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第58話
しおりを挟む「ほう、俺様を知らないか。お前も名家の出なら、知っといて同然な家柄なのだがな…色んな意味で面白いヤツだ」
そう言いながらズカズカと座っている転入生に近付き、口角を上げてニヤリと嗤う。その不敵な表情の流れ弾をくらい、チワワ系の生徒達は顔を真っ赤に染め上げていた。
「この学園の生徒会会長、神崎龍雅だ。よく覚えておけ、転入生」
「龍雅だなっ!!!オレのことは春人って呼べよな!!!!だってオレたち友達だろ!!!!」
「会長様になんて口の利き方をっ!!」
「神崎様達から離れろ毬藻!!!!」
「神よ我に素晴らしい萌を見せ給え与え給え!!」
またもや周囲は阿鼻叫喚。なんか趣旨が違うのが毎回居るが、触らぬ神に祟りなし。触れずにスルーする。
それにしても友達、ねえ…。いつの間に会長と友達になったつもりなのだろうか。
「…ふっ、気に入った。転入生…いや、1年S組柳瀬春人。お前、俺様のものになれ」
「は…?会長何言って─」
「何言ってるだよっ!!!!!オレはものなんかじゃないんだぞ!!!!」
突然トチ狂ったことを言い始めた会長に困惑し、ポロッと言葉が零れ落ちる。が、それは転入生の声によって掻き消された。
「「かいちょー(会長)なに言ってるのー!!」」
「ハルは僕らのお気に入りだよー!」
「僕らが先に気に入ったんだよー!」
「「だから邪魔しないでよねー!!」」
転入生に抱き着いていた双子も会長に猛抗議している。2人がここまで誰かを気に入るだなんて珍しい。
「…さ、に、…とも……ど、した、の…?ぃつも、…ちが…」
まるで人が変わったような3人の態度に、今度は俺の後ろに隠れていた慶がオロオロと瞳を彷徨わせながら話しかける。
「あっ!!お前もイケメンだなっ!!!なあなんで隠れてるんだ???!!!!!そこから出て来いよっ!!!あ、オレは柳瀬春人!!!お前の名前はなんだ??!!!」
遂にその存在に気が付いた転入生の矛先が慶に向いた。
「ぁ…」
「ん???!なんだ?!!」
「…おれ、……は…、がさ…けぃ…」
慶は突然のことに驚いたためか、普段より吃音が悪化していて聞き取りにくかった。
最近は出会った頃より改善しており、またそれに慣れてきていたため、知らなければ聞き取れなかっただろう。
「花ヶ崎慶かっ!!!いい名前だな!!!!!」
「!!!!おれ、の…こ、ば……分かる…?」
しかし、転入生は聞き取ってみせた。双子を見分けた時と同じようにアッサリと。
「当たり前だぞ!!!!」
慶の顔がパッと輝く。幻覚の尻尾をぶんぶんと振って、全身で「嬉しい」「すごい」と物語っていた。
「本当キミすごいねぇ…」
彼らと出会い、少しずつその人なりを知っていき、そうやって時間をかけ俺が習得していったものを、そんなふうに楽々と熟してしまうなんて。
「ん???なにがすごいんだ??!!!!あ、そうだお前!!!!ちゃんと名前も教えろよっ!!!!!!」
「オレは教えただろ!!!!!」と転入生が大声で喚く。どのような表情をしてそう言っているのかは、黒く重たい前髪のせいで分からない。
どうしようか、と言い淀んでいると、突然大きくて重い物が勢いよく落ちたような鈍い音がした。騒がしかった食堂内が、一瞬にして痛いぐらいに静まりかえる。
「春人が聞ィてんだ、さっさと答えろチャラ男。床に沈められてェならイイけどよォ」
不良っぽいイケメンが、思いっきりガンを飛ばしながら俺に牙を剥いていた。そういえばいたな、こいつ。今まで全力で空気だったから忘れてた。
あぁほら、会長達も「あ、そういや他にいたな」って顔してる。やめてあげて、流石に可哀想に見えてくるから。
「ん~、流石に沈められるのは嫌だなぁ。俺はМじゃぁないしぃ…。しょうがないなぁ~。1回しか言わないからぁ、よぉく聞いててねぇ。俺の名前は水無月真琴だよぉ」
「真琴か!!!!!よろしくなっ!!!!!!!本当は真琴にも名前で呼んでほしいけど、そんな主義を持ってるなら仕方ない!!!!!オレは優しいからなっ!!!!!今は名字で許してやるぞ!!!!!!」
転入生─もとい柳瀬クンはそう言って、唯一見える口を開けてニッと笑った。
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