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しあわせのまほう
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その日、ハルコちゃんはとてもイヤなことがたくさんありました。
授業中におしゃべりをしていたのは、ハルコちゃんではなく別の友達だったのに、なぜか代わりにハルコちゃんだけが先生に怒られてしまったし、また掃除の時間には、友達はハルコちゃん一人だけを置いて、用事があるからと先に帰ってしまいました。
だから今日、ハルコちゃんは一人で掃除をしなければなりませんでした。
そして、一人だけで掃除をしたのが悔しくて、道に落ちていた空き缶を蹴ると、ちょうどすれ違った犬の散歩中のおばあさんに、「女の子なのに……」とイヤな顔をされてしまいました。
「私って、不幸な子だわ」
公園のベンチで、ハルコちゃんは深い息をつきました。
人は、一日にイヤなことがたくさん重なると、自分はなんて不幸な人間なのだろうと思うものです。
ハルコちゃんも、ちょうどそんな気持ちでした。
おまけに、気分なおしに買ったジュースはぬるくなっていて、開けると、プシュー、と派手に吹き出してしまいました。
「あははははは」
ジュースが吹き出た瞬間、近くで笑い声がしました。
ハルコちゃんがその声の方を見ると、ハルコちゃんよりも少し年上の男の子が、楽しそうに笑っていました。
男の子に笑われて、ハルコちゃんはますます今日はイヤな日だと思いました。
少し泣きそうな気持ちです。
「だって、おもしろくてさ」
その言葉にハルコちゃんはさらに哀しくて、そして悔しくなりました。
ハルコちゃんがイヤな思いをしているのに、この男の子はハルコちゃんを笑ったのです。
我慢していた涙がぽろりと零れると、男の子は慌てたようにハルコちゃんをなぐさめ始めました。
「ごめんね、泣かないで」
だけど、ハルコちゃんの涙は止まりません。
泣きながら、ハルコちゃんはどうして今日はこんなにイヤな日なのかな、と言いました。
ハルコちゃんは男の子に今日のできごとを話して聞かせました。
男の子は名前をタカシと言って、ハルコちゃんの話を黙って聞いていました。
「おれは、今日も楽しいことがあったなぁ」
ハルコちゃんの話を聞き終わると、タカシはそう言って笑いました。
タカシは、毎日が楽しいと続けます。
それを聞いたハルコちゃんは、また自分がすごく不幸な子に思えてきました。
「さっき買ったたい焼きには、しっぽまでちゃんとアンコが入っていたし、昨日食べたソフトクリームはコーンの先までクリームが入っていて、嬉しかった。隣の家の犬のタロウだって、いつもは噛みつくのに今日はおとなしく触らせてくれた」
タカシはそんなことをとても楽しそうに言いました。嬉しいことがいっぱいでいいなぁとハルコちゃんが言うと、
「でも、そんなのは考え方しだいでしょ?」
とタカシは言いました。
「隣のタロウはいつも噛みつくけど、そんなときは、明日こそは噛みつかれないようにしようって思うし、たい焼きもソフトクリームも、今度買うときはいっぱいかなって思うし。さっき吹き出したジュースも、吹き出してびっくりしておもしろかったって思ったら、それは楽しいことになるんじゃない?」
ハルコちゃんは、タカシの言いたいことはなんとなくわかりましたが、友達の代わりに怒られたことはやっぱりイヤなことでした。
そう言うと、タカシは少し考えて言葉を続けました。
「きみが怒られたことは、友達が授業中にお喋りをやめてくれるきっかけになったかもしれないよ。そうしたらもう先生は怒らないだろうし、今度は友達が代わりに掃除をしてきみを早く帰らせてくれるかもしれない。空き缶は、イヤな気持ちにならなかったら蹴らないだろうし、逆に拾ってちゃんとゴミ箱に捨てたら、おばあさんはきみをほめてくれるかもしれない」
だから考え方しだいだよ、とタカシは笑いました。
「ジュースが吹き出してあわてたきみを見たとき、おれはおかしくて思わずて笑ってしまって、きみをイヤな気持ちにさせてしまったけど、逆に考えれば、あの吹き出したジュースのおかげでおれたちは今しゃべっているのだし、そういうふうに考えたら、よかったことにならないかなぁ?」
ハルコちゃんはタカシと話しているうちに、怒られてイヤな気分になっていたことを少しずつ忘れ始めていました。
「そうだね」
そう言って笑うと、タカシもまた笑いました。
しあわせになる方法は、とても簡単なのかもしれません。
「考え方を変えてみよう」
それだけでイヤなことを良いことに変えることが、ハルコちゃんにはできるのです。
