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第87話
しおりを挟む会議に必要な書類やこれまでの事を綴ったファイルを掻き集め、若干早足を心掛けながら特別校舎内の会議室へ向かう。
その間ずっと、司会内容や今回の会議の流れを脳内で御浚していた。
なにせ司会や書記はどちらか1つだけならばしたことがあるが、今回はその両方を同時並行で行わなければならない。念には念を入れていた方が良いだろう。
早足で来たためか、会議室にはまだ誰もいなかった。
1ヶ月ぶりに入った室内には、無駄に重厚感溢れる長机と黒い革張りの椅子が、相変わらず行儀よく定位置に置いてあった。
因みに、所謂お誕生日席と呼ばれる場所が俺達生徒会役員の席だ。
その背後にあるホワイトボードに、会議の格好としてだけの議題を大きく書き、学園の図案や今後のスケジュールの記された紙を貼り付ける。
次に、各委員会トップ2が座る位置にコピーしてきた資料を丁寧に配置していく。このとき、後から配る分と間違えないようにしなければならない。
最後は簡単。普段の俺を装い、余裕を感じさせる態度で椅子に座って、ただ他の人が集まるのを待っていれば良い。
心做しか詰らなそうなヘラヘラした笑みという矛盾も甚だしい表情を貼り付け、軽く頬杖をつきながらもう片方の手でスマホを弄る。
そうして5分程経っただろうか。授業終了のベルが鳴り、それと同時に風紀が揃ってやって来た。何故毎回チャイムと同時に来るのか、それが不思議で堪らない。
「やっぱ風紀は早いねぇ~」
スマホを持った手を軽く上げ、2人に声をかける。
「お前らの方が毎回早いだろう。…まぁ、今回はお前1人のようだが」
「想定していたとはいえ、あの方々への落胆が尽きませんね」
定位置に着きながら、端正な顔を歪めて苦々しそうに口にした委員長に続き、同じく席に着いた副委員長が僅かに苦笑した。
「ははは~、なぁんかごめんねぇ?」
「いや、お前が謝る必要は無い」
ついていた頬杖を解いて2人を見上げ、浮かべ直した笑みをそのままに軽い口調で謝る。それに対して委員長は、更に苦々しい表情になってそう言った。
「…やはり、知ってしまいましたか」
「あ~……副委員長があの時、なぁんにも言ってくれなかったのはそれが理由かぁ~」
「別に何も気にしないのにぃ~」と言いながら笑う。
そんな俺を見て何故か彼らは、痛みに耐えるような、悲しそうな、そういう傷付いたような表情をした。
…また何か、間違えてしまったのだろうか?
分からない。分からない。
俺には分からない、分かりたくもない。
「もぉ~、なんで委員長達がそんな顔するのさぁ~」
微妙な感じになってしまった空気を吹き飛ばすように、更に笑う。
大丈夫、この笑みは完璧だ。
「あぁ、それもそうだな。…朔夜」
「えぇ、分かっています。…それに、現状の空気感ですと、其処にいる後輩達が入って来れませんしね」
頬を僅かに緩め、柔らかい笑顔を浮かべた副委員長がチラリと視線を扉へとやる。
静かになった室内で耳を澄ますと、廊下から微かにパタパタという足音とよく知った2人分の声が聞こえた。
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