上 下
44 / 121

第37話

しおりを挟む

「なんです、これは…」

 ヒクヒクと笑みを引きつらせ、誰ともなく呟く。

「なぁ零斗、これ、転入日と入寮日が4月**日って見えるんだが…。俺様の見間違いじゃねぇよな?」

「えぇ、残念ながら、私にもそう見えていますね」

 普段なら、このような会長の問いかけに対し、さり気ない皮肉を込めて答える副会長の返答には、珍しくそれがない。

「…ね…これ…ど、いう、こと…?」

 確かな困惑を滲ませた声音でそう皆に問う慶も、この事に関しては全く意味が分からないといった様子だ。

 そりゃあそうだろう。
 何故日付の部分だけ、数字ではなく記号になっているのか。理事長の気まぐれで発生するお茶目だとしても、いくらなんでもこれは酷すぎる。なんでそこが伏せ字なんだ。1番大切なところだろう、その部分が。

「(さて、これはどうしたものか)」

 机の下で足を組み、小さく唇を舐めて思案に暮れる。

 理事長室へ···に行くか、メールで聞くか、夜に黒狐として他の情報と共にハッキングするか。

 俺個人としてはどちらでも支障は無いのだが、日付は生徒会メンバー全員で共有しなければならない。そうなると、日付に関しては後者はなし。
 残る選択肢だが、間違えなく前者はあり得ないだろう。まぁ、約一名、キレたらやりそうな人物はいるが。

 そこまで考えて、思わずその方に視線をやると、バッチリ紅色の瞳と目が合った。慌てて目線をパソコンの画面に戻した。
 うん、大丈夫。

 まぁで、こうなると選択肢はメールにて聞くという、あまりにも普通なのが残るっていうわけだ。

 いや、本来なら普通なのがいいんだ。
 しかし、それで聞いたところで、あの理事長が答えてくれるかっていうのが問題なんだ。

 俺の例の噂を消そうとこっそり奔走してくれたり(まぁコッチにはバレバレだった上に、消すことは叶わなかったが)、学園にとって何が1番メリットになるかなどを考えて行動に移したりと、普段は人として、または人の上に立つ者として、少しは尊敬できるところがある人なのだが。

 偶に、そう偶に、何かやらかしてくれる時があるのだ。その度に、俺達生徒会や一部教師、風紀委員会は色々と振り回されてきた。だから恐らく、今回のこれもその一環なのだと思う。

 それで、何故そういう問題が出てくるのかというと。
 理事長は、自分が与えたその無茶振りや理不尽(?)等に対し、それ相当の対応と面白さを求めてくるのだ。
 そのため、お気に召す方法でなかった場合、素直に教えてくれない可能性が非常に高い。


 でもまぁ、提案するだけしてみるか。

 これ以外特に思い付かないし。



しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・不定期

腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います

たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか? そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。 ほのぼのまったり進行です。 他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て運命の相手を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ──────────── ※感想、いいね大歓迎です!!

生意気な弟がいきなりキャラを変えてきて困っています!

あああ
BL
おれはには双子の弟がいる。 かわいいかわいい弟…だが、中学になると不良になってしまった。まぁ、それはいい。(泣き) けれど… 高校になると───もっとキャラが変わってしまった。それは─── 「もう、お兄ちゃん何してるの?死んじゃえ☆」 ブリッコキャラだった!!どういうこと!? 弟「──────ほんと、兄貴は可愛いよな。 ───────誰にも渡さねぇ。」 弟×兄、弟がヤンデレの物語です。 この作品はpixivにも記載されています。

王道わんこの奮闘記(仮)

BL
私立桜崎学園ーーー いわゆる王道学園であるそこでは、王道生徒会が存在している。 その一員である書記の春はとある過去から話すことが苦手になってしまった。 これはそんな春の過去と未来を繋ぐお話。 ※エブリスタ様にも掲載しています。

もういいや

senri
BL
急遽、有名で偏差値がバカ高い高校に編入した時雨 薊。兄である柊樹とともに編入したが…… まぁ……巻き込まれるよね!主人公だもん! しかも男子校かよ……… ーーーーーーーー 亀更新です☆期待しないでください☆

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、新たな恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

処理中です...