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第3章・冒険者デビュー

魔法屋に行こう②

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「で、何か用か? 家庭用魔道具の魔石のチャージか? それとも、何か買いに来たのか?」

 サーチートを撫でるのに満足したのだろう、クラウドさんはサーチートをカウンターに下ろすと、ユリウスを見つめた。

「知人にここで何か便利な物が買えると聞いたので、見に来たんだ。あと……手持ちの魔石の買い取りを頼みたい。ゴブリンの魔石なんだが、大量にあるんだ」

「ほう、どれどれ。ここに出してみろ」

 クラウドさんはユリウスに、二十センチ四方くらいの箱を渡した。
 渡された箱の中に、ユリウスは大きめの麻袋に入れていたゴブリンの魔石をジャラジャラと入れる。
 麻袋のサイズは、お弁当箱を入れる巾着袋くらいのサイズで、それが二つ。
 魔石の大きさは、形は若干違っているけれど、大体直径二センチくらい。
 あの麻袋の中に、どれくらいの数のゴブリンの魔石が入っているんだろう。

「すごいな、お前、よくこれだけ倒して、拾ったな」

 ユリウスが出したゴブリンの魔石を見て、クラウドさんが笑った。

「途中で面倒になって、拾わなかった分もあるけどな。で、これ、買い取ってもらえるのか?」

「あぁ、是非とも買い取らせてくれ。それから、これは俺からのプレゼントだ。これだけ真面目にゴブリンの後始末をして、魔石を持って来た奴、初めて見たよ。またしっかり後始末をして、うちに売りに来てくれ」

 クラウドさんがユリウスに差し出したのは、一センチくらいの水晶が三つ埋め込まれたブレスレットだった。

「クラウドさん、これは何?」

 カウンターに置かれたブレスレットに近づき、サーチートが首を傾げる。

「これはな、便利だぞー。おい、これを装備して、魔石回収って言ってみな」

「え? そうなの? じゃあ、よいしょっと」

「おいっ!」

「魔石回収っ!」

 多分クラウドさんは、ユリウスに装備するように言ったんだけど、サーチートがブレスレットを自分の首にかけて、元気に魔石回収と叫んでしまった。
 すると、先程ユリウスが箱に入れた大量の魔石が、一瞬でブレスレットの水晶の中に吸い込まれていく。

「うわぁっ、すごーいっ!」

「本当だ、すごいよ! ねぇクラウドさん、これ、どうなってんの!」

 大興奮するサーチートとリュシーさん。もちろん私も驚いた。

「すごいだろ? これはな、この水晶に時空収納の術式を施してあるんだ。マジックバッグの作る時の応用だな。あと、この水晶には魔石の魔力を感知する術式も施している。それで近くにある魔石を、魔石回収っていう命令で、回収、収納できるって事なんだ。魔法が使えない人間でも使える優れものなんだぞ」

「すごいですねぇ~」

 仕組みはよくわからないけれど、このブレスレットのような魔導具が、すごい魔道具という事だけはわかった。
 クラウドさんはまたサーチートを抱っこして先程魔石を入れていた箱の上に移動させると、「次は、魔石放出って言ってみな」と言う。
 サーチートは頷くと、可愛い声で、「魔石放出っ」と叫び、放出された魔石は再び箱の中に戻された。

「ねぇ、ユリウスくん! ゴブリンの魔石集めは、ぼくに任せてよ!」

 首に魔石回収のブレスレットを引っ掛けたまま、サーチートが胸を叩いた。
 ユリウスが頷くと、サーチートは嬉しそうに顔を輝かせ、クラウドさんはブレスレットをチョーカーに作り替えてくれた。

「クラウドさん、クラウドさん! これ、ものすごくいいよ! ありがとう! クラウドさんって、すごいね!」

 お礼を言うサーチートの頭を優しく撫でて、クラウドさんが笑った。

「すごいだろ? でも、この魔石回収の魔道具を考えたのは、俺じゃなくて、俺の友達なんだ」

「そうなんだ! そのお友達さんも、とーってもすごいね!」

「あぁ、あいつは、アルバトスは本当にすごいやつだよ。あいつ、今頃どうしてんのかなぁ?」

「え?」

 なんとなく予感はあったけれど、実際にクラウドさんの口からその名前が出ると、心臓が飛び出るくらい驚いてしまった。


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