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腐男子ズと騎士くんのカオスな休日
奇行に走る救世主 ➀
しおりを挟むそうして更に、何だかんだあって5時間が経過した。
「…はっ、もう6時になってるジャマイカ!!」
「道理で部屋が朱くなってたわけか」
つい先程までソーダを思わせる、シュワシュワと実に美味しそうな青をしていた空は、すっかり朱色に燃え上がっていた。
「アンタ早く部屋に戻った方がいいんじゃない?多分心配してると思うよ」
「我が幼馴染殿は何故妾を心配するのでありんしょうか。昔から過保護気味なんだよ菜の花」
「武士系なのか花魁なのか、よく分からない奴なのかハッキリしてよ。欲張りセットすぎるでしょ。てか、せめてキャラと語尾統一して。ボクがツッコミ役とかホントあり得ないんだけど」
「ゆるしてヒヤシンスww」
「もうむり誰かコイツどうにかして!」
残念(笑)のせいで軽く発狂しかけた姫さんは、ふわふわとしたキャラメルブロンドの髪を両手でぐしゃぐしゃにしながら、この場にいない騎士くんに救いを求めた。
その声が届いたのだろうか、軽やかなインターホンの電子音が聞こえてきた。残念(笑)を部屋に残して姫さんは1人、共同休憩スペースへと向かう。そうして、一塁の望みを持ってモニターで誰が訪ねて来たのかを確認した。
「…あ、どうも。鮫島の所にあのバカ来てねぇ?」
その時の騎士くんは一瞬、自分を混沌地獄から救いに来た天使に見えたとは、後の姫さんの談。
「大道君ナイス!!」
「は?」
スーパーボールのように跳ねて現れた姫さん─鮫島が挨拶も無く真っ先に発した言葉に、何も知らない騎士くん─大道は呆気にとられたような顔をした。
「どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたもないよ。早くアイツを連れて帰ってくれない?このままじゃボクがおかしくなっちゃう」
「あー、大体状況は把握した」
大道は納得したように頷き「おら、さっさと帰んぞー」と、そこそこ声を張って未だ鮫島の室内に居座る残念(笑)を呼ぶ。
呼びながら、「(ツッコミ役がそんなに嫌なのか…)」と、全力で歓喜している鮫島を視界に写しながら思った。彼はそれがつい先程の事のみだとは知らない。
「ちょい待ってクンサーイ!」
部屋の奥から少し慌てた声が聞こえたかと思うと、ドタバタと騒がしい物音がし始めた。どうやら自分が持ち込んで散らかした分を片付けているらしい。
「(アイツ相変わらず変な語尾だな)」
壁に若干凭れかかって軽く腕を組むという、美形がすると一段と様になる格好をした大道はそう思った。
因みにこの時の鮫島は、全力で空気になろうとしていた。この後にあるかもしれない萌を堂々と見るため。それと、その光景を偉大なる文明機器である一眼レフカメラで切り撮るためである。何故なら彼は萌に忠実な腐男子なので。
─数分後。
「おっ待ったせー♪」
余程良いことがあったらしい。非常にルンルンな気分を隠そうともしない、ある意味堂々たる態度で残念(笑)が現れた。若干スキップまでしている。何なら鼻歌に合わせてステップも踏んでいる。
「遅い」
壁から身体を起こし、大道はただその一言を口にした。
「ごめんごめん、ゆるしてクンサイなーww」
ヘラァとした締まりの無い顔で笑いながら軽く謝る。その顔のまま、ヤツはさて靴を履こうと玄関の段差に座り込んだ。
そこへヒト1人分ぐらいの影が差し、急に暗くなる。
「一体なんだ?」と思いながら下げていた顔をそっと上げると、残念(笑)のすぐ眼の前に大道が立っていた。逆光になっているためか、その表情を窺うことはできない。
「護…?どーしタンタン麺?」
残念(笑)は唯一の幼馴染に恐る恐る尋ねる。こんな時でも語尾でふざけることを忘れないのは何故なのか。そんなところで無駄なプロ根性出すなと言いたい。
鮫島は息も気配も殺しまくって壁と同化し、ただじっとその様子を凝視している。そのおかげで存在を忘れられていた。
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