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第2話 

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 生徒会室を後にして少し経った頃。無駄に広く綺麗な校庭(もはやちょっとした草原)を進んで行くと、まるでどこぞの屋敷のように豪華な建物が見えてきた。
 これは学園生徒が暮らす白薔薇寮。白薔薇とあるように、全体的に白を基調とした美しい建物だ。

 1階には食堂とスーパー、大浴場があり、2、3階には1~3年のC組が、4、5階には同じく1~3年のB組、6、7階には1~3年のA組、8、9階には1~3年のS組、最上階の10階には役持ちが住む。
 
 基本2人一部屋なのだが、最上階に住む役持ちの生徒は広い部屋を1人で使える。どこの部屋にもキッチンやダイニング、リビング、脱衣所や浴室、各寝室…等々がついており、下手なマンションの一室よりも充実している。
 因みに俺は生徒会会計なので、勿論最上階の住人だ。

 また補足だが、白薔薇寮から少し離れた(とはいっても徒歩15分はある)場所には教師達が暮らす黒薔薇寮がある。そこも基本的な構造は白薔薇寮と変わらない、らしい。

 
 閑話休題。


 さっさと寮内に入り、専用エレベータで最上階ヘと向かう。驚くほど静かなエレベーターは、数十秒もしない間に目的地へ到着した。そこから廊下の最奥に位置する自室へと歩く。

 1020室─それが俺に与えられた部屋だ。

 一応部屋番号を確認してから、万能な生徒カードをドアにかざす。ピッと機械的な音が鳴り、ロックが解除された。すみやかにドアを開け、スルリと内側へ入り込む。

 施錠音がした途端、俺は常に浮かべていた笑みを消した。
 外にいると、常に笑顔を貼り付けていないといけない。そのため、本来デフォが無表情な俺としては結構疲れる。

 まぁ、嫌われないためにはしょうが無いがな。そのままの俺を好きになってくれる人なんて、もうこの世に決して存在しないのだから。


 ……さぁてと、仕事するか。
 私用のパソコン(学園用)の電源を入れ、作業に集中し始めた。
 要らぬこの感傷を振り切るために。









 カタカタカタッ



 作業が一段落つき、何気に時計を見るとあれから3時間経っていて、もう8時になっていた。

 まだ夕飯は食べていないが、食堂はもうすぐで閉まる時間だ。仕方ないので、自室にあるキッチンで簡単なものを作ることにした。俺も名家に生まれたが、乳母に仕込まれているので、ある程度の家事は普通の同年代の人よりも出来る方だからだ。

 冷蔵庫を覗くと、卵と鶏肉があった。丁度消費期限が近づいてるので、玉ねぎがないが今日はこれを使って親子丼にしよう。あぁ、カサ増しに豆腐もいれるか。

 そうと決まれば後は簡単だ。鶏肉に火を通し、豆腐と溶き卵をいれて炒め、感覚で味をつける。食べるのは俺だけなので、どんな味になっても、生焼けでも、何なら素材そのままでも構いやしない。食べることさえ出来ればいいのだから。まぁ流石に肉類は危ないので、一応1度火は通すが。


 そういえば、俺がそう言うと乳母は悲しそうな顔をしてたっけ。だからせめて、料理という形はとっている。

 あの人は今頃どうしているだろう。俺のせいで、何か困ってないだろうか。─きっと、大丈夫だよな。だって、あそこには弟がいるのだから。


 おっと、考え込みすぎた。
 俺は慌ててIHのスイッチを切った。良かった、煮込みすぎてあと少しで吹き出すところだった。


 出来上がったのを米の上に載せ、パソコンの置いてある机に持って行く。マナーは悪いが、作業をしながら夕食をとった。

 データ上でもこんなに多いのに、生徒会室にもまだまだ書類があったはずだ。早く片付けないと、更に大変なことになる。今夜は徹夜決定だな…。


 思わず遠い目をし、俺はそっとため息をついた。



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