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第3章・冒険者デビュー
リュシーさんの事情①
しおりを挟むゴブリン討伐の依頼を受けた私たちは、すぐに依頼に取りかかろうとしたんだけど、そこにストップをかけたのは、冒険者ギルドの副ギルドマスターでもあるジルさんだった。
「あの、依頼をやる気になってくれたのはありがたいのですが、先にリュシーのところに行ってあげてください」
ジルさんは、何故かものすごく申し訳なさそうに言った。
スタイリッシュ・アーマーには、ユリウスのジャケットの直しやズボンの加工も頼んでいるから、元々行くつもりではあったんだけど、ジルさんにお願いされた事もあるし、私たちを探していたっていう事だから、私たちはスタイリッシュ・アーマーへと向かう事にした。
「こんにちは。お願いしていたものを、受け取りに来ました」
お店に着くと、店番をしていたソフィーさんが驚いたように立ち上がり、バタバタと慌ただしくリュシーさんを呼びに行ってくれた。
「なんか、すごく慌てているねぇ。何かあったのかなぁ」
サーチートも少し心配そうだ。
もしかすると、何か困り事があって私たちを探していたのかもしれない。
「ちょっと、アンタたち、どこに行ってたのよ! アタシがどれだけアンタたちを探したと思ってるの!」
リュシーさんは私たちを見るなり、そう叫んだ。
やっぱり何かあったのだろうかと思いつつ、私はチラリとユリウスを見上げ、抱っこしているサーチートの小さな口を塞いだ。
どこに行ってたって聞かれるの、本日三回目、だよ。
私が話すとボロが出ちゃうだろうし、サーチートは余計な事を言っちゃうだろうし、対応はまたユリウスにお任せしよう。
「何かあったのか?」
「何かって、あったに決まってるだろ! トルソー替わりに、アンタに衣装を着てもらおうって思ってたんだよ!」
そう叫んだリュシーさんに、私もユリウスも、口をぽかんと開けてしまった。
リュシーさん、今なんて言った?
ユリウスに衣装を着てもらおうと思ってた?
もしかして、それだけの事で、リュシーさんは冒険者ギルドにまで出向いて、私たちを――いや、ユリウスを探していたっていうの?
「ちょっと待て! なんで俺が、あんたの衣装作りに協力しなきゃならないんだ! 俺はこの店にとっては、ただの客だろ?」
「は? そんなの、アンタの姿がアタシの創作意欲を掻き立てるからに決まってるだろ! アタシは、最高の物が作りたいんだよ! それには、アンタの姿が、アンタのボディが必要なんだよ!」
「本当にちょっと待ってくれ。あんた、それ、おかしいぞ。それに、あんたが手伝わせようとしているのって、ジュニアスのものだろう……」
はぁ、とユリウスは深いため息をついた。
ジュニアスのための衣装の手伝いを、どうして自分がしなければならないのか、とブツブツとぼやいている。
確かにユリウスのその気持ちはわからないでもないけれど……でも、私はあの衣装が今どんなふうになっているのかが、とても気になっていた。
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