11 / 118
第5話
しおりを挟む残り半分を食べ終え、副会長について行った俺は今現在、生徒会室にいた。
「………」
「…………」
「……………」
いや、普通に気まずい。副会長、何か言って。
「水無月」
「は……うん、なぁに~」
危なっ…思わず素でいきそうになった。
大丈夫、バレてない、よね?
「昨日はよくも帰ってくれましたね」
「あ、あはは~…」
あぁ、良かった。この分だとバレてなさそう。
まぁ、あれだけではバレないか。
「全く…許可も出してないのに勝手に帰るだなんて…」
「えっとぉ、ごめんねぇ~」
「はぁぁ、どうせ貴方のことです。面倒くさいとか思ったのでしょう?それか、約束でもあったのでしょうね」
確かな嫌みと嫌悪感を含ませて副会長は吐き捨てる。
「…さぁ、どうでしょうかねぇ~」
「貴方のそういうところが嫌いなんですよ」
どうせ、仕事なんてしてないでしょう。
「今日はきちんとしてもらいますよ」
「…あはは~、分かったよぉ~。流石に今日はもう怒られたくないしねぇ~」
「それならいいです」
それだけ言うと副会長は先に生徒会室を出ていった。
完全に1人である。
「ははは…しょうがないとはいえ、結構毒吐かれたな」
小さな声でボソッと呟く。
俺は、副会長に嫌われている。
勿論普段は普通に話すし、そこまであからさまではない。
でも、ふとした時や2人だけの時は言動の節々に毒が混じる。
そもそも何故嫌われているかというと、恐らく俺のウワサが原因だろう。
曰く、俺には大勢のセフレがいると。
曰く、頼まれれば誰とでもねると。
チャラ男を演じていることと、俺が否定も肯定しないことがウワサを助長させている。
実際は、セフレもいないし、誰とねたこともない。
今まで噂を信じた何十人かにお誘いをされたことがあるが、先約がいる(野良猫の世話)と言ったり、用事があると言ったりして、のらりくらりと回避してた。
まぁ、その現場を何度か見られてたからな。
だから、副会長は、というより、この学園のほとんどの人がその噂を信じている。
信じてないのは、“僕”を知っている理事長と極一部教師ぐらいだ。
信じてないっていうより、噂が嘘だと分かっているというのが正しいがな。
だからというわけでもないが、彼らは俺のことを心配している素振りを見せたり、コソコソと行動していたりする。
気付かれてないと思ってるのだろうが、俺は何となくだが感づいている。彼らがその噂を少しでも消そうとしていると。
俺が、僕が、傷付かないように。
「…まぁ、僕は嫌われてももうどうでもいいけど……」
そう、どうでもいいんだ。
もう期待して、信じて、絶望を、苦しみを、悲しみを感じたくないから。
それに、どうせもう僕は何も………
「「あー!マコちゃん、ここにいたのー?!もうすぐ昼食時間終わるよー!」」
「…あれぇ~?もうそんな時間なのぉ~?」
「「そうだよ!ほら、午後は出るんでしょー!」」
早く行くよー!
「うん、今行くよぉ~」
俺は先程までのくだらない感傷を捨て、双子の後に続いて授業を受けに教室ヘ向かった。
50
お気に入りに追加
406
あなたにおすすめの小説
もういいや
senri
BL
急遽、有名で偏差値がバカ高い高校に編入した時雨 薊。兄である柊樹とともに編入したが……
まぁ……巻き込まれるよね!主人公だもん!
しかも男子校かよ………
ーーーーーーーー
亀更新です☆期待しないでください☆
アリスの苦難
浅葱 花
BL
主人公、有栖川 紘(アリスガワ ヒロ)
彼は生徒会の庶務だった。
突然壊れた日常。
全校生徒からの繰り返される”制裁”
それでも彼はその事実を受け入れた。
…自分は受けるべき人間だからと。
風紀委員長様は王道転校生がお嫌い
八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。
11/21 登場人物まとめを追加しました。
【第7回BL小説大賞エントリー中】
山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。
この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。
東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。
風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。
しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。
ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。
おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!?
そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。
何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから!
※11/12に10話加筆しています。
王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。
学園の天使は今日も嘘を吐く
まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」
家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。
チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる