上 下
63 / 115

第56話

しおりを挟む

「こっちが奏で、こっちが楓だろ!!!!!!」

 転入生は最初に右を、次に左を指しながら、マイク要らずの大声で、何を当たり前のことをと言わんばかりの声音こわねをしてそう言った。

 …驚いた、見事に正解だ。

「「大正解!!」」

「ほんとすごーい!」

「びっくりだよ!」

 双子もアッサリと見破られたことに驚いている。大きな黒色の瞳をまるく見開いて、顔にはほんの僅かな歓喜と哀愁が見え隠れしている。しかしそれは、他の生徒が気付かない内に跡形もなく消されてしまった。

 気付いたのは恐らく、現在2階席にいる副会長以外の生徒メンバー。そして、すぐ近くにいた転入生達。もし双子の親衛隊隊長がこの場にいれば、その人もだっただろう。


 双子は、実に瓜二つなイタズラっぽい笑顔を浮かべると、同じタイミングでお互いの両手を合わせた。

「「…でも、まぐれの可能性もあるからね!」」

 まぁ、それはそうだ。当たる確率は二分の一。正直一回だけでは、見分けたのではなくまぐれで当てた可能性が高い。

「「じゃあ、第2ラウンド目いっくよー!」」




 ─その後も同じ事を何十回と繰り返して。


 ゲームが始まって、現在50回目。そろそろこれで最後だろう。流石の双子も、回り過ぎて少し頭がふらふらしてきている。終わってから倒れなければいいのだが。


「「どっちがどっちでショー!」」

「上が楓で、下が奏だろっ!!!こんなの簡単だぞ!!!!!」

 転入生は見事に全問正解を果たしていた。

 ここまでくると、転入生はまぐれで当てているのではなく、ちゃんと2人を見分けていると認めざるを得ない。

 因みに今の双子の体制は、転入生が言ったように奏の上に楓がいるという、所謂いわゆる肩車状態だ。

 残像しか見えないような高速回転しながら、流れるように肩車をするその手腕はお見事としか言えない。これはこの2人だからこそ可能となる技だろう。もはや人外。


「かえ、で…か、なで…すご…」

「いつ見てもすげぇなコイツら」

 会長と慶に至っては、双子を見分けた転入生ではなく、双子が軽々とこなす技の方に目がいっている。俺以外の生徒会メンバーは小等部からの付き合いらしいが、そんな2人でも目を見張る程というのがすごい。

 
「「君すごいねー!事前情報無しの初対面で、僕らを見分けたのは君が初めてだよ!!なんで分かったの?」」

 楓が奏の肩から飛び降りてから、全く同じ表情をして問う。瞬きの瞬間も、呼吸のタイミングまでもが同じ。こういう時は一瞬、どちらがどちらだか分からなくなる。

「君じゃなくて春人って呼べよなっ!!!それに当たり前だろ!!だって2人とも全然違うんだからな!!!!!」

 全然違う…?そんな事はないと思うが。

 客観的に見て、顔や背丈、身体つき、瞳や髪の色なんてほぼ同じだ。しかも、その髪の痛み具合や光沢の付き方までもが。




 まるで、双子のうちの片方が、もう片方を真似して作られでもした、精巧な人形のように。




「~~ッ!!!!」

「僕、ハルのこと気に入ったよ!!」

 楓は転入生に飛び付いた。気にならない程のを空けた後、それに続いて奏も飛び付く。

 丁度こちらに背を向けるような格好となったため、その時の双子がそれぞれどのような表情をしていたのか、俺達には分からなかった。




 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お願いだから、独りでいさせて

獅蘭
BL
 好きだけど、バレたくない……。  深諮学園高等部2年きっての優等生である、生徒会副会長の咲宮 黎蘭は、あまり他者には認められていない生徒会役員。  この学園に中等部の2年の9月から入るにあたって逃げた居場所に今更戻れないということを悩んでいる。  しかし、生徒会会長は恋人だった濱夏 鷹多。急に消えた黎蘭を、2年も経った今も尚探している。本名を告げていないため、探し当てるのは困難を極めているのにも関わらず。  しかし、自分の正体をバラすということは逃げた場所に戻るということと同意義であるせいで、鷹多に打ち明けることができずに、葛藤している。  そんな中、黎蘭の遠縁に当たる問題児が転入生として入ってくる。ソレは、生徒会や風紀委員会、大勢の生徒を巻き込んでいく。 ※基本カプ ドS生徒会副会長×ヤンデレ生徒会会長 真面目風紀委員長×不真面目風紀副委員長 執着保健医×ツンデレホスト教師 むっつり不良×純粋わんこ書記 淫乱穏健派(過激派)書記親衛隊隊長×ドM過激派会長親衛隊隊長 ドクズ(直る)会計監査×薄幸会計 ____________________ 勿論、この作品はフィクションです。表紙は、Picrewの証明々を使いました。 定期的に作者は失踪します。2ヶ月以内には失踪から帰ってきます(( ファンタジー要素あるのと、色々とホラー要素が諸所にあります。

僕を愛さないで

レモンサワー
BL
母が僕を庇って、死んでしまった時から僕の生活は一変した。 父も兄も温かい目じゃなく、冷たい目で僕を見る。 僕が母を殺した。だから恨まれるのは当然。 なのにどうして、君は母親殺しの僕を愛しいと言うの?どうして、僕を愛してくれるの? お願いだから僕を愛さないで。 だって、愛される喜びを知ってしまったら1人、孤独になった時耐えられないから。捨てられてしまった時、僕はきっと絶望してしまうから。 これは愛されなくなってしまった優しい少年が、少年のことを大事に思う人と出会い、とびきりに愛される物語。 ※R15に念の為に設定していますが主人公がキスをするぐらいです。

匂いがいい俺の日常

とうふ
BL
高校1年になった俺の悩みは 匂いがいいこと。 今日も兄弟、同級生、先生etcに匂いを嗅がれて引っ付かれてしまう。やめろ。嗅ぐな。離れろ。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

チャラ男会計目指しました

岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように………… ――――――それを目指して1年3ヶ月 英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた 意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。 ※この小説はBL小説です。 苦手な方は見ないようにお願いします。 ※コメントでの誹謗中傷はお控えください。 初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。 他サイトにも掲載しています。

姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王

ミクリ21
BL
姫が拐われた! ……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。 しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。 誰が拐われたのかを調べる皆。 一方魔王は? 「姫じゃなくて勇者なんだが」 「え?」 姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?

良かれと思ってうっかり執事をハメてしまった

天災
BL
 良かれと思ってつい…やってしまいました。

チャラ男は愛されたい

梅茶
BL
幼い頃優等生としてもてはやされていた主人公。しかし、母が浮気をしたことで親は離婚となり、父について行き入った中学校は世紀末かと思うほどの不良校だった。浮かないためにチャラ男として過ごす日々にストレスが溜まった主人公は、高校はこの学校にいる奴らが絶対に入れないような所にしようと決意し、山奥にひっそりとたつ超一流学校への入学を決める…。 きまぐれ更新ですし頭のおかしいキャラ率高めです…寛容な心で見て頂けたら…

処理中です...