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第89話
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「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます。今回は相模が欠席なため、司会は生徒会会計水無月が務めさせて貰います。では早速、本題に入らせていただきます。今回の議題はs…」
普段の間のびた口調を取っ払い、堅っ苦しい語調で会議の開始を告げる。流石に司会であの話し方はできない。せめてもの抵抗として、普段よりも薄っぺらい笑顔は浮かべたが。
「ふむ、神崎殿や花ヶ崎殿も居ないようであるが…」
進行を遮った声の主は軽く握った白魚のような手を口元に寄せ、何かを考えるかのように僅かに瞼を伏せる。
普通ならば進行が遮られることなど無いし、あったとしても誰かしらがその者を注意する。しかし、誰もそのことを咎めない辺り、彼と同じことを思っていたのだろう。
「会計殿、此れはどういう事であろうか?」
まるで射貫くかのように、特徴的なマゼンタ色の瞳が俺へと向けられる。“心の底からの純粋な疑問です”とでも言いたげな視線を認め、表情は変えないまま内心嘲笑った。
お前もコチラ側の人間だろうに、と。
「え~…俺に聞かれてもなぁ~…。会長と同じ学年の人の方が知ってそぉ~ですけどぉ…ねぇ、レオン先輩?」
質問には質問で返し、皮肉には皮肉で対抗する。
この人にはそれぐらいが丁度良い。
「言われてしまえばそうなのだがな。実はここ最近、何故か神崎殿は前にも増して教室へやって来なくなったのであるよ」
「不思議だなぁ?」と、態とらしく首を傾げる。それに付随して褐色の短髪が僅かに揺れた。
「…灰塚、これ以上無駄な言い合いはやめろ。会議がいつまで経っても進まん」
「ふむ、神無月殿に言われてしまったのなら仕方あるまい…今はやめておくとしよう。会計殿、進めて良いぞ」
自分の不利を悟ったのか、それとも俺で遊べて満足したのか、レオン先輩はアッサリと身を引いた。この人のことだから、まず間違えなく後者だろうが。
「偉そ~だなぁ…まっ、別にいいけどさ~。……ゴホンッ、え~っと、今回の議題は新入生歓迎会、今年度の予算案(仮)決定、部活動等についてです。始めに風紀委員会からお願いします」
あまり1つの事にいつまでも執着してもチャラ男っぽくない。ということで、こちらも先程ほどまでのやり取りを気にする事なく司会の仕事を再開する。
会話の矢印を風紀へぶん投げたので、一旦副会長の代理役はお終い。今度は書記の代理役に専念する。
「新歓当日の警備についてだが、どこかのバカが書類を届けに来なかったせいで、昨日にようやく完成した。そのため不備があるかもしれない。その場合は気兼ねなく指摘して欲しい。…では、こちらの資料の3頁を見てくれ──」
“何処かの誰かさん”へ向けた嫌味をさらっと交えつつ、淡々とした声音で言葉を次々と紡いでゆく。所々で副委員長が注釈を加え、考え得る懸念事項を他の委員会の委員長又は副委員長が挙げると、それに対して委員長が対応策,解決策を回答する。
対する俺はというと、ただ聞き役に徹し、分かり易いように重要な事柄や要点を纏めるものと、会議の流れを記すものとを分けて書き留めていった。
「…では、最終採決を取ります」
1つ目の議題を終わらせる為そう告げ、各委員会の代表に発言をするよう促す。
「様々な懸念はあるが…それを挙げていては切りが無いからな。風紀は賛成に一票だ」
「ぼ、ぼく達も賛成に、ぃ、一票、です…」
「楽しいのが1番ッてのが、俺個人としての意見だな。っつうことで、まあ、体育側も賛成だ」
「………吾ら美化は中立を取らせてもらう」
「中央委員会も、中立を取らせて下さい」
「ふむ…面白いものが見れそうな事であるし、賛成しようか」
「賛成4、中立2…。あ、もちろん俺は賛成派だよ~」
…まぁ、あくまで形としてこの方法を採用しているだけで、この採決に意味は無い。この会議で議題として出している時点で、その物事は既に決定したも同然のものだからだ。
というより、完璧に整えたそういう事しか議題に出さない…と言った方が正しいかもしれない。
「それでは、今年度の新入生歓迎会は、この案で進めていきたいと思います。次の議題は──」
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