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第3話
しおりを挟む翌日、本当に徹夜作業してた俺は、生徒会役員の権限の授業免除を午前だけ使って寝ることにした。
このまま授業を受けた場合、体調を崩し生徒会の仕事を少しの間満足に出来なくなる可能性がある。そうなると本末転倒だからな。早く片付けるために徹夜したのに、出来なくなり逆に終わるのが遅くなってしまうなんてさ。
それからきっかり4時間は眠り、起きた頃には大分疲れがなくなっていた。やっぱ、睡眠は大事だな。
現在時刻は11時過ぎ。もうすぐ昼食時間なので、さっさと準備してから校内の食堂へ向かった。
重厚な食堂の扉前で一体止まり、これから起こることに備えてしっかり耳栓をしてから扉を開いた。
「「「「キャァァァァァァアアアーーッ!!!!!」」」」
「「「「ウ"オオオオォォーー!!!!!」」」」
「「水無月様ーー!!今日もなんて麗しい!!」」
「「こっち見てくださいーーー!!」」
「今夜空いてますかーーッ!!!」
うるさっ!この耳栓してもこんなとか、どんだけ声出してんだよ。いつも思うが大丈夫?喉傷めないのか?
というか、より音を遮ってくれる耳栓を新しく買わないとな。
顔に笑顔の仮面を貼り付け、偶に手を振りながら2階席を目指す。あ、俺の親衛隊隊長だ。戯れにウインクをひとつすると、隊長と周りの親衛隊隊員らしき子達が顔を赤く染めた。中には流れ弾にでも当たったのか、気絶してしまった子もいる。ありゃ、やり過ぎたか。前屈みになった奴らも居たが、心の平穏の為に見なかったふりをした。
閑話休題。
2階席は役持ち生徒専用の場所なので、一般生徒は来ることが出来ない。そのため、この場所は特別校舎以外で安心できる場所の1つだ。まぁ、道のりが1番うるさい場所でもあるが、完全に上がると下の音は全くではないが聞こえなくなるのでそこは問題ない。
「あ、真琴じゃねぇか」
聞き覚えのある耳あたりのいい声がし、そちらの方を見ると紅いメッシュの入った黒色の短髪に何故か赤い星のヘアピンを付けている生徒会長─神崎龍雅先輩─がいた。
「会長~、今日は早いんですねぇ」
「あぁ、今日は早く仕事に一段落ついたからな」
「なるほどぉ~。……で、なんでヘアピンなんて付けてるんですかぁ~?」
まぁ意外と似合ってるけどな、そう思いながら聞くと、会長は俺の疑問に喜々として答えた。
「ん?あぁ、これか?これはな俺の妹が『お兄ちゃんに』って、手紙と一緒に送ってくれたものなんだ。ホント俺の妹は可愛くて優しくてセンスも良くて──」
…………。
それから10分ぐらい会長の妹自慢が続いた。
後半になる頃には、もはや可愛いと天使としか言ってなかった。確かに、写真で見せてもらった妹さん(今年8歳らしい)は美少女だったけどさ。
そう、俺様な我らが会長様はシスコンなのだ。それも、ドが付くほどの。
幸いなことに、このことは俺しか知らない。何故知ってるのかというと、偶々、会長が1人で妹さんと電話している場面に出くわしたからだ。
それからというもの、会長は俺の前ではシスコンを隠さなくなった。あれを聞かされる俺の身にもなって欲しいものだ。
「会長~、そろそろ座って料理頼んでいいですかぁ?立ちっぱなしは疲れるんですけどぉ」
「あ、あぁ、…すまん」
「会長が謝ったぁ!」
レアだ!
「お前は俺をなんだと思ってるんだ…」
「え、え~とぉ~……」
あははぁ…と笑って誤魔化しながらやっと席に着き、全てのテーブルに備え付けられてるタブレット端末で軽食のパスタを頼んだ。
「ん?お前、またそれだけか?」
「それだけってぇ……確かに、みんなと比べたら少ないかもしれませんけどぉ~…」
だが、これは許容範囲内だと思うぞ。
そう思ったが、口には出せなかった。
何故なら、そのタイミングでもう頼んだ料理がきたからだ。
時間が時間なので、軽食類は作り置きしてるのかもしれない。
「うわぁ…会長、相変わらず沢山だねぇ…」
6人がけテーブルの5分の2を占める会長の料理たちを見て、思わず声に出す。今日は和食の気分らしく、焼き鮭や海鮮丼、天ぷら、煮魚……といったものがどんどん運ばれてくる。というか、魚多いな。
「そうか?お前、これぐらい食わないから、デカくなれないんじゃないか?」
「いやいやいや…。会長、これは流石に多すぎるよぉ。一体、体のどこにこの量の料理が入るのさぁ。それに、デカくなれないは余計だよぉ~?一応170センチはあるんですけどぉ~」
だから、決して俺がチビなわけではない。185センチ以上ある会長がデカすぎるだけだ。
神崎家のDNAはどうなってるんだ…。
「いや、お前の場合は背が低いとかじゃねぇんだが……」
「ふぅ~ん?じゃあ~、どういうことなんですかぁ~?」
若干苛つきながらそう聞くと、会長は笑いを含ませた。
「お前は背の割に細っこいんだよなあ、他の奴と比べて」
不意に立ち上がって、こちら側に来たかと思うと、会長は俺の右腕を掴んで自分の方に引き寄せた。
「う、わっ…!」
「ハハッ!ほら、こんな簡単に包み込めるぞ?」
「ちょっ…!や、止めてくださいよぉ~!」
一瞬体が硬直し演技を忘れかけたが、すぐ我に返ってチャラ男らしい反応をし、やんわりと会長から離れようとするが、思いのほか力が強く離れることが出来ない。
さて、どうしたものかと思っていると、救世主が現れた。
「全く…何しているのですか、貴方達は」
切れ長の涼やかな碧色の瞳で、こちらを冷たく見下ろした副会長である。
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