視線を向け、少し照れてしまっている表情をなんとか誤魔化そうとして再び無言の中歩く。
「……真面目ね。橡くんは」
と、少し無言で歩いてると、美咲が橡の顔を見ながら少し笑って見せてそう言った。
「な、なんだよ。変か?」
照れてるのがバレたのか、慌てて真剣な表情を作って美咲に目を合わせる。
「普通の男子なら、見えたラッキーぐらいなもんでしょ? そんな真面目に注意しないって」
「って言われても……言い訳っぽいかもしれないが、見えない様に気を付けてくれないと……視線は勝手に向くんだよ……」
「……言い訳にしか聞こえないね」
「っぐ…………」
自分で言ったとはいえ、そう認識されるとグサッと来る。
しかし美咲は付け加える様に言う。
「でも、変に誤魔化したりするより、私はちゃんと言ってくれるほうが好感もてるな」
そういって、いつもよりも柔らかい表情で美咲は笑って見せた。
「……そうか」
返答に困った橡は短く答えた。
すると間もなく、橡のスマホが音を鳴らす。
スマホをポケットから取り出すと、母からの着信が来ていた。
「ちょっとごめん」
橡は美咲に一言言うと電話に出る。
「なんだ?」
『もしも~し。今日の夜ナスの挽肉の挟み揚げ作ろうと思ってたんだけど、パン粉切れてるの忘れてたのよ。帰りに買って来てくれない?』
「いいけど、何時に帰るかわからんぞ」
『え~そうなの? じゃあ明日にするから、とりあえず帰りに買って来てね。なんかお菓子買って来てもいいから。後でお金渡すから』
「いや別に……分かったよ。友達といるから、じゃあな」
そう言って一方的に通話を切る。
「お母さん?」
「ああ。帰り際に買い物してこいってさ。面倒臭い」
「へぇ~。お母さんとは仲いいんだ」
「仲良くないよ。向こうが勝手に絡んでくるだけだ」
「歪みあってなきゃいいよ。友達とか、会うたび喧嘩してるっていう子とかいるもん」
「別に喧嘩なんかしないけど……。まぁ家族ってだけで、それ以下でもそれ以上でもないよ」
「それでいいと思う。そう思えるのが、きっと一番幸せだよ」
「そんなもんか……? まぁいい。もう着くぞ」
そう言って橡は前方を指差して、目的地の喫茶店、喫茶Makiに到着した。
それは店構えからして古そうで、当時から変わっていなさそうな雰囲気の店だった。
中に入ると少し昔を感じる内装で、今となっては常連しか来ないような、若い人達がくるような所ではなさそうだった。
「いらっしゃいませ。2名様ですか?」
接客をしてくれる女性も、40~50歳ぐらいの人で、客層もぱっと見それぐらいの人達が多そうだった。
「こちらどうぞ」
人もいっぱいではなく、4人席に通され、美咲と橡は向かいに座り、橡の隣に幽霊が座る。
案内される席に座り、メニューを見る二人。
「いかにも昔ながらって感じだな」
「いい雰囲気ね。私は好きだな~」
「アイスティーでいいか」
「私はコーヒーと……パフェ食べよ~」
「さっき飯食っただろ」
「いいじゃん別に。さっきデザート食べなかったし、甘い物は別なの。すみませ~ん!」
注文。アイスティーとコーヒーとストロベリーパフェと言うシンプルなパフェ。
注文を終え、互いにまったりとした時間を過ごしていると、
注文したものがやってくる。
「美味しそ~!」
美咲はそう言いながらパフェを持ち、雰囲気の出る角度を探しながらパフェと自分が写った写真を撮る。
その横で、いつも以上に食べたそうな表情で幽霊が指を咥えてじっとパフェを見ていた。
「そんなパフェ撮って意味あるのか?」
橡は幽霊の事が気になりながらも、美咲に疑問を投げかける。
「橡くんは今時じゃない事ばっかり言うね~。記念だよ記念。捜査記録にもなるし、インストとかに上げれば話題にもなるんだよ?」
「ふ~ん……」
橡ははやりの画像投稿アプリを美咲がやっているというにはさして興味なさげに答えると、紅茶を一口飲む。
「橡くん、写真撮影得意?」
「普通に撮るぐらいなら出来るけど良い撮り方なんて知らんぞ」
そういいながらテーブルのガムシロップをアイスティーに入れる。
「まぁいいや。撮って撮って」
そういって美咲はかわいらしいカバーを着けたスマホを差し出してくる。
「な、なんで俺が。自分で撮れよ」
嫌そうにしながらストローでアイスティーをかき混ぜる。
「いいじゃない。押すだけなんだから」
「ったく……」
渋々ながらもスマホを受け取り撮影する事に。
「…………」
「…………」
気まずい。そう思いながら橡は誤解がない様に、ハッキリと言うべきことは言う必要があると決意する。
「な、なぁ……」
「ん? なに?」
「なんというか……まだ大して親しくもない男の前なんだから、もう少し警戒しとけよ?」
何とは言わないが、橡は遠回しにそれだけを伝えた。
「あ、う、うん……」
