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第84話
しおりを挟むこのままでは埒が明かないと思ったのだろう。
偉そうに組んでいた腕を解きながら、切り替えるかのように会長が「よしっ」と言って、その後更に言葉を続けた。
「春人を役員にする計画は一旦置いとこう。流石の俺様でも理事長の許可なく勝手に役職を増やせねぇしな」
「もしそのようなことを貴方がしでかしたら、すぐさま会長の職を辞めさせられるでしょうね。ふふ、実にゆかi…大変なことですよ」
「お─」
「そうかそれはダメだな!!!!!!!オレのために龍雅が会長じゃなくなったらイヤだからなっ!!!!!しょうがないから今はだきょう?してやるぞ!!!!!」
会長の言葉を聞いた副会長が黒く笑い、それに対して文句でも言おうと思ったのか、会長が何か言いかけたが、100デシベルぐらいある大声によって遮られた。そろそろ鼓膜が心配になってきた。
それを見ていた双子はくふくふと、全く同じタイミングで肩を震わせて笑っている。まるでドッペルゲンガーのようだと、今更ながらふと思った。
部屋はまだ片付いていない。
何時になったら彼らは出ていくのだろうか。
「ぅ…さい……」
ぽつりと、僅かに俯いたうるさいものが苦手な書記が零す。心做しか最初の頃より、他のメンバーから物理的に距離をとっている。
攻めるのならば書記からがいいかもしれない。
さり気なくそっと彼に近付く。その気配に気が付いたのか、自身の右側へ視線を向けた彼は、思いのほか近くに居た俺に驚いていた。
垂れがちな焦げ茶色の瞳をまるく見開いている。
動揺しているようにも見える彼を安心させるために、普段よりもかさ増しにした軽い笑みを浮かべて話しかけた。
「こぉ~して会って話すの、大体1週間ぶりだねぇ~。ねぇねぇ、最近は何してたの~?」
ま、やってる事は軽く尋問だが。何をしていたかなんて事は、大方予測は出来ているが、折角なら当事者の口から聞きたい。
「ま、こと…」
柳瀬クンを半円状に囲い、会長の有り様を笑っている他の役員に助けでも求めているのか。オロっと視線を左右に彷徨わせ、俺の名前だけを口にする。
そこには、あんなに俺に懐いている様に見えていた、唯一の癒しわんこの姿は無かった。
んー、…俺、別に敵じゃないんだけどな。
それに、彼を殴ったりしようともしてないし。
そんなふうに思いながら「ん~?」と笑みを維持したまま、やんわり次の言葉を促す。
「え、とね……」
最後に会話した時より、彼の話し方が多少幼い印象を受ける。俺の気の所為だろうか?
「会ちょ、たち…春人、と…いっしょ、いた…の………ぉめん…さ…」
後半になるにつれ、どんどん声が小さくなる。おかげで、ただでさえ聞き取りにくい彼の言葉は、余計に何を言っているのか俺には分からない。
それでも、ただ笑みを浮かべて聞いている。
別にどうでもいいわけではなく、彼は本当に伝えたい事はより頑張って相手に伝わりやすいように言う人間だと、短い付き合いの中でそう分析していたから。
これはあくまで俺なりの解釈だから、まあ、間違っている可能性はかなり高いが。それはそれで構わない。
どうせ、他人を心の底から完璧に理解できるはずが無いのだから。
「あれ?けいっちどーしたのー?」
「けいっち、泣きそうになってる」
「「あ、もしかしてマコちゃんに泣かされたのー??」」
俺と彼が話しているのに気が付いた双子が「イジメだイジメだー!」と、声を揃えて歌うように口にする。
「!?ち、違っ…!まこと、何…し、ない…!…ぅし、ろおれ、…し─」
慌てたように顔を上げた書記は、“俺に泣かされた”という部分を精一杯に否定する。双子の方へと顔を向けているため、彼が本当に泣きそうになっているのかが俺には分からない。
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