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33.リカルドの挨拶
しおりを挟む「お父様、この家は、リカルド様が手配してくださったのよ」
「リカルド様が?」
驚くエランドを前に、リカルドは静かに頷いた。
「お疲れでしょうから、今日はご挨拶にだけ参りました。ウクブレストの屋敷とは雲泥の差かもしれませんが、ゆっくりお休みになって下さい。執事やメイドなどの使用人が必要でしたら、すぐに手配致します」
リカルドの言葉に、エランドは慌てて首を横に振った。
「いえ、私たちは国を追われた身です。使用人を雇う身分ではありません。自分たちの力だけで、過ごしたいと考えています」
リカルドはエランドの言葉に驚いたようだったが、わかりましたと頷いた。
「この家は、ステファンの居るダーフィル公爵家からも、フレルデントの王宮からも近い場所にあります。何かあればおっしゃってください。私にできる事は、何でも致しましょう。後は……お辛いかもしれませんが、今回の出来事の詳細を聞かせていただければ……。父や祖父もウクブレストで何が起こっているのかを気にしていますので」
「は、はい、かしこまりました。あの、リカルド王子……」
「何でしょう?」
「その……このフレルデントに私たちを受け入れてくださり、ありがとうございます。ですから、今回の事をご報告しなければならないという事は理解できるのですが……住む家を手配してくださったり、様々な事に手を貸していただけたりするのは、一体どうしてなのでしょうか?」
エランドがそう言うと、リカルドは少し頰を染めた。
つられるように、アリアも頬を染める。
「それは……先日私は、アリアに結婚の申し込みをしまして……」
「え?」
「つまり、ステファンと同じように、あなた方と家族になりたいと思っているからです」
「アリア、本当なのかい?」
「はい」
アリアは頰を染めて頷いた。
「ファインズ公爵、私はアリアを愛しています。彼女を守り、彼女と共にこの国を守り生きていきたいと思っています。だから私を、あなた方の家族の一員にしていただけないでしょうか?」
誠実なリカルドに、アリアは感動して思わず涙ぐんでしまった。
自分も同じ気持ちだと言うようにリカルドに寄り添うと、彼はアリアの手を優しく握ってくれた。
「大変な事がおありだったばかりですので、もう少し落ち着かれてからご報告をしようと思っていたのですが、突然、申し訳ありません」
「い、いや、とても嬉しい事です。今回はいろいろとありましたが、娘が心身ともに元気になり、リカルド様に大切にしていただいているなんて、本当に幸せな事です」
「えぇ、なんて嬉しい事なんでしょう」
「すごいよ、アリア姉様! リカルド様が僕の義兄様になるなんて!」
家族に祝福されて、アリアは嬉しかった。
リカルドも同じだったようで、ほっとしたような表情をしていて、そんな彼の表情もアリアは愛しいと思った。
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