上 下
268 / 320
第3章・冒険者デビュー

え? 冒険者?②

しおりを挟む

「実はアタシ、あと少しでBランクになれる、Cランク冒険者なのよ」

「本当? すごいね! あのね、ユリウスくんも、この間Cランクになったんだよ! じゃあ、二人とも次に目指すのはBランクだね! 早く上がれればいいね!」

 きらきらした目で、サーチートはリュシーさんを見つめたけど、リュシーさんは首を横に振った。

「アタシ、Bランクには上がるつもりはないのよ。Bランク以上の冒険者となると、ギルドの依頼を強制的に受けなきゃいけない時があるからね。アタシは店もあるから、わざとBランクには上げてもらっていないのよ」

 へぇ、そんなシステムになっているんだね。
 ちらりと隣に居るユリウスを見ると、

「俺も絶対に上げないでおこう」

 と呟いていた。
 でも多分、ゴムレスさんが強引に上げようとするんじゃないかと思うんだけどね。

「だからアタシは、ギルドの依頼はあんまり受けずに、狩った魔物の解体や、自分が要らない素材だけを引き取ってもらってるんだよ。今、ちょうど新しい素材が欲しくてね、お金も貯めたいからさ。だから、暫くはこの店をガレアスさんたちに任せて冒険者稼業を復活させるよ」

 新しい素材っていうのは、糸の事らしい。
 アイアンスパイダーとか、スティールスパイダーとかシルクスパイダーとか……とりあえず蜘蛛の魔物から特殊な糸が採れるらしいんだけど、私は虫が苦手だから、ちょっと無理かも。

「あと、そろそろジルと結婚しようと思ってねぇ……」

「えー! おめでとうございます!」

「ありがと! でね、その資金を貯めたいんだよね」

 リュシーさんは、ジルさんと結婚するにあたり、このスタイリッシュ・アーマーの近くに、家を買うか借りるかしたいらしい。
 スタイリッシュ・アーマーはリュシーさんの店だけど、ここにはリュシーさんの他、ガレアスさんとソフィーさん夫婦も住んでいる。
 ガレアスさんの足の事もあるし、リュシーさんが居ない間は二人に店を任せている関係で、自分がここを出て別の所で生活をする事を考えているのだそうだ。

「この事は、まだガレアスさんたちには内緒なんだ。気を遣わせちゃうしね、全部決まってから話そうと思ってる……。アンタたちも、内緒にしてよね!」

「わかりました!」

「ところでさ、ユリウス、アンタたち、アタシに付き合ってスパイダー狩るの、手伝ってくんない?」

「うーん、俺は別にいいけど……」

 チラリと私を見るユリウス。
 うーん……私は虫が駄目だけど……ユリウスが行くなら、ついて行くよ。
 ただし、お手伝いはできないかもしれないけどね。

「今、ネーデの森は、ゴブリンが溢れてるぞ。リュシーが欲しいスパイダーって、どこにいるんだ?」

「ネーデでもゴヤでも、わりとどこにでもいるわよ。森の奥の方のでかい木のとことか、洞窟のとことかが多いわね」

「奥の方か……どうせいろいろ回るつもりだから、一緒に行くか。でもその前に、俺たち、行きたい所があるんだ」

「どこだい?」

「魔法屋。どの辺りにあるか、知っていたら教えてほしい」

「魔法屋かぁ~。OK、案内してあげるよ。アタシもちょっとクラウドさんに聞きたい事あるし」

 魔法屋さんは、クラウドさんというらしい。
 案内してくれると言うリュシーさんに連れられ、私たちは魔法屋を営むクラウドさんという人の元へと向かう事にした。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~

あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい? とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。 犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!

お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。

永礼 経
ファンタジー
特性「本の虫」を選んで転生し、3度目の人生を歩むことになったキール・ヴァイス。 17歳を迎えた彼は王立大学へ進学。 その書庫「王立大学書庫」で、一冊の不思議な本と出会う。 その本こそ、『真魔術式総覧』。 かつて、大魔導士ロバート・エルダー・ボウンが記した書であった。 伝説の大魔導士の手による書物を手にしたキールは、現在では失われたボウン独自の魔術式を身に付けていくとともに、 自身の生前の記憶や前々世の自分との邂逅を果たしながら、仲間たちと共に、様々な試練を乗り越えてゆく。 彼の周囲に続々と集まってくる様々な人々との関わり合いを経て、ただの素人魔術師は伝説の大魔導士への道を歩む。 魔法戦あり、恋愛要素?ありの冒険譚です。 【本作品はカクヨムさまで掲載しているものの転載です】

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお
ファンタジー
夢半ばに死んでしまった少女が異世界に転生して、様々な困難を乗り越えて行く物語。 *小説を読もう!にも掲載中

異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし
ファンタジー
銀行に勤めるそこそこ頭はイイところ以外に取り柄のない23歳青山 零 は突如、自称神からの死亡宣言を受けた。そして気がついたら異世界。 異世界ではまるで別人のような体になった零だが、その体には類い稀なる才能が隠されていて....

処理中です...