33 / 118
第27話
しおりを挟む「ぁ…これ、庭園…?」
宮殿近くの森の中を歩いて歩いて、兎に角歩いて。そこを抜けた先では、様々な種類・色の薔薇や名前の知らない花々が咲き誇っていた。
その様子はとても綺麗で美しく、しかしどこか穏やかで。気がつけばふらふらと、引き込まれるかのようにそこへ足を踏み入れていた。
何故校舎からかなり離れた場所にあるのか、とか。何故生徒手帳の地図に記されていないのか、だとか。そんなことを考える余裕など全くなくて。
「(この学園にこんな場所があったんだ…)」
歩を進めながら漠然と、ただそれだけを思った。
今なら分かる。
実はこの庭園、つい十数年前にできた場所らしく、造るとなった時、空いている場所で庭園にふさわしかったのが宮殿近くの森を抜けた先にあるここだけだったらしい。
そして、何故地図に記されていないのかというと、先代理事長の「地図に記されていない、秘密の庭園ってなんかいいよね」というおちゃめ(?)な発言のせいなようだ。
なので今のところ、現在学園に居る中でこの庭園を知っている者は先代・当代理事長と俺、風紀委員長、ここを偶然発見した4人の生徒、庭園の管理者。合計9人だけだ。
「フワァ…」
軽い昼食を終え、思考を過去に飛ばしていると、だんだん眠たくなってきてしまった。
右腕の腕時計を見ると、昼休憩時間が終わるまであと1時間半は残っている。
…よし、寝るか。
本来この学園で、1人無防備に外で寝るだなんて危険極まりないが、存在自体を知る者が数少ないこの庭園は例外だと思っている。
その数少ない者達も理事長曰く、“全員安心していいメンツ”とのことなので心配ない。
今問題なのは、午後の授業中に寝てしまう可能性があることなのだ。そうなったら、授業に出る意味がまるで無い。
しかも5時間目は、俺の天敵である数学だ。寝てしまえば、ほぼ確実に死亡フラグが立ってしまうだろう。
あ、会計なのに数学が苦手なんだ…って思っただろ?
計算はいいんだよ、計算は。問題なのは証明と図形、ついでに2次関数なんだ。
そもそも、なんで△ABCが二等辺三角形であることを証明しないといけないんだ?別にどんな三角形だったっていいだろうが。
2次関数に至っては意味が分からない。何故点P動く?動かなくていいだろ、というか動くな。
…まぁよって、残り時間全てを仮眠に充てることが現在の最適解だ。
ベンチはそこそこ大きいので、横になって眠ることができる。
しかしそうした場合、気配に気付いて起きてもバレないよう、すぐに退散するのは難しいだろう。
銀蝶と黒狐ならできるのだろうが、今の俺は水無月真琴だ。多少不安は残ってしまう。
〘確かにボクは簡単にこなせるよ〙
〘………コクッ〙
おい、突然出てきてどうした?俺に対する嫌味か?
〘そんなわけないって、主人格サマ。ねっ、黒狐〙
〘…………別に…オレはどうでも…〙
なら何故出てきたんだ黒狐……まぁいいか。
俺は今から寝るから銀蝶、人の気配がしたら起こして。
〘オーケー〙
その言葉を聞いてから、散らかしたのをさっさと片付ける。
ゴミの入った袋を腕にかけ、スマホのアラームを1時間後にセットし、それから多少背もたれに体重を預けた。
じゃ、おやすみなさい……
35
お気に入りに追加
406
あなたにおすすめの小説
もういいや
senri
BL
急遽、有名で偏差値がバカ高い高校に編入した時雨 薊。兄である柊樹とともに編入したが……
まぁ……巻き込まれるよね!主人公だもん!
しかも男子校かよ………
ーーーーーーーー
亀更新です☆期待しないでください☆
アリスの苦難
浅葱 花
BL
主人公、有栖川 紘(アリスガワ ヒロ)
彼は生徒会の庶務だった。
突然壊れた日常。
全校生徒からの繰り返される”制裁”
それでも彼はその事実を受け入れた。
…自分は受けるべき人間だからと。
風紀委員長様は王道転校生がお嫌い
八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。
11/21 登場人物まとめを追加しました。
【第7回BL小説大賞エントリー中】
山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。
この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。
東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。
風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。
しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。
ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。
おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!?
そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。
何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから!
※11/12に10話加筆しています。
王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。
学園の天使は今日も嘘を吐く
まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」
家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。
チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる