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第51話
しおりを挟む「あ~ごめんねぇ、すっかり東センセーのこと忘れてたよ~」
「ごめんごめん~」とヘラヘラ笑いながら、拘束していた両腕を解放する。数分ぶりに解放された腕(肩)を早速ぐるぐると回す東先生を見て思った。
「センセー…もうそんな歳だったんだねぇ。まだ20代なのに…」
思わず東先生へ憐れみのこもった視線を向けた。アァ、センセーカワイソーダナー(棒読み)
「オレをジジイだと言いたいのか?あ゙??」
「ハッ、もしかして声に出てたぁ?」
「思いっきり出してたわッ!!つか絶対ぇわざとだろっ」
「あはは、そんな訳ないじゃ~ん」
勿論わざとだ。
俺が先生で遊んでいる間に、副会長は無事会長も強制的に現実世界に戻していた。流石だ。
「うぅ、まだおでこがジンジンするー…」
「うぅ、絶対おでこヘコんだよ…」
「「もう、副会長の鬼!ここまでする必要ないじゃん!!」」
思いっきり弾かれて赤くなった額を押えながら、双子は魔王様化が阻止された副会長に猛抗議している。
「…痛、い…。副会、長…な、で…」
一方双子よりも多少手加減されていたとはいえ、同じく額を赤く染めた慶は、痛みで潤んだ目で呆然と副会長を見ていた。
うん、慶は相変わらず反応もかわいらしいな。
その頭を撫で回したい衝動に駆られたが、このような状況下だったので頑張って耐えた。
で、当の副会長だが。
戻ってきた会長の目の前に立ちはだかり、大半の学園生から女神様と言われる由縁であるいつもの微笑みを浮かべてた。
しかし、普段と違ってその背後には闇黒オーラが立ち上がっており、また恐ろしいまでの冷気を漂わせている。
さすがの俺様何様会長様な会長も顔色を青くしていた。あぁ、今の会長には死相が浮かんでいることだろう。何故副会長があのように機嫌を損ねて、会長に当たっているのかは分からないが…会長、ご愁傷様です。
俺は会長のご冥福を祈るために目を閉じ、そっと手を合わせた。アーメン。
「マコちゃん何してるんだろーね、奏」
「んー、よく分からないね、楓」
「「でも、なんだかすっごく面白そう!!」」
「……!おれ、も…する…!」
そんな小さな声が聞こえてたと思えば、すぐに静かになった。隣に先程までなかった気配を感じるので、あの会話通りならば、恐らく双子と慶が隣で俺と同じような姿勢をとっているのだろう。そうして、この予測は当たっているはずだ。
「…神崎って、ここでは不憫キャラだったんだな…」
驚き、憐れみ、同情、そして微量の嘲笑…そんな、様々な感情を込めた声音で東先生がそう呟いていたのだから。
俺は閉じていた目をゆっくり開き、ぽんっと東先生の肩に手を置いて声をかける。そうしながらも、慶、奏、楓…と、順に3人も目を開ける姿を視界内に捉えた。
「東センセーには会長も言われたくないと思うなぁ~」
「なっ…おまっ、」
動揺した東先生に双子が畳み掛ける。
「んー、確かにモモせんせーからは言われたくないかもねー」
「ホストって、SHRで毎回呼ばれてるモモ先生だけにはね」
「「ねー」」
「うっ…!」
_________________
クリティカルヒット!
東先生 は 100ダメージ 受けた。
_________________
そこに、なんの悪気もない慶がとどめを刺す。
「東、せん、せ、も…会長、も…か、いそ…」
「ぐはっ…!」
_________________
超クリティカルヒット!!
東先生 は 15,000ダメージ 受けた。
既に瀕死状態だ!
_________________
…無視していたけど、もうムリだ。なんか、ゲームでよくあるテロップが先生の頭上に視えた気がしたんだが。
慶の犬耳&尻尾だけでなく、このような幻覚まで視えただなんて…。俺は疲れているのかもしれない。一応、まだ今日という日は始まったばかりなのだがな…。
というか、転入生の印象をまだ聞けてないし、東先生の言っていた案件が何なのかも聞けてない。何故今日に限って本題からことごとく遠ざかっていくのか。
もうしばらくは終わりそうにないカオスな状況を見て、そっとため息をついた。
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