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第21話
しおりを挟む一応、銀蝶である時と黒狐である時の記憶はほとんどあるが、別人な感覚が強い。
“俺”を成り立たせる為にした事とはいえ、あまりにも自然に分かれてしまっていて自分自身驚いている。
「──ッ、…ぃ…」
その分かれ具合は“俺”の時に、頭の隅でアイツらが好き勝手に色々言っていたりする程だ。普段は無視しているが。
「─ぃ…、…こ…」
そういえば、銀蝶や黒狐の時だと、その片割れが思考の端で話してたりしてない。
「…ぉ…、…と……」
何故だろうか?
「…ぃ……じょ…、…み…」
んー……ダメだな。アイツら、この問いに答えるつもりは全く無いらしい。黒狐はともかく銀蝶の気配もしない。
まぁ、今表に出て来られても困るのだがな。
そこらへんはアッチも分かっているから、“俺”である今は出て来ないだろうけど。
しかし、答えるだけでもしてくれてもいいのにな。
「おいっ!!真琴!」
ガシッと肩を掴まれた感覚がして、意識が現実に戻る。
目の前には、俺の両肩を掴み、こちらの顔を覗き込んでいる会長と、同じく顔を覗き込んでいる慶。更に、こちらを見ている副会長と双子の姿があった。
全員がどこか焦ったような表情をしている。
「…あれぇ~?ど~したの~会長?」
俺はいつものようにヘラヘラ笑いながら、少し首を傾げた。
というか、いつの間に椅子の向きを変えられていたのだろうか?全く気が付かなかった。
「お前…大丈夫か?」
「はぁ?」
え、何が?
困惑しているのが分かったのだろう。
副会長が会長の言葉の補足をする。
「私達が何度も呼びかけていたのにも関わらず、貴方は全く反応を返さなかったので『大丈夫か?』ということです」
「そーだよー!!」
「マコちゃん、全然気づかないんだもん」
「「しかも…なんかへn…」」
「2人、とも…それい、じょ…言う…めっ!」
「「んー…分かったー!」」
双子は何か言いかけてたが、珍しく慶がそれを遮っていた。
少し考える素振りを見せていたが、すぐに了承する。それも、珍しい事だった。
しかし、そんなに何度も呼ばれていたのか。
いつもはすぐに返事をするから、その分余計に心配されたのだろうか?どこか体調でも悪いのかと。
『──ッ!!─、…!』
…あぁ、そんなわけが無いか。
俺なんかを心配するはずがない。
ただ単に、不思議に思っただけだろう。
きっとそうに違いない。だって、今俺を心配する事で得られるメリットなんて1ミリもないのだから。
「あ~、そうだったんだぁ~。でもぉ、俺は大丈夫だよ~」
「…そうか。ならいいが…」
「何ですかぁ?その煮え切らないようなぁ返事~?…まぁ、別にいいけどねぇ~」
会長は何故か苦虫を噛み潰したような顔をしたが、次の瞬間には元の表情に戻っていた。
「それでぇ?何かあったの~?」
「は?」
「え?」
「「「………」」」
俺が会長にそう言った途端、天使が通り過ぎた。
え?なんで?
「はあぁぁぁ……水無月」
「な、なぁに~?副会長」
「貴方は疲れているようなので、今日はもう帰りなさい」
「え?別に俺は疲れてな…」
「帰りなさい」
「…はぁい」
負けた。
副会長の謎の圧が怖くて逆らえなかった。
しかも、普段よりいい笑顔で言ってきたし。あれは無理。逆らったら恐ろしい事が起こるに違いない。
俺はさっさと机の横に置いていたカバンを肩に掛け、普段通り顔に表情を浮かべながら皆を方を振りかえる。
「それじゃあ、先に帰るねぇ~」
「「マコちゃんまたねー!」」
「…また、明日…バ、イバイ…」
「いいですか、真っ直ぐに帰るのですよ」
「じゃあな」
思いっきり手を振りながらそう言った後、俺は生徒会室をあとにした。
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