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第3章・冒険者デビュー

いざ、ゴブリン討伐①

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 翌日、私たちはゴブリン討伐のために、商都ビジードの四つある門のうちの一つ、北の門を出た。
 ゴブリンは森の中でよく見かけるらしく、最近ゴブリンの目撃情報が多いという、北の門の街道沿いにあるネーデの森へ向かう事にしたのだ。

 北の門を出てしばらくは、整備された街道を挟んで平原が続く。
 のんびりと散歩気分で歩きながら、平原に生えている薬草採集をしたり、平原をうろちょろしていたツノウサギを狩ったりして一時間くらい歩くと、ネーデの森に辿り着いた。

「ゴブリン、居るかな」

 シルヴィーク村近くの森でも、ゴヤの森でも、私はゴブリンを見かけた事はないんだけど、どうしてなんだろう?
 私がそれを口にすると、ユリウスは少し考え込み、言った。

「そうだな……シルヴィーク村近くに居ないのは、結界のせいって事もあるだろうけど、シルヴィーク村近くの森には、狼系の魔物が多いからかもしれない。ゴブリンよりも狼系の魔物の方が強いと考えれば、ゴブリンたちがシルヴィーク村近くに居ないのも頷ける」

「それって、ゴブリンは狼に縄張り争いで負けたって事?」

「あぁ、そんな感じ」

 なるほどね、縄張りか。
 それなら、ゴヤの森でもゴブリンを見かけなかったのは、あの巨大熊が居たから、だったのかも。
 私の考えは正しかったようで、ユリウスは頷くと、今後はゴヤの森にもゴブリンが出るようになるかもしれないと、少し困ったように言った。
 ユリウスが倒した、黒い魔結晶を突き刺されて操られていたあの巨大熊は、ゴヤの森の主だったのかもしれない。

「ゴブリンは駆け出しの低ランクの冒険者の依頼になるくらいだから、冒険者と名乗る者にとっては、そんなに強い魔物じゃない。だから、ゴブリンは他に強い魔物や動物が居れば、縄張り争いに負けてしまうわけなんだけど、ゴブリンはとても増えやすいんだ。それに、中には進化して強くなっていくものもいる」

 普通のゴブリンの中からリーダーが生まれ、それがさらにゴブリンソルジャーやジェネラル、キングへと進化していくと、進化したゴブリンの影響で、ゴブリンの群れ全体のレベルも上がっていくのだという。

「だから、そんな事になる前に、ゴブリンは見つけたら駆除していかなければいけないんだ」

 早口にそう言ったユリウスは、突然森の奥へと走り出した。
 一体どうしたのだろうと首を傾げると、

『ウギャ!』

 と、ものすごく汚い声の悲鳴が聞こえ、ユリウスを追いかけると、彼の足元には緑色の肌をした首のない死体が転がっていた。

「ゴブリン、居たよ」

「そ、そうみたいだね」

 ユリウスに頷きながら、私はゴブリンの頭の方へと目を向けた。
 蹴り飛ばされて木にぶつかったゴブリンの頭は、ぐちゃくちゃになっていたけれど、なんとか左耳は原型を保っていた。
 ゴブリンの左耳は、切り取って冒険者ギルドに提出しなければいけないんだよね。
 この世界に来て、魔物や動物の解体もできるようになったから、私もいろいろと耐性がついたとは思うんだけど、潰れてぐちゃくちゃになっているゴブリンの生首から耳を切り取るっていうのは、ちょっと……いや、かなり抵抗がある。
 私が思った事に気付いたのだろう、ユリウスは申し訳なさそうにごめんと謝ると、少なくともゴブリン討伐の依頼中は、なるべくゴブリンの首を蹴り飛ばすのは止めると苦笑した。


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