気まずそうな返答に、橡はどう答えたらいいのか分からず、
「そ、それだけだ……。男は嫌でも失礼でもそう言うのに目が行くもんなんだ……悪かったよ」
と謝りながら慌てて話を切る。
目を合わせない様に前に視線を向け、少し照れてしまっている表情をなんとか誤魔化そうとして再び無言の中歩く。
「……真面目ね。橡くんは」
と、少し無言で歩いてると、美咲が橡の顔を見ながら少し笑って見せてそう言った。
「な、なんだよ。変か?」
照れてるのがバレたのか、慌てて真剣な表情を作って美咲に目を合わせる。
「普通の男子なら、見えたラッキーぐらいなもんでしょ? そんな真面目に注意しないって」
「って言われても……言い訳っぽいかもしれないが、見えない様に気を付けてくれないと……視線は勝手に向くんだよ……」
「……言い訳にしか聞こえないね」
「っぐ…………」
自分で言ったとはいえ、そう認識されるとグサッと来る。
しかし美咲は付け加える様に言う。
「でも、変に誤魔化したりするより、私はちゃんと言ってくれるほうが好感もてるな」
そういって、いつもよりも柔らかい表情で美咲は笑って見せた。
「……そうか」
返答に困った橡は短く答えた。
すると間もなく、橡のスマホが音を鳴らす。
スマホをポケットから取り出すと、母からの着信が来ていた。
「ちょっとごめん」
橡は美咲に一言言うと電話に出る。
「なんだ?」
『もしも~し。今日の夜ナスの挽肉の挟み揚げ作ろうと思ってたんだけど、パン粉切れてるの忘れてたのよ。帰りに買って来てくれない?』
「いいけど、何時に帰るかわからんぞ」
『え~そうなの? じゃあ明日にするから、とりあえず帰りに買って来てね。なんかお菓子買って来てもいいから。後でお金渡すから』
「いや別に……分かったよ。友達といるから、じゃあな」
そう言って一方的に通話を切る。
「お母さん?」
「ああ。帰り際に買い物してこいってさ。面倒臭い」
「へぇ~。お母さんとは仲いいんだ」
「仲良くないよ。向こうが勝手に絡んでくるだけだ」
「歪みあってなきゃいいよ。友達とか、会うたび喧嘩してるっていう子とかいるもん」
「別に喧嘩なんかしないけど……。まぁ家族ってだけで、それ以下でもそれ以上でもないよ」
「それでいいと思う。そう思えるのが、きっと一番幸せだよ」
「そんなもんか……? まぁいい。もう着くぞ」
そう言って橡は前方を指差して、目的地の喫茶店、喫茶Makiに到着した。
それは店構えからして古そうで、当時から変わっていなさそうな雰囲気の店だった。
中に入ると少し昔を感じる内装で、今となっては常連しか来ないような、若い人達がくるような所ではなさそうだった。
「いらっしゃいませ。2名様ですか?」
接客をしてくれる女性も、40~50歳ぐらいの人で、客層もぱっと見それぐらいの人達が多そうだった。
「こちらどうぞ」
人もいっぱいではなく、4人席に通され、美咲と橡は向かいに座り、橡の隣に幽霊が座る。
案内される席に座り、メニューを見る二人。
「いかにも昔ながらって感じだな」
「いい雰囲気ね。私は好きだな~」
「アイスティーでいいか」
「私はコーヒーと……パフェ食べよ~」
「さっき飯食っただろ」
「いいじゃん別に。さっきデザート食べなかったし、甘い物は別なの。すみませ~ん!」
注文。アイスティーとコーヒーとストロベリーパフェと言うシンプルなパフェ。
注文を終え、互いにまったりとした時間を過ごしていると、
注文したものがやってくる。
「美味しそ~!」
美咲はそう言いながらパフェを持ち、雰囲気の出る角度を探しながらパフェと自分が写った写真を撮る。
その横で、いつも以上に食べたそうな表情で幽霊が指を咥えてじっとパフェを見ていた。
「そんなパフェ撮って意味あるのか?」
橡は幽霊の事が気になりながらも、美咲に疑問を投げかける。
「橡くんは今時じゃない事ばっかり言うね~。記念だよ記念。捜査記録にもなるし、インストとかに上げれば話題にもなるんだよ?」
「ふ~ん……」
橡ははやりの画像投稿アプリを美咲がやっているというにはさして興味なさげに答えると、紅茶を一口飲む。
「橡くん、写真撮影得意?」
「普通に撮るぐらいなら出来るけど良い撮り方なんて知らんぞ」
そういいながらテーブルのガムシロップをアイスティーに入れる。
「まぁいいや。撮って撮って」
そういって美咲はかわいらしいカバーを着けたスマホを差し出してくる。
「な、なんで俺が。自分で撮れよ」
嫌そうにしながらストローでアイスティーをかき混ぜる。
「いいじゃない。押すだけなんだから」
「ったく……」
渋々ながらもスマホを受け取り撮影する事に。
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