孤独な蝶は仮面を被る

第23話 (no side)

「本当、先程の水無月は一体何だったのでしょうか…」

　ポツリと、副会長は呟く。

「さぁな。ただ、普段と違ったのは確かだ」

　そう返した会長は扉から背を向け、自身の机に戻った。

「アイツがおかしかった事について考えるのはもうやめろ、キリがねぇ。さっさと仕事するぞ」

「僕らはマコちゃんのことを心配してるのにー」

「会長はマコちゃんのこと心配じゃないんだー」

「「ひどいよねー」」

　双子はお互いの手を重ねながらクスクス笑う。
　その姿はいつも以上に、鏡合わせのようにそっくりで。双子を見分けられる生徒会役員が一瞬だけ、どちらが奏で楓なのか分からなくなった程だった。

「会長も水無月のことを心配していますが、それを知られないようあのように言っているだけですよ」

　女神の如く微笑みながら、ナイショ話をするかのように副会長が双子に囁く。
　が、会長にも丸聞こえである。

「お前らなぁ…ッ!」

　バラされて恥ずかしかったのか、分からない程微かに顔を赤らめて会長は怒る。照れ隠しなのはバレバレだ。

「ふふ、ふ…」

　慶はみんなが元気になったのが嬉しくて、優しく笑う。
　それはとても柔らかく、かわいらしく感じるものだったのだが、残念ながらそれを見ていた者はいなかった。


　先程までの、何とも言えない空気は全て消え去り、生徒会室内はすっかり普段通りに戻っていた。

　そうしていつの間にか、真琴の様子をおかしく感じたということなど頭の隅に追いやられ、そのまま忘れてしまった。





　〘noside〙end.