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大根
しおりを挟むほったらかしにしていた畑を耕耘機で耕した。
面白過ぎてあっちこっちを耕した。
俺は素人だ。土壌のpHや栄養なんか知らん。
だけど緑の魔石があるから大丈夫だ。
だけど土を盛った方がいいのは知ってる。
だから軽く盛った。
買ってきた大根のタネを盛った土に埋めた。なんか愛おしい感じだ。
ザッと見渡した。なんとなく畑らしくなったなぁ。
畑の中央に緑の魔石を「すくすく育ちますように」と埋めた。
なんか水をくれって聞こえた気がした。
俺の勘が水をやれって言ってる。
如雨露に水を入れて、魔石を埋めた上に「シャー、シャー」と掛けた。
あれ!畑が淡く光ってる。ポワンポワンと畑のすみずみに広がっている。
そして埋めたばかりなのに、芽が土を押しのけて出た。
え!そんなバカな・・・あり得ない。
更に「水をくれ」とハッキリ聞こえた。
何度も往復して水をやった。
そしていっぱしの大根に育った。え!なんでって気分だ。
俺は、大根を抜いてかじってみた。
「あ、うまい。うま過ぎだ!!」
じいさんの軽トラに、出来立て大根を積んだ。
荷台カバーを掛けて、こぼれ落ちないように縛った。
そして農協へ行った。初めて農協だ。
誰に交渉すればいいか分からん・・・
誰か知ってる人はいないかな・・・あの人は知ってるがあまり親しくないし・・・
「なんだイサムか、何しに来た」
ちょっとテレながらしゃべった。
「大根を作ったんだ。買ってくれ」
「村は、お前の爺さんに恩があるから買ってもいいが、どんなもんかみないとな」
軽トラまで案内した。
軽トラの荷台を見て「中々なもんだな」そして触った。
「傷もないし、まっすぐで太いから買うよ」
「いやいや、その大根は特別なんだ。俺が魔法で精魂込めて作った大根だ。その辺の大根の味以上にうまい大根だから喰ってみてくれ」
「素人はそう言うが・・・じいさんの為に喰ってみるか・・・なんだ!この味は凄いぞ」
農協では騒ぎになった。
「絶対に名産として売るべきだ」
「いつもの販売ルートでいいか」
「なにを言ってる。ここは東京で勝負だ。わしのツテで直売所を確保するからそこで売るぞ」
「気合が入ってるね。いつもボケーッとしてるのに」
こりゃー神須の名産にするぞーーと、農協の役職が一丸となって即決で決まった。
すぐに東京へ運ばれて、ツテをたよって産物直売所で1本5千円で売り出した。
「大根を5千円で売るのは無理ですよ」
「わたしらは、この大根に賭けてます。必ず売れると信じてます」
「場所は提供しますが、どうなっても知りませんよ」
「あんた、そんな無謀な事をして何を考えてるんだ。名産にしたいのならコツコツとやる事だ」
「さっちゃん、あの作戦でゆくよ・・・」
「はい、準備は整ってます。わたしも頑張ります」
「ありがとう」
小さく切った大根を「はい、食べてから買うか決めて下さいね」と配った。
「この大根が5千円もするの・・・味見があるのね。話のタネに食べてみるわ・・・エーー!!凄い大根よ」
「こんな大根があったなんて・・・わたしは20本買うわ。クレジットで・・・」
「わたしは40本よ」
もう飛ぶように売れた。523本が1時間も経たずに完売した。
そして高級食材として世間で持てはやされた。
一般家庭に出回る事なくなり。
高級料亭で大根の刺身風にして出されるようになった。
歯応えのサクサク感と奥深いうまみで、1度は食したいものとなった。
高級レストランでは、高級サラダとして人気を集めていた。
もう、まぼろしの食材となって、見かける事もなくなった。
あの魔石を放って置くと、雑草がめちゃくちゃ育ちやがった。
なので又も耕耘機で耕した。
中には生き物みたい襲ってきた。
もちろん火球で焼き払った。
俺の植物魔法が、なんとなく原因らしき言葉を見付けた。
魔石による魔力に過重にさらされて雑草の進化だった。
鑑定でも、植物進化と出ていた。
だから収穫したら、魔石は取り出している。
それに俺も暇じゃーないので、週1の出荷と決めた。
「いさむ坊、大根があるかい。あったらばあさんが食べたいって」
渦から大根を取り出した。
「3本でいいかい」
「ありがとうな、いさむ坊」
手さげ袋に入れて帰る牧田のじいさんだった。
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