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第44話 (副会長side)
しおりを挟む「入場許可証だな!!確かここに入れて持って来たはずだぞ!!」
そう言って、柳瀬─もう脳内では毬藻呼びでいいですかね─は、背中に背負っていたリュックをおろして、ゴソゴソと中を漁り始めました。
キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン…
……いや、長すぎではありませんかっ!?
漁り始めてから既に10分以上経っているのですけれど!!?
しかも、始業時間になってしまいましたし。
あぁこの時間があれば、仕事のアレとアレとあとアレを、ギリギリ終わらせられたかもしれないのに…
はぁぁぁぁぁ……本当に最悪です。
「…あぁ!!!!!!あったぞ!!!!!これだよな!!!」
それから更に5分ぐらい経った頃。
やっと目当ての物を見つけ出した毬藻は「俺を褒めろ!!」と言わんばかりの勢いで、ソレを私に突き出しました。
当然褒めませんでしたよ、えぇ。寧ろこれにキレずに付き合っている私を褒めて欲しいぐらいです。あ、勿論毬藻にではなく、彼にですが。…まぁ、そんなこと、頼めるはずないのですけれどもね。
『華織学園入場許可証 柳瀬春人 様』
「…はい、確認いたしました。では改めまして─初めまして、私は当学園で生徒会副会長を務めてさせて頂いております、3年の相模零斗です。今から理事長室まで案内させて頂きます」
普段よりも遥かに丁寧な口調で言った後、誰でもそうと分かるような愛想笑いをしました。つまり、今回以外もう関わる気はないという遠回しな意思表示です。
流石にいくら馬鹿でも、あの食えない理事長の甥ですので、これぐらい分かるはずでs…
「零斗だな!!!!俺のことはハルって呼べよなっ!!あと、そんなふうに笑うなよ!!!俺たち友達だろ!!あっ!もしかして本当の笑顔ができないのかっ?!でも大丈夫だぞ!!!俺がなんとかしてやるからな!!!」
「ご遠慮させて頂きます」
迷わず即答しました。
「なんでだよっっ!!!!!!!!!!!!!」と何やら毬藻が喚いてますが、そんなものはスルーに限ります。
というか、私の方が年上ですよ??
先程自己紹介をしましたので、それはもう把握したと思ったのですがね。この毬藻、一体いつまで失礼な口調で話すのでしょうか。
今期生徒会メンバーは全員個性こそ強いですが、あの双子ですら初めは一応そういうところはしっかりしていたというのに。
あぁそれと、あれは初対面の人に対する態度ではないですね。普通初対面の人にあそこまで踏み込んだことを言ったりしては、気分を害する方がほとんどでしょうに。
まぁそもそも、私のはただの愛想笑いなのですが。それをどうしてよくもまあ、あそこまで想像を広げられたものですね(笑)
一周回って感心しますよ、本当。
「では、私について来て下さい。校舎は広大かつ複雑なので、慣れるまではほぼ必ず迷子になります」
それだけ告げると、後ろを振り返ることすらせずに、スタスタと理事長室に向かって歩き始めました。
「はぁ?!!ちょっっ、零斗待てって!!!!!俺を置いてくなんてヒドイんだぞ!!!!」
騒音が聞こえたと思うと、何やら背後からドタバタとした音がしてきました。
全く、毬藻は少しでも静かにできないのですかね?
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