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第2章・のんびりまったりスローライフ?

おかえりなさいと、ただいま②

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「あぁ、戻ったのですね、おかえりなさい」

「アルバトス先生、ただいまー! お土産、買ってきたよーう!」

 家に戻ると、サーチートは出迎えてくれたアルバトスさんに飛びついた。
 アルバトスさんは腕に抱いたサーチートの体を優しく撫でながら、ユリウスと私を見て苦笑した。

「もう少しゆっくりしてくると思っていましたよ。村の外は、そんなに落ち着かなかったのですか?」

「どうして、ですか?」

「バンダナを、取って戻って来たので、自分の姿を隠すのを止めたのかと。それなら、外の世界は、居心地があまり良くなかったのではないかと思いましてね」

 アルバトスさんの言葉に、ユリウスは苦笑した。
 それが全てではないだろうけど、少なからず言い当てられているのだろう。
 それにしても、アルバトスさんにはいつも驚かされる。
 どうしてバンダナをしていないというだけで、いろんな事がわかるのだろう?
 もしかして、何かの魔法で私たちの行動をずっと見張っていたとか?

「まぁ、確かに村の外は、落ち着きませんでしたね。俺の姿は、目立ちますから、ね」

「そうですか。でも、あなたは自分の姿を隠す事を止めた……それはとても良い事だと思いますよ。私は嬉しいです。短い間でしたが、いろんな経験をして戻って来たようですね」

 アルバトスさんはそう言うと、言葉通り嬉しそうに笑う。

「ねぇねぇ、アルバトス先生、ぼくね、ちゃんとお土産を買ってきたんだよ! それからね、いろんな事があったんだよ! 先生にいっぱいお話したいな!」

 小さな手でアルバトスさんの胸をぺちぺちと叩き、サーチートが言った。

「そうですか、それは楽しみですね。じゃあ、お茶でも飲みながら、サーチートくんのお話を聞く事にしましょうか」

 サーチートの言葉に頷いたアルバトスさんは、私たちはどうするかと聞いてくれたんだけど、私とユリウスは部屋で休むと返事をし、サーチートをアルバトスさんに預けて、二人で使っている部屋へと向かった。

「なんか、いろいろあって疲れたなぁ」

 部屋に入るなりそう呟いたユリウスに、おかえり、と言うと、彼は嬉しそうに笑う。

「ただいま。オリエが居る場所が俺の戻るべき場所って感じで、おかえりって言われると、ホッとする」

「そっかぁ」

 私も、ユリウスの帰る場所に慣れて嬉しい。
 でも、ただユリウスの帰りを待っているだけじゃ嫌だなとも思う。
 どこにでも一緒に行きたい、離れてくないって思うのだ。
 だって、離れている間にユリウスに何か良くない事が起こったらと思うと、心配だからだ。
 そんなふうに考えて、私は似たような事を彼自身も言っていたなぁと思う。

『行かないで、そばに居て……ずっと……』

 もちろん、そばに居るよ。だからあなたも、そばに居て。

『俺は、君が、居てくれさえすれば、他に、何もいらない……』

 私も、あなたが居れば、他に何もいらない。
 互いに互いが心配でたまらないのなら、やっぱりずっと一緒に居るしかないよね。

「私の帰るべき場所もユリウスのところだから、ずっと互いに、おかえりとただいまを言い合おうね。でも、できるだけ一緒に居たいって思う……だって、離れたくないから」

 私がそう言うと、ユリウスは一瞬驚いたようだったけれど、その後はものすごく嬉しそうな表情をして、頷いた。


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