上 下
107 / 117

第96話 (no side)

しおりを挟む

「「「き…キャァァァァァァアアアッ!!」」」

「「「うぉぉぉぉぉぉぉおおッ!!」」」

「水無月様抱いてーー!!」

「書記様甘味を献上させてー!!」

「なんでオレはあっち舞台上に行っちゃダメなんだよ!!!!!!」

「うわ彼処あそこ毬藻いんじゃん…隠れとこ」

「副会長様…嗚呼、本日も実に麗しい…踏まれたい…」


  会計と書記によるファンサで、一気に黄色い声で騒がしくなった舞台下を眺め、副会長は憂いのため息をついた。

 憂う副会長からは何とも言えぬ色気がかもし出ており、その姿を最前列で目撃してしまった幸運な生徒達は皆一様に顔を赤らめて倒れていく。
 
 現場は更に混沌を極めた。


「…皆さん、静かにして下さい。でないと新歓に参加させませんよ?」

 痺れを切らした副会長がようやく口を開いた。その言葉とともに浮かべられた笑顔は心做しか黒い気がする。その笑顔はまるで…そう、魔王様が降臨する前置きのときのような…。

「「「……………」」」

「ふふ、出来るではないですか。次からは私が言わずとも静かにして欲しいものです。…では、最後に会長の神崎と風紀委員長の神無月からお願いします。……お二人とも、言い合いなどというくだらない事をして時間を無駄にしないで下さいね?」 

「チッ…」

「勿論だ」

 副会長魔王様お願い命令を聞いた会長は実に嫌そうに顔を顰めて舌打ちし、俺様なオーラを纏って悠然と中央へ向かう。

 それに対して、舞台脇から少し遅れて出てきた委員長は、至って真面目な顔をしていた。


「一度しか言わねぇから、俺様の話をよく聞いとけ。いいな?」

「「「「はい!!」」」」

「「「Yes, sir !!」」」

 しっかり躾けられた生徒達は、告げられた会長の言葉に一も二も無く同意の意を表する。皆の視線は会長ただ一人に向けられ、その言葉
を聞き逃さぬよう耳を澄ませていた。

「今回の鬼ごっこだが…俺達生徒会も参加する。勿論“飼い主”側としてだ。気が向けば捕まえてやる、楽しみにしておけ。あぁ最後に言っておくが…面倒事起こして俺様を煩わせるなよ」

 会長が口角を片側だけ上げてニヤリと嗤うと、今度はサイレントで黄色い悲鳴が上がる。
 それを見下ろし満足気な表情を零したのち、相手の方を一瞥いちべつもせずにマイクを放り投げた。

 空中で軌跡をえがいたそれが鈍い音を立てることは無く、タイミング良く彼の方に近付いてきた者の手に収まる。

 己が投げたマイクの行方を追うことなく、出番は終わったとばかりに元居た場所へと会長は足を運ぶ。
 また委員長もそれを咎めようとはせず、捕らえたそれの電源を入れて口を開いた。


「風紀から連絡だ。今回の行事によって生じるであろう混乱に乗り、不適切な行為を行う事が無いようにして欲しい。強姦や暴力、制裁等はもってのほかだ。それでもやると言うのなら…それ相当の覚悟を持っておけよ?……俺が必ず殺ってやる」

 妙な考えを抱いていた者は皆腹の底から恐怖を感じ、被害者と成り得る可能性の高い者はその言葉に全幅の信頼と安堵を持つ。それ以外の者は自分には関係無いと他人事に聞いている。

「また昨年同様、風紀は参加せずに見回りを実施する。何か異変等が発生した場合、付近の委員に話しかけてくれ。それでは主役である新入生達、新歓を楽しんで」

 珍しく委員長が笑顔をこぼすと、講堂内のボルテージが一気に上がり、若者らしい元気な歓声が溢れた。

 

しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

王道学園にブラコンが乗り込んでいくぅ!

玉兎
BL
弟と同じ学校になるべく王道学園に編入した男の子のお話。

チャラ男会計目指しました

岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように………… ――――――それを目指して1年3ヶ月 英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた 意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。 ※この小説はBL小説です。 苦手な方は見ないようにお願いします。 ※コメントでの誹謗中傷はお控えください。 初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。 他サイトにも掲載しています。

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます

餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。 まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。 モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。 「アルウィン、君が好きだ」 「え、お断りします」 「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」 目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。 ざまぁ要素あるかも………しれませんね

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

目覚めたそこはBLゲームの中だった。

BL
ーーパッパー!! キキーッ! …ドンッ!! 鳴り響くトラックのクラクションと闇夜を一点だけ照らすヘッドライト‥ 身体が曲線を描いて宙に浮く… 全ての景色がスローモーションで… 全身を襲う痛みと共に訪れた闇は変に心地よくて、目を開けたらそこは――‥ 『ぇ゙ッ・・・ ここ、どこ!?』 異世界だった。 否、 腐女子だった姉ちゃんが愛用していた『ファンタジア王国と精霊の愛し子』とかいう… なんとも最悪なことに乙女ゲームは乙女ゲームでも… BLゲームの世界だった。

処理中です...