上 下
58 / 121

第51話

しおりを挟む

「あ~ごめんねぇ、すっかり東センセーのこと忘れてたよ~」

 「ごめんごめん~」とヘラヘラ笑いながら、拘束していた両腕を解放する。数分ぶりに解放された腕(肩)を早速ぐるぐると回す東先生を見て思った。

「センセー…もうそんな歳だったんだねぇ。まだ20代なのに…」

 思わず東先生へ憐れみのこもった視線を向けた。アァ、センセーカワイソーダナー(棒読み)

「オレをジジイだと言いたいのか?あ゙??」

「ハッ、もしかして声に出てたぁ?」

「思いっきり出してたわッ!!つか絶対ぇわざとだろっ」

「あはは、そんな訳ないじゃ~ん」

 勿論わざとだ。



 俺が先生で遊んでいる間に、副会長は無事会長も強制的に現実世界に戻していた。流石だ。

「うぅ、まだおでこがジンジンするー…」

「うぅ、絶対おでこヘコんだよ…」

「「もう、副会長の鬼!ここまでする必要ないじゃん!!」」

 思いっきり弾かれて赤くなった額を押えながら、双子は魔王様化が阻止された副会長に猛抗議している。

「…痛、い…。副会、長…な、で…」

 一方双子よりも多少手加減されていたとはいえ、同じく額を赤く染めた慶は、痛みで潤んだ目で呆然と副会長を見ていた。
 
 うん、慶は相変わらず反応もかわいらしいな。

 その頭を撫で回したい衝動に駆られたが、このような状況下だったので頑張って耐えた。

 
 で、当の副会長だが。

 戻ってきた会長の目の前に立ちはだかり、大半の学園生から女神様と言われる由縁であるいつもの微笑みを浮かべてた。

 しかし、普段と違ってその背後には闇黒オーラが立ち上がっており、また恐ろしいまでの冷気をただよわせている。

 さすがの俺様何様会長様な会長も顔色を青くしていた。あぁ、今の会長には死相が浮かんでいることだろう。何故副会長があのように機嫌を損ねて、会長に当たっているのかは分からないが…会長、ご愁傷様です。

 俺は会長のご冥福を祈るために目を閉じ、そっと手を合わせた。アーメン。


「マコちゃん何してるんだろーね、奏」

「んー、よく分からないね、楓」

「「でも、なんだかすっごく面白そう!!」」

「……!おれ、も…する…!」

 そんな小さな声が聞こえてたと思えば、すぐに静かになった。隣に先程までなかった気配を感じるので、あの会話通りならば、恐らく双子と慶が隣で俺と同じような姿勢をとっているのだろう。そうして、この予測は当たっているはずだ。

「…神崎って、ここ生徒会では不憫キャラだったんだな…」

 驚き、憐れみ、同情、そして微量の嘲笑…そんな、様々な感情を込めた声音で東先生がそう呟いていたのだから。

 俺は閉じていた目をゆっくり開き、ぽんっと東先生の肩に手を置いて声をかける。そうしながらも、慶、奏、楓…と、順に3人も目を開ける姿を視界内に捉えた。

「東センセーには会長も言われたくないと思うなぁ~」

「なっ…おまっ、」

 動揺した東先生に双子が畳み掛ける。

「んー、確かにモモせんせーからは言われたくないかもねー」

「ホストって、SHRで毎回呼ばれてるモモ先生だけにはね」

「「ねー」」

「うっ…!」

  _________________

   クリティカルヒット!
   東先生 は 100ダメージ 受けた。
  _________________


 そこに、なんの悪気もない慶がとどめを刺す。 

「東、せん、せ、も…会長、も…か、いそ…」

「ぐはっ…!」

  _________________

   超クリティカルヒット!!
   東先生 は 15,000ダメージ 受けた。
   既に瀕死状態だ!
  _________________



 …無視していたけど、もうムリだ。なんか、ゲームでよくあるテロップが先生の頭上に視えた気がしたんだが。

 慶の犬耳&尻尾だけでなく、このような幻覚まで視えただなんて…。俺は疲れているのかもしれない。一応、まだ今日という日は始まったばかりなのだがな…。

 というか、転入生の印象をまだ聞けてないし、東先生の言っていた案件が何なのかも聞けてない。何故今日に限って本題からことごとく遠ざかっていくのか。


 もうしばらくは終わりそうにないカオスな状況を見て、そっとため息をついた。



しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・不定期

ずっと夢を

菜坂
BL
母に兄との関係を伝えようとした次の日兄が亡くなってしまった。 そんな失意の中兄の部屋を整理しているとある小説を見つける。 その小説を手に取り、少しだけ読んでみたが最後まで読む気にはならずそのまま本を閉じた。 その次の日、学校へ行く途中事故に遭い意識を失った。 という前世をふと思い出した。 あれ?もしかしてここあの小説の中じゃね? でもそんなことより転校生が気に入らない。俺にだけ当たりが強すぎない?! 確かに俺はヤリ◯ンって言われてるけどそれ、ただの噂だからね⁉︎

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

王様のナミダ

白雨あめ
BL
全寮制男子高校、箱夢学園。 そこで風紀副委員長を努める桜庭篠は、ある夜久しぶりの夢をみた。 端正に整った顔を歪め、大粒の涙を流す綺麗な男。俺様生徒会長が泣いていたのだ。 驚くまもなく、学園に転入してくる王道転校生。彼のはた迷惑な行動から、俺様会長と風紀副委員長の距離は近づいていく。 ※会長受けです。 駄文でも大丈夫と言ってくれる方、楽しんでいただけたら嬉しいです。

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

処理中です...