上 下
11 / 80

11.喉を潰した呪い

しおりを挟む

「アリア、着いたよ。ここだ」

 リカルドがアリアを連れてきたのは、フレルデントの王宮の裏手にある、森の中の館だった。
 リカルドが到着すると、館の中から何人もの人間が出て来て、膝をつく。
 そして最後に、かなり年配の老女が現れた。

「おやまあ、年寄り使いの荒い坊が来たよ。朝から緊急の使いを寄越して、年寄りを叩き起こして、ひどい坊だねぇ」
「もう、そんな事を言って! 僕が会いに来る事になって、嬉しかったくせに、素直ではないですね」
「おうおう、坊が言うようになりおったわ」

 リカルドは老女に近づくと、抱き締めて頬に唇を寄せた。
 老女は楽しそうに声を上げて笑うと、リカルドの少し後ろ、ステファンやサリーナと並ぶアリアへと優しい目を向ける。

「大ばば様、こちら、サリーナの妹で、アリア・ファインズ公爵令嬢。アリア、こちらは僕のひいお祖母様のロザリンド様。この国の最高薬師で、魔術士でもあられる方だ」

 アリアは驚きながらも、ロザリンドに笑顔でお辞儀をした。
 声が出ない事は、サリーナが代わりに伝えてくれた。

「そうかい、声が……。でも、心配するでないよ。お前さんは、大事にされている。いろんなものが、お前さんを守っているから、安心おし。喉も、必ず治るよ。さぁ、奥においで。診てあげよう」

 ロザリンドはそう言うと、ゆっくりと屋敷の奥へと戻っていった。
 リカルドに促され、アリアはロザリンドの後についていく。

「おやまぁ、これは酷いことになっているねぇ。えらくやっかいな呪いをかけられたものだ」

 ロザリンドはアリアの喉に手を触れ、喉の奥を確認し、顔をしかめて言った。

「このやっかいな毒と呪いは、本当なら確実にお前さんを殺すものだったようだね。まだこの呪いからは、憎しみの感情が感じられる」

 本当なら殺されていたと聞いて、血の気が引いた。
 自分は殺されなければならないくらいの罪を、犯してしまったのだろうか?
 そうでなければ、何故あの女性は……スザンヌは、自分をここまで憎み、殺そうとしたのだろう。
 震える体を、隣に座っていたサリーナが優しく撫でてくれた。
 優しく見つめられ、アリアは深呼吸した。

「怖がらせてすまなかったねえ。だけど、安心しなさいな。お前さんは今、ちゃんと生きているだろう?」

 はい、と返事が出来ない代わりに、アリアは頷いた。

「それはね、お前さんをね、精霊たちが守っているからなんだよ」

 それは一体、どういう事なのだろう?
 精霊たちに守られている……それが本当なら、とても光栄な事ではあるが、アリアにはそれが何故なのかわからなかった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】もう結構ですわ!

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
 どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。  愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/29……完結 2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位 2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位 2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位 2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位 2024/09/11……連載開始

釣った魚にはエサをやらない。そんな婚約者はもういらない。

ねむたん
恋愛
私はずっと、チャールズとの婚約生活が順調だと思っていた。彼が私に対して優しくしてくれるたびに、「私たちは本当に幸せなんだ」と信じたかった。 最初は、些細なことだった。たとえば、私が準備した食事を彼が「ちょっと味が薄い」と言ったり、電話をかけてもすぐに切られてしまうことが続いた。それが続くうちに、なんとなく違和感を感じ始めた。

この野菜は悪役令嬢がつくりました!

真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。 花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。 だけどレティシアの力には秘密があって……? せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……! レティシアの力を巡って動き出す陰謀……? 色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい! 毎日2〜3回更新予定 だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!

気まぐれな婚約者に振り回されるのはいやなので、もう終わりにしませんか

岡暁舟
恋愛
公爵令嬢ナターシャの婚約者は自由奔放な公爵ボリスだった。頭はいいけど人格は破綻。でも、両親が決めた婚約だから仕方がなかった。 「ナターシャ!!!お前はいつも不細工だな!!!」 ボリスはナターシャに会うと、いつもそう言っていた。そして、男前なボリスには他にも婚約者がいるとの噂が広まっていき……。 本編終了しました。続きは「気まぐれな婚約者に振り回されるのはいやなので、もう終わりにします」となります。

公爵子息に気に入られて貴族令嬢になったけど姑の嫌がらせで婚約破棄されました。傷心の私を癒してくれるのは幼馴染だけです

エルトリア
恋愛
「アルフレッド・リヒテンブルグと、リーリエ・バンクシーとの婚約は、只今をもって破棄致します」 塗装看板屋バンクシー・ペイントサービスを営むリーリエは、人命救助をきっかけに出会った公爵子息アルフレッドから求婚される。 平民と貴族という身分差に戸惑いながらも、アルフレッドに惹かれていくリーリエ。 だが、それを快く思わない公爵夫人は、リーリエに対して冷酷な態度を取る。さらには、許嫁を名乗る娘が現れて――。 お披露目を兼ねた舞踏会で、婚約破棄を言い渡されたリーリエが、失意から再び立ち上がる物語。 著者:藤本透 原案:エルトリア

【1/23取り下げ予定】あなたたちに捨てられた私はようやく幸せになれそうです

gacchi
恋愛
伯爵家の長女として生まれたアリアンヌは妹マーガレットが生まれたことで育児放棄され、伯父の公爵家の屋敷で暮らしていた。一緒に育った公爵令息リオネルと婚約の約束をしたが、父親にむりやり伯爵家に連れて帰られてしまう。しかも第二王子との婚約が決まったという。貴族令嬢として政略結婚を受け入れようと覚悟を決めるが、伯爵家にはアリアンヌの居場所はなく、婚約者の第二王子にもなぜか嫌われている。学園の二年目、婚約者や妹に虐げられながらも耐えていたが、ある日呼び出されて婚約破棄と伯爵家の籍から外されたことが告げられる。修道院に向かう前にリオ兄様にお別れするために公爵家を訪ねると…… 書籍化のため1/23に取り下げ予定です。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

婚約者が不倫しても平気です~公爵令嬢は案外冷静~

岡暁舟
恋愛
公爵令嬢アンナの婚約者:スティーブンが不倫をして…でも、アンナは平気だった。そこに真実の愛がないことなんて、最初から分かっていたから。

処理中です...