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第3章・冒険者デビュー
サーチートの憂鬱②
しおりを挟む「えーっと、ゴブリンホイホイって、スキルみたいなんですけど……アルバトスさんでも知らないんですか?」
「えぇ、初めて聞きました。だけど……その名前から察すると、ゴブリンを引き寄せてしまうっていう感じのものですか?」
「はい、正解です。ネーデの森でゴブリンに追いかけられていたサーチートを鑑定したら、そう書いてあって……ちなみにユリウスは、ゴブリンキラーって書いてありました」
「ゴブリンキラーは聞いた事あるんですけど……ゴブリンホイホイは、聞いた事ないですね。ゴブリンを引き寄せてしまうなんて、なんとも面倒なスキルですねぇ」
「ア、アルバトス先生っ……」
アルバトスさんの言葉を聞いて、サーチートはとてもショックを受けたようだった。
そりゃそうだよね。サーチートはアルバトスさんなら何とかしてくれるって思っていたんだもん。
そのアルバトスさんが、ゴブリンホイホイを知らないなんて、全く思っていなかっただろう。
「ぼ、ぼくはどうしたら……ぼく、これからずっと、ゴブリンに追いかけられちゃうの? シルヴィーク村の外に出たら、ずっとゴブリンに怯えなきゃいけないの?」
「いいえ、それは大丈夫だと思いますよ」
小さな黒い目を潤ませたサーチートに、アルバトスさんは首を横に振り、言った。
アルバトスさんの目は金色になっていて、どうやらサーチートを鑑定しているらしい。
「今のサーチートくんは、ゴブリンホイホイなんてスキルを発動していません。ユリウスも、今はゴブリンキラーを発動していません。こういったスキルの発動には、条件があるんですよ。例えば、ゴブリンが近くに居るという条件です。今ゴブリンが近くに居たなら、ユリウスはゴブリンキラーのスキルが発動するでしょう。だけど私は、サーチートくんの場合は、それだけではないと思うんです」
「え?」
何だろう、とサーチートが首を傾げる。
私も同じように考えて、サーチートを追いかけ回すゴブリンを鑑定した時の事を思い出した。
あの時のゴブリンは興奮状態で、小動物のキンキン声が気に障っていると表示されていた。
「ゴブリンは、サーチートの声が気に障っちゃうらしいです。ゴブリンを鑑定した時に、そう表示されていました!」
だから、サーチートの声に反応するんだと思って、ネーデの森では喋らないようにしてもらっていたのだ。
「あぁ、そうだ。じゃあ、ぼくはシルヴィーク村を出たら、ずっとお喋りを我慢しなくちゃいけないのかなぁ?」
お喋りしたいよー、と叫ぶサーチートをアルバトスさんは優しく見つめ、首を横に振る。
「これは私の推測なのですが、サーチートくんのゴブリンホイホイというスキルは、スキルと表示されていても、状態異常に近いものではないかと考えられます。ですから、もしもまたゴブリンホイホイが発動したとしても、オリエさんにリカバーをかけてもらえば大丈夫ではないかと……」
「え? 本当に?」
「えぇ。おそらく大丈夫だと思います」
「ありがとう、オリエちゃん! 大好きだよ!」
目をキラキラと輝かせて、サーチートが私を見つめる。
本当にリカバーでいいの?
あまりにも簡単に解決策が見つかって拍子抜けしたけれど、思い詰めていたサーチートが笑顔になったから、良かったよ。
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