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第25話

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 4時間目はホスTことあずま先生担当の古典だった。

「あー、竹取物語は日本最古の物語といわれていて──」

 竹取物語、か…。
 そういえばジブ○映画にもなってたような気がするな。俺は観てないけど。

「──で、1番有名な冒頭は初等部の頃にでも覚えさせられたはずだ。…おい、水無月」

 おっといけない。途中から聞いてなかった。まぁとりあえず、返事しとくか。

「何ですかぁ、東センセー」

 この前、チャラ男っぽくあだ名であずにゃんって呼んだら怒られたからな。どこがダメだったのだろうか。あずにゃん、かわいくていいと思ったんだけど。

「竹取物語の冒頭を暗唱してみろ」

 しかし良かった、疑われていたのではないらしい。
 東先生は至って普段通りの態度だ。

「えぇ~、なんで俺ぇ?」

「いいからさっさとしろ」

 仕方がないので、渋々その場で席を立ちながら返事をする。

「はぁ~い。え~っとぉ…

 今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。
 野山にまじりて竹を取りつつ、よろずのことに使ひけり。
 名をば、さぬきのみやつことなむいひける。
 その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。
 あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。
 それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうしゅうたり。

 これでいい~?」

「あぁ、完璧だ」

 俺が席につくのを見た後、東先生は話を再開させる。

「冒頭は今水無月が暗唱した通りだが、今回するのはそこじゃない。次のページから載ってる『かぐや姫の昇天』だ」

 いや、それなら何故俺に暗唱させた!?
 嫌がらせか、嫌がらせなのか!?

 俺が恨みがましい目で見ていると、それに気づいた東先生はこちらに顔を向け、他にはわかりにくい程度にニヤリと笑った。笑っ、た……って、なんて奴だ!

 隣に座る俺の異変を察したらしい佐久間は、俺と先生を見比べて「なるほど」といったように納得し、微かに苦笑いを浮かべている。

 くそぅ…もしかして未だにあずにゃんを根に持ってるな!?
 もういい、脳内では先生のことホストって呼んでやるぅ!()

 そして、子どもっぽいことだとは分かっていたが、目が合ったホストに向かって思いっきりべーっと舌を出してやる。

 それを直視したホストは、僅かな間だけ目を丸くして言葉を止めていた。

 ふふん、どうだ!
 少し得意になった俺は思わずドヤッた。



 ガタガタガタッ

 ん?

「先生すいませんお手洗い行ってきます!」

「あ、俺も同じく行ってきます!」

「ヤバいあれはムリ」

「どうしよう、ぼく会長様推しなのに」

「俺はノーマル俺はノーマル俺はノーマル俺は…」


 前屈みになりながら急いでトイレに走っていく者、頬を紅くしてぼーっとこちらを見ている者、机に腕をついて頭を抱えながら早口にブツブツ呟いてる者…などなど。

 何故か突如とつじょとして、クラスメイトがおかしくなってしまい、授業中にも関わらず教室内はガランとしてしまった。


「…みんなど~したんだろ~?」

「間違いなくお前のせいだな」

「うん、水無月君のせいだね」

「「マコちゃんがやったんだよー!」」

「み、な…まこと…に、や、れた…」

「えぇ~!?俺何もしてないのにぃ~!!!」

 冤罪だ!




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