タカシはハルコちゃんに、しあわせのまほうをかけてくれたのでした。
授業中におしゃべりをしていたのは、ハルコちゃんではなく別の友達だったのに、なぜか代わりにハルコちゃんだけが先生に怒られてしまったし、また掃除の時間には、友達はハルコちゃん一人だけを置いて、用事があるからと先に帰ってしまいました。
だから今日、ハルコちゃんは一人で掃除をしなければなりませんでした。
そして、一人だけで掃除をしたのが悔しくて、道に落ちていた空き缶を蹴ると、ちょうどすれ違った犬の散歩中のおばあさんに、「女の子なのに……」とイヤな顔をされてしまいました。
「私って、不幸な子だわ」
公園のベンチで、ハルコちゃんは深い息をつきました。
人は、一日にイヤなことがたくさん重なると、自分はなんて不幸な人間なのだろうと思うものです。
ハルコちゃんも、ちょうどそんな気持ちでした。
おまけに、気分なおしに買ったジュースはぬるくなっていて、開けると、プシュー、と派手に吹き出してしまいました。
「あははははは」
ジュースが吹き出た瞬間、近くで笑い声がしました。
ハルコちゃんがその声の方を見ると、ハルコちゃんよりも少し年上の男の子が、楽しそうに笑っていました。
男の子に笑われて、ハルコちゃんはますます今日はイヤな日だと思いました。
少し泣きそうな気持ちです。
「だって、おもしろくてさ」
その言葉にハルコちゃんはさらに哀しくて、そして悔しくなりました。
ハルコちゃんがイヤな思いをしているのに、この男の子はハルコちゃんを笑ったのです。
我慢していた涙がぽろりと零れると、男の子は慌てたようにハルコちゃんをなぐさめ始めました。
「ごめんね、泣かないで」
だけど、ハルコちゃんの涙は止まりません。
泣きながら、ハルコちゃんはどうして今日はこんなにイヤな日なのかな、と言いました。
ハルコちゃんは男の子に今日のできごとを話して聞かせました。
男の子は名前をタカシと言って、ハルコちゃんの話を黙って聞いていました。
「おれは、今日も楽しいことがあったなぁ」
ハルコちゃんの話を聞き終わると、タカシはそう言って笑いました。
タカシは、毎日が楽しいと続けます。
それを聞いたハルコちゃんは、また自分がすごく不幸な子に思えてきました。
「さっき買ったたい焼きには、しっぽまでちゃんとアンコが入っていたし、昨日食べたソフトクリームはコーンの先までクリームが入っていて、嬉しかった。隣の家の犬のタロウだって、いつもは噛みつくのに今日はおとなしく触らせてくれた」
タカシはそんなことをとても楽しそうに言いました。嬉しいことがいっぱいでいいなぁとハルコちゃんが言うと、
「でも、そんなのは考え方しだいでしょ?」
とタカシは言いました。
「隣のタロウはいつも噛みつくけど、そんなときは、明日こそは噛みつかれないようにしようって思うし、たい焼きもソフトクリームも、今度買うときはいっぱいかなって思うし。さっき吹き出したジュースも、吹き出してびっくりしておもしろかったって思ったら、それは楽しいことになるんじゃない?」
ハルコちゃんは、タカシの言いたいことはなんとなくわかりましたが、友達の代わりに怒られたことはやっぱりイヤなことでした。
そう言うと、タカシは少し考えて言葉を続けました。
「きみが怒られたことは、友達が授業中にお喋りをやめてくれるきっかけになったかもしれないよ。そうしたらもう先生は怒らないだろうし、今度は友達が代わりに掃除をしてきみを早く帰らせてくれるかもしれない。空き缶は、イヤな気持ちにならなかったら蹴らないだろうし、逆に拾ってちゃんとゴミ箱に捨てたら、おばあさんはきみをほめてくれるかもしれない」
だから考え方しだいだよ、とタカシは笑いました。
「ジュースが吹き出してあわてたきみを見たとき、おれはおかしくて思わずて笑ってしまって、きみをイヤな気持ちにさせてしまったけど、逆に考えれば、あの吹き出したジュースのおかげでおれたちは今しゃべっているのだし、そういうふうに考えたら、よかったことにならないかなぁ?」
ハルコちゃんはタカシと話しているうちに、怒られてイヤな気分になっていたことを少しずつ忘れ始めていました。
「そうだね」
そう言って笑うと、タカシもまた笑いました。
しあわせになる方法は、とても簡単なのかもしれません。
「考え方を変えてみよう」
それだけでイヤなことを良いことに変えることが、ハルコちゃんにはできるのです。
タカシはハルコちゃんに、しあわせのまほうをかけてくれたのでした。
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