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11.喉を潰した呪い
しおりを挟む「アリア、着いたよ。ここだ」
リカルドがアリアを連れてきたのは、フレルデントの王宮の裏手にある、森の中の館だった。
リカルドが到着すると、館の中から何人もの人間が出て来て、膝をつく。
そして最後に、かなり年配の老女が現れた。
「おやまあ、年寄り使いの荒い坊が来たよ。朝から緊急の使いを寄越して、年寄りを叩き起こして、ひどい坊だねぇ」
「もう、そんな事を言って! 僕が会いに来る事になって、嬉しかったくせに、素直ではないですね」
「おうおう、坊が言うようになりおったわ」
リカルドは老女に近づくと、抱き締めて頬に唇を寄せた。
老女は楽しそうに声を上げて笑うと、リカルドの少し後ろ、ステファンやサリーナと並ぶアリアへと優しい目を向ける。
「大ばば様、こちら、サリーナの妹で、アリア・ファインズ公爵令嬢。アリア、こちらは僕のひいお祖母様のロザリンド様。この国の最高薬師で、魔術士でもあられる方だ」
アリアは驚きながらも、ロザリンドに笑顔でお辞儀をした。
声が出ない事は、サリーナが代わりに伝えてくれた。
「そうかい、声が……。でも、心配するでないよ。お前さんは、大事にされている。いろんなものが、お前さんを守っているから、安心おし。喉も、必ず治るよ。さぁ、奥においで。診てあげよう」
ロザリンドはそう言うと、ゆっくりと屋敷の奥へと戻っていった。
リカルドに促され、アリアはロザリンドの後についていく。
「おやまぁ、これは酷いことになっているねぇ。えらくやっかいな呪いをかけられたものだ」
ロザリンドはアリアの喉に手を触れ、喉の奥を確認し、顔をしかめて言った。
「このやっかいな毒と呪いは、本当なら確実にお前さんを殺すものだったようだね。まだこの呪いからは、憎しみの感情が感じられる」
本当なら殺されていたと聞いて、血の気が引いた。
自分は殺されなければならないくらいの罪を、犯してしまったのだろうか?
そうでなければ、何故あの女性は……スザンヌは、自分をここまで憎み、殺そうとしたのだろう。
震える体を、隣に座っていたサリーナが優しく撫でてくれた。
優しく見つめられ、アリアは深呼吸した。
「怖がらせてすまなかったねえ。だけど、安心しなさいな。お前さんは今、ちゃんと生きているだろう?」
はい、と返事が出来ない代わりに、アリアは頷いた。
「それはね、お前さんをね、精霊たちが守っているからなんだよ」
それは一体、どういう事なのだろう?
精霊たちに守られている……それが本当なら、とても光栄な事ではあるが、アリアにはそれが何故なのかわからなかった。
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