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第47話
しおりを挟む「はぁ、仕方ありませんね」
会長に言われたため、口では渋々という感じでありながらも、至極アッサリと双子を解放した。その表情は、憑き物が落ちたといったような、実にスッキリとしたものだ。
「もー、れいれいヒドいよ!」
「れいれい容赦なさすぎ」
「「一瞬彼岸花のお花畑が視えたよ!!」」
「副会、ちょ…かぇ、かな…いじめる、めっ!」
我らが良心の慶は、シクシクとわざとらしく泣き始めた双子の頭を撫でながら、副会長にやり過ぎ注意令を出している。
その手の下で、双子は副会長に向かってべーっと舌を出して、軽く挑発していた。その上、泣き真似をしながらも、ニヤニヤ笑うという、実に器用なことをしている。
それを向けられた副会長は、普段の微笑みをなんとか浮かべてはいるが、ヒクヒクと顔を引き攣らせていた。
副会長の架空ストレスメーターの数値が、順調に再びMAXまで上がっていく様子が俺と会長には視えた。しかし、今の双子には慶という盾があるため、手出しすることが叶わない。
その結果、ストレスメーター値はMAXを超え、魔王様降臨までの無情なカウントダウンが始まった気がした。
ヤバい。
このままでは自分にも飛び火する可能性がある。
瞬時にその事を悟った俺と会長は、どちらからともなく頷き合うと、一時的に協商を結んだ。
そう、魔王様降臨阻止協商である。
「あー…そういや零斗。転入生はどうだったか?」
「転入生、ですって…?」
“転入生”
その言葉を聞いた途端、副会長の纏うオーラがドス黒くて禍々しいものになった。
どうしよう、会長が話題を間違えた。
どうやら、この話題は今の副会長にとって地雷だったらしい。阻止するどころか、逆に魔王様化を促してしまった。
「(やっべ、これ地雷だったのかよ)」
「(あ~もぉ~!会長何やっちゃてんの~っ!)」
一時的な同志である会長と目線のみで言い合いをする。
長い時間を一緒に過ごし、苦楽(主に魔王様と双子のイタズラ)を共にした苦労仲間だからこそ、可能な芸当である。
「(いや、しょうがねぇだろこれは。誰が今のアイツの地雷を予測できたかっつうんだ)」
「(だとしてもさぁ~。来た時の様子的にぃ、この話題は念のため避けるべきだったでしょ~!!)」
「(それは悪かったと思ってる。だが、咄嗟には丁度いい話題がこれしか思い付かなかったんだよ)」
「(あ~…それなら仕方ないっかぁ…。同じ立場だったらぁ、俺も無理だったろうしねぇ)」
「(だろ?っつうワケで、次はお前が逝ってこい)」
「(ムリムリムリムリィィ!今の副会長に話かけるとか自殺行為でしかないよぉ!?俺まだ死にたくないんですけどぉ~!!)」
「(大丈夫だ、安心しろ。骨は拾ってやる)」
「(いやそれ1番安心できないやつぅぅぅ!!!?)」
会話の途中にも関わらず、絶対嫌だァァァァァァッ!!と、思わず内心で叫びながら、両手で頭を抱えてしゃがみ込んで会長から目を離してしまった。
「(…まぁそれに、アイツは何故か真琴には多少甘いしな。……あぁいや、慶にも甘いか。だが、真琴に対する甘さと慶に対する甘さはニュアンスが違うような気がすんだよな…)」
そのため俺は、会長が何処か複雑そうな顔をして、そんなことを思っていたことには終ぞ気付かなかった。
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