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56.策された会見
しおりを挟む「まさか、お前が?」
リカルドの背中に庇われて、怯えて震えているとばかり思っていた少女は、リカルドの後ろから、挑むような目でディスタルを見つめていた。
その瞬間、ディスタルは気づいた。
この物理も魔法も弾く完璧な防御結界を作り出しているのが、誰なのかという事に。
「おい、ディスタル。僕のアリアを見るな」
深いため息と共に吐き出されたリカルドの言葉の後、ピィー、という音がした。
すると、どこからかバサリと大きな音がして、兵たちが悲鳴を上げる。
「ドラゴンだ!」
「なんでここにっ!」
ドラゴンはリカルドたちの頭上で羽ばたくと、首に掛けていたらしい縄梯子を器用に降ろす。
「ステファン、アリアを連れて先に乗れ。僕はこいつらが何もしないように見張っておく」
リカルドが言い終わる前に、目の前に突然現れたドラゴンに驚き混乱した何人かの兵士が、ドラゴンに向かって銃を撃ち矢を放った。
だが、リカルドたちに放ったそれがそうであったように、銃弾や矢
ドラゴンに届く前に弾かれ、地面に落ちる。
「動くな。動くと、これをお見舞いする事になるぞ」
リカルドの手の中に、炎の玉が作り出される。
それはみるみるうちに、先ほどスザンヌが放ったファイヤーボールの五倍以上に膨れ上がる。
これが放たれたら、辺り一面火の海になってしまうだろう。
兵士たちは震えながら武器を収めた。
「主と違い、良くできた兵だな」
リカルドは武器を収めたウクブレスト兵を満足そうに見ると、視線をディスタルへと移した。
「ディスタル、お前が何か良からぬ事を企んでいたのは、気づいていたよ。だから、策を練らせてもらった。でも……本当に予想通りの事をしてくれて、がっかりだ」
「こちらは、お前のこの行動は、予想もしていなかった」
リカルドは片手でファイヤーボールを操りながら、もう片方の手で縄梯子を引き寄せた。
「ディスタル、もう一度だけ言っておく。他国を攻めるなんて事は、もう止めろ」
「断ると言ったら?」
ディスタルの言葉にリカルドは苦笑し、握っていた縄梯子をクイと引いた。
縄梯子を引かれた合図に、ドラゴンがゆっくりと上空へと翼をはためかせる。
「俺を怒らせない方がいいぞ、ディスタル……」
その言葉を残し、リカルドは上空から巨大なファイヤーボールを落とした。
だがそのファイヤーボールは、ディスタルたちの二メートルほどの頭上で搔き消え、その間にリカルドたち三人を連れたドラゴンの姿は、見えなくなっていた。